阿部公房の映画 「箱男」 2024年8月23日公開予定! 永瀬正敏が段ボール箱の中で暮らす! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「箱男」

 

箱男 : 作品情報 - 映画.com

 

「箱男」 予告編

 

2024年8月23日公開予定。

段ボール箱に入って生活する男の物語。

永瀬正敏主演。

ベルリン国際映画祭招待作品。

 

原作:阿部公房「箱男」

脚本:いながききよたか、石井岳龍 

監督:石井岳龍 

 

キャスト:

永瀬正敏: “わたし”
浅野忠信: ニセ箱男
白本彩奈: 葉子
佐藤浩市: 軍医

 

箱男」上映に永瀬正敏「映画の神様に思い通じた。感慨深すぎ」 第74回ベルリン国際映画祭 - ひとシネマ

 

あらすじ:

ある日、カメラマンの男性は箱男を偶然目にする。

完全な孤立と孤独を得て社会から外れた箱男に心を奪われたカメラマンは、自分も段ボールを被り、箱男になろうとする。

しかし、本物の箱男になる道は険しく、ニセの箱男や犯罪に利用しようとする医師が現われ……。

 

コメント:

 

今年8月に公開される映画である。

 

映画『箱男』は、日本を代表する作家・安部公房が1973年に発表した小説『箱男』を映画化した作品。

 

『箱男』は世界20数か国で翻訳され、未だに熱狂的な読者を持つ、安部公房の代表作のひとつだ。

頭からダンボールを被り、都市を徘徊する“箱男”を描いたこの物語は、人間が“自己の存在証明を放棄”した先にあるものを問う難解なテーマのため、映像化は困難であると言われていた。

 

そんな中、安部公房本人が直接映画化を託した人物が、1980年『狂い咲きサンダーロード』で衝撃的なデビューを飾って以来、常にジャパン・インディ・シネマの最前線を駆け抜けてきた鬼才・石井岳龍だった。

代表作は、『逆噴射家族』。

石井 聰亙(いしい そうご)の名で広く知られていた。

2010年以降、石井岳龍を名乗っている。

 

『箱男』は1997年の時点で映画製作が決定していたが、クランクイン前日、不運にも撮影が頓挫。

幻の企画となっていた。

 

それから27年の月日が経ち、奇しくも安部公房の生誕100年にあたる2024年、石井岳龍は遂に『箱男』の映画化を実現。

主演には27年前と同じ永瀬正敏を迎え、同じく27年前に出演予定だった佐藤浩市、さらに世界的な活躍を遂げる浅野忠信といった俳優陣が集結。

数百人にのぼるオーディションから抜擢された白本彩奈も加わり、映画『箱男』が完成した。


映画『箱男』は、本年2月、第74回ベルリン国際映画祭に正式招待された。

 

『箱男』場面カット|写真2

 

箱男 - 写真3

 

『箱男』場面カット|写真5

 

2024年2月17日(現地時間)、第74回ベルリン国際映画祭で、石井岳龍監督が安倍公房の原作を映画化した「箱男」が、ベルリナーレ・スペシャル枠でワールドプレミアを迎えた。

 

現地には石井監督を囲んで、永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市が顔を揃え、満席の会場から大きな拍手で迎えられた。

 

ワールドプレミアの模様
ワールドプレミアの模様

 

 

本作は、石井監督が27年前から映画化を熱望していた作品。

当時、日独合作という形で実現しかけながら、撮影開始1日前に資金繰りの関係で中止になった因縁の企画だ。

それだけに、ベルリン国際映画祭で披露することは、石井監督にとって特別な思いをもたらすものだったであろう。

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安倍公房から生前、唯一直接映画化を許可されたという石井は、原作に映像的な醍醐味をもたらしながら2時間に膨らませた。

 

箱を被って暮らし、そこから世の中を観察している男(永瀬正敏)を主人公に、怪しい病院に勤める院長(佐藤浩市)と偽医者(浅野忠信)、看護婦(白本彩奈)を絡めて描く。

この監督らしいダイナミズムに、原作のシュールなテイストが混ざった独創的な作品である。

 

安倍公房は、海外ではむしろ勅使河原宏により映画化された作品「砂の女」の方が知られているが、客席は老若男女が混ざった印象。エンドクレジットとともに温かい拍手があがった。

 

終映後には監督とキャスト陣を迎えてQ&Aが開催された。

 

石井監督は開口一番、本作の27年間の旅路に触れ、「当時の脚本と本作の脚本はかなり異なります。原作は1973年が舞台ですが、むしろ今日、機が熟した、時代が本作に追いついたという気がします。安倍公房さんの素晴らしいところは、情報化社会が人間にもたらすアイデンティティの喪失を予言していたことです」と語った。

 

さらに「原作は読者の数だけ解釈が異なる作品であり、読んだ人が箱男になる。自分も映画を観た人が箱男になるような作品にしようと思いました。また原作にある2つの謎、箱男とは誰か、そして原作のなかで唯一名前があるものの詳しくは書かれていない、葉子という女性についての謎を解明しようと思いました」とコメントした。

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一方、27年前の企画にすでに出演が決まっていたという永瀬と佐藤はそれぞれ、「27年経ったいま、この作品がこうして完成するのはとても稀なこと。それもドイツでワールドプレミアができるとは、なんとも言えない話で、石井監督の強い思いを感じます」(永瀬)、「わたしは今日、60歳半ばを迎えまして、当時のことはあまりよく覚えていません(笑)。ただひとつ明確に言えることは、原作で名前が出てくるのは看護婦の葉子だけで、他の者は記号にすぎない、そして(彼らがこだわる)メモ帳がアイデンティティのすべてになっている、この2つが強調されているのが今回の作品だと思います」(佐藤)と語った。

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かたや本作で新しく加わった浅野は、「僕は27年前には入っていなかったので、偽医者という役がぴったりだと思っています」と語り、場内の笑いを誘った。

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(C)Olivier VIGERIE

石井監督は、「彼らは俳優というだけではなく、みなさんクリエイターです」と、彼らとのコラボレーションの創造性を強調。そして、「まだまだ話し足りないです」と、感無量の面持ちでワールドプレミアの興奮を噛みしめていた。

 

この映画は、阿部公房の永遠のテーマである「人間にとっての自己の存在証明」だ。

段ボール箱に入って暮らすという不可思議な人間を描きながら、人間とは何を生きがいにして生きているのかを突き詰めようという、不思議ちゃん・阿部公房でしか考えつかない小説を映画化したのだ。

 

箱男

 

今年8月公開後に映画の内容についてレビューしたい。