「ダイヤルMを廻せ!」
(原題:Dial M for Murder)
1954年5月29日公開。
ヒッチコック監督の代表作。
興行収入:$6,000,000。
受賞歴:
- ニューヨーク映画批評家協会賞 主演女優賞:グレイス・ケリー(『喝采』『裏窓』での演技も含めた受賞)
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 助演男優賞:ジョン・ウィリアムズ(『麗しのサブリナ』での演技も含めた受賞)
脚本:フレデリック・ノット
監督:アルフレッド・ヒッチコック
キャスト:
トニー | レイ・ミランド | |||
マーゴ | グレイス・ケリー | |||
マーク・ハリディ | ロバート・カミングス | |||
ハバード警部 | ジョン・ウィリアムズ | |||
スワン | アンソニー・ドーソン |
あらすじ:
ロンドンの住宅地にあるアパート。
その1階に部屋を借りているトニー(レイ・ミランド)とマーゴ(グレイス・ケリー)のウエンディス夫妻は、表面平穏な生活を送っているように見えたが、夫婦の気持ちは全く離ればなれで、マーゴはアメリカのテレビ作家マーク・ホリデイ(ロバート・カミングス)と不倫な恋におちており、それを恨むトニーは、ひそかに妻の謀殺を企てていた。
トニーはもとウィンブルドンのテニスのチャンピオンで、金持ち娘のマーゴはその名声にあこがれて彼と結婚したのだが、トニーが選手を引退してからは、彼への愛情が次第にさめていったのである。
トニーは大学時代の友人でやくざな暮らしをしているレスゲートに、巧みに持ちかけて妻の殺人を依頼した。
計画は綿密で、トニーはマークと一緒に夜のパーティーに出かけてアリバイをつくり、レスゲートにアパートへしのびこませる。
約束の時間にトニーはアパートへ電話をかけ、マーゴが電話に出たとき、かくれていたレスゲートが後ろから絞殺するというてはずだった。しかし、実際には絞められたマーゴが必死にもがいて鋏でレスゲートを刺殺してしまった。
トニーは、マーゴがマークとの不倫をレスゲートにゆすられていたので、彼を殺したという印象を警察に与え、マーゴを罪におとし入れた。
マーゴは死刑を宣告され、処刑の前日までトニーの陰謀は発覚しそうにもなかった。
だが、ひそかに調査を進めていたハバード警視は、レスゲートが使ったアパートの鍵のことから事件解決の緒口をつかみ、遂にトニーの犯罪をあばいた。
コメント:
ヒッチコック作品の中でも特に秀逸とされている有名な作品である。
脚本が完璧である。
本来は「3D映画」として作成されているので、人物の手前に何か物体を置いて奥行を出して立体感を与えている。
3Dでは2台のカメラで撮影し、2台の映写機で投影する。
電話のダイヤルの文字「M N 6」は小さすぎて2台のカメラで同時に撮影できないため、「巨大なダイヤルと指」を作って撮影している。
ヒッチコック映画初出演のグレイス・ケリーがいい。
一番良いのは、夫役のレイ・ミランドである。
頭脳明晰な悪役の魅力を振りまいている。
警部のジョン・ウィリアムズもいい。
ユーモアと味がある。
犯人のアンソニー・ドーソンも巧い。
「暗くなるまで待って」(1967)と比べると、本作の方が遙かによくできている。
本作は小説よりもビジュアルの演劇や映画でのサスペンス(推理もの)の傑作である。
文字で読むよりも絵で観た方が遙かに面白い。
事の発端は妻マーゴの不倫だけれど、演じるのがグレイス・ケリーなだけあって綺麗さに目を奪われる。
やっぱり窮地に陥る美女はすこぶる魅力的で、そんな演出はヒッチコック監督の十八番。
そして、夫トニーの妻殺害計画が全く思い通りに進まないものの、それなりに臨機応変には対応していて、まるでミステリー小説を作っている感じだ。
さらに、マーゴの不倫相手マークが作家という設定が巧みで、素人のトニーvs玄人のマークという図式になっている。
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