ドナルド・サザーランドの追悼特集
第1作はこれ:
「特攻大作戦」
(原題:The Dirty Dozen)
1967年6月15日公開。
ノルマンディー上陸作戦に先立つ米国軍人たちの活躍を描く。
死刑囚を集めてナチスドイツへの「特攻大作戦」を敢行。
サザーランドの出世作となった初のヒット作品。
原作:E・M・ナサンソン『12人の囚人兵』(原題:The Dirty Dozen)
脚本:ナナリー・ジョンソン、ルーカス・ヘラー
監督:ロバート・アルドリッチ
キャスト:
ジョン・ライズマン少佐 | リー・マーヴィン | |
ウォーデン少将 | アーネスト・ボーグナイン | |
ジョセフ・T・ウラディスロー | チャールズ・ブロンソン | |
ロバート・T・ジェファーソン | ジム・ブラウン | |
ヴィクター・R・フランコ | ジョン・カサヴェテス | |
クライド・ボーレン軍曹 | リチャード・ジャッケル | |
マックス・アンブラスター少佐 | ジョージ・ケネディ | |
ペドロ・ヘミネス | トリニ・ロペス | |
スチュアート・キンダー大尉 | ラルフ・ミーカー | |
エヴェレット・ダッシャー・ブリード大佐 | ロバート・ライアン | |
アーチャー・J・マゴット | テリー・サバラス | |
ヴァーノン・L・ピンクリー | ドナルド・サザーランド |
あらすじ:
アメリカ陸軍のライズマン少佐(リー・マーヴィン)は破壊工作の専門家として戦地を渡り歩いていたが、独断専行が過ぎて待機を命じられてしまい、新たな任地も決まらない状態だった。
そんな中、イギリス先遣アメリカ陸軍(ADSEC)のウォーデン少将(アーネスト・ボーグナイン)からノルマンディー上陸作戦に先立ち、ドイツ国防軍の高級将校たちが集う保養所を襲撃して指揮系統を混乱させるように命令される。
「作戦に従事する者は在イギリスのアメリカ陸軍刑務所に収監された犯罪者の中から選出するように」という指示にライズマンは不満を抱くが、ウォーデンの命令で仕方なく12人の囚人を選び出し、罪を帳消しにする条件で作戦に従事させる。
囚人たちは隔離された場所で訓練を行うことになったが、脱走を図る者や厳しい訓練に辟易する者が出るなど士気は上がらず、監督する憲兵隊のボーレン軍曹(リチャード・ジャッケル)やモーガン伍長も苛立ちを見せていた。
しかし、囚人たちは厳格なライズマンへの反発をきっかけに団結するようになり、ライズマンも反発心を利用して囚人たちを作戦遂行に耐え得るような部隊に鍛え上げていった。
訓練を通して次第に連帯感を増す囚人たちに満足したライズマンは、訓練終了日に労いとして訓練地内に娼婦たちを呼ぶが、ライズマンを毛嫌いする第101空挺師団のブリード大佐は、翌朝に手勢を率いて訓練地を制圧する。
ブリードは囚人たちを問い詰めるが、外出先から戻ってきたライズマンに不意を突かれ、武装解除させられ追い出されてしまう。
ブリードは腹いせに「囚人たちの練度は低くて役に立たない」とウォーデンに報告して作戦を中止に追い込もうとする。
ライズマンもウォーデンに直談判するが、議論は平行線を辿り、ウォーデンの幕僚であるアンブラスター少佐の提案で、近日中に行われる予定の軍事演習にライズマンの部隊を参加させ、その場でブリードの部隊と競わせて実力を証明させることになった。
軍事演習の当日、囚人たちは負傷兵に扮してブリードの指揮所に紛れ込み、後から駆け付けた救護兵に扮する別動隊と共に指揮所を占拠して、ウォーデンとブリードに自分たちの実力を認めさせる。
いよいよ作戦が決行され、囚人たちはライズマンとボーレンに伴われてフランス領内へ落下傘降下する。
隊員ヘミネスが樹木に引っかかって事故死し、残りの隊員たちはドイツ軍が保養所として使っている城館に潜入する。
ドイツ軍将校に扮したライズマンと隊員ウラディスローは邸内から部隊を手引きするが、訓練中から「精神破綻者」と指摘されていた隊員マゴットが、ドイツ軍将校が同伴した女性を殺し、さらに味方の隊員に向かって銃を乱射したため作戦に障害が出てしまう。
マゴットは味方によって射殺されたが、ドイツ軍将校たちは地下の倉庫に逃げ込んでしまい、周辺のドイツ軍も騒ぎを聞きつけて屋敷に急行する。
ドイツ軍との銃撃戦の中で隊員たちは次々に死んでいき、ライズマンは地下への通気口に大量の手榴弾とガソリンを仕掛けて、ドイツ軍将校たちを屋敷ごと爆殺する。
作戦は成功して、連合軍は予定通りノルマンディーに上陸するが、挺身隊の中で生き残ったのは満身創痍のライズマン、ボーレン、ウラディスロー(チャールズ・ブロンソン)の3人だけだった。
そして作戦成功に対する褒賞として、ウラディスローは放免、死んだ11人の囚人たちは名誉回復となった。
コメント:
原作となった小説『12人の囚人兵』は、1965年に発表され、200万部以上を売り上げ、10言語に翻訳されたベストセラー小説だ。
元々ジャーナリストだったナサンソンは、戦時中に従軍カメラマンを務めていた友人ラス・メイヤーから聞いた「懲罰部隊」の話に触発され、執筆を行った。
その後、ナサンソン自身の調査では、メイヤーが語ったような部隊の存在が確認できなかったため、フィクションとして発表された。
メイヤーの話は、フィルシー・サーティーンとして知られる部隊に関する噂に基づいていると言われている。
後に「北国の帝王」('73)を作るロバート・アルドリッチ監督、リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインのトリオによる映画。
死刑囚を集めてナチスドイツへの「特攻大作戦」を敢行する話である。
人を集めて無謀とも思える作戦を実行するとうコンセプトは、「七人の侍」('54)が原形かも。
ナチスの本部に潜入してからの緊迫感は見事で、ナチスの殺し方は恐ろしく残虐。
作戦での生き残り方を見ても、「七人の侍」の影響を感じる。
2016年の「スーサイド・スクワッド」公開によりその元ネタ映画として知名度が上がった映画とされている。
とにかく、文句なしの戦争アクション。
陸軍刑務所に収監された死刑囚など12人を使って、敵のクラブに潜り込み将官たちを暗殺するミッション。
前半は反抗的な12人をうまく訓練し、なおかつ指揮官の少佐との信頼関係を築くまで、そして半ばには彼等の力を立証するための演習。最後は本番と手の込んだ仕立てとなっている。
リー・マーヴィンのかっこよい指揮官や一癖も二癖もある兵士たちをチャールズ・ブロンソン、テリー・サバラス、ドナルド・サザーランドなど個性派俳優が演じていて楽しい。
(このシーンの冒頭で一番左にいるのがサザーランドで、リー・マーヴィンとのやりとりがウケる!)
ストーリーはシンプル。
今となっては散々繰り返されてきたフォーマットだ。
不良の巣窟にやってきた謎の新任教師が、最初は生徒たちに反発されるも、意地悪な教頭先生に共に立ち向かったりしてるうちに俺たちの味方なんだと気づいて、最後にはかけがえのない信頼関係が築かれていく、みたいな学園ドラマでも使われるパターンの先駆的存在。
鬼教官をやらせたら天下一品のリー・マーヴィンの顔力で並みいる乱暴者を手なずけていく。
主要なヤンチャ者は、ジョン・カサヴェテス、チャールズ・ブロンソン、テリー・サバラスなど。
ドナルド・サザーランドはコメディリリーフ的ポジション。
映画デビューして5年目の作品で、ようやくこれまでの地味な脇役から一歩進んでしっかり存在感を見せるポジションになっており、本作で名前を知られるようになった。
大佐役のロバート・ライアンが意地悪をする役どころを一手に引き受けていて、彼らに理解のある立場として少将(アーネスト・ボーグナイン)、少佐(ジョージ・ケネディ)、軍曹(リチャード・ジャッケル)を配している。
残り40分の軍事作戦まではユーモアを交えて、登場人物の人間関係構築に時間をかけている。
ドンパチの戦争シーンの前に見せるチームワーク作りの場面があるから、達成感が味わえるのだ。
作戦前夜に最後の晩餐のようなシーンがあってからのクライマックスは、イチかバチかの大胆な潜入作戦。
味方の犠牲もありつつ、罪のなさそうな人たちもまとめて爆破する乱暴な作戦をやってのける。
1967年最大の戦争もののヒット作と言われている。
とにかく最初から最後までハラハラドキドキの連続で目が離せない。
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