「逃亡者」
(原題:The Fugitive)
1993年8月6日公開。
ハリソン・フォード主演の大ヒット作品。
興行収入:$368,875,760。
脚本:デヴィッド・トゥーヒー、ジェブ・スチュアート
監督:アンドリュー・デイヴィス
キャスト:
リチャード・キンブル博士:ハリソン・フォード
ジェラード連邦保安官補:トミー・リー・ジョーンズ)
アン・イーストマン医師:ジュリアン・ムーア
ニコルス博士:ジェローン・クラッベ
ヘレン:セーラ・ウォード
片腕の男:アンドレアス・カツラス
あらすじ:
シカゴの著名な外科医リチャード・キンブル博士(ハリソン・フォード)は、富と名声に恵まれた順風満帆の人生を送っていた。
ある夜、緊急手術を終えて帰宅してみると、家から見知らぬ片腕の男が飛び出して行き、中では妻ヘレン(セーラ・ウォード)が倒れていた。
虫の息の彼女はキンブルの腕の中で息絶えた。
キンブルは妻殺しの容疑で逮捕され起訴された。
片腕の男(アンドレアス・カツラス)を見たというキンブルの主張も空しく、次々と不利な状況証拠を突きつけられたこともあって死刑判決が下った。
州立刑務所へ身柄を移送される途中、護送車が列車と衝突する事故が起き、かろうじて助かったキンブルはその場から脱出した。
こうして身の潔白を証明するために片腕の男を探し求めるキンブルの逃走の旅が始まった。
一方キンブルの逃走を察知した官憲は、ジェラード連邦保安官補(トミー・リー・ジョーンズ)を捜査の最前線に配置して、キンブルを追跡する。
ジェラードはキンブルを巨大ダムの排水口に追いつめるが、キンブルはそこから決死のダイビングを試みる。
九死に一生を得たキンブルはシカゴに戻り、元同僚のアン・イーストマン医師(ジュリアン・ムーア)の協力で、病院の中にある義手を持つ人のリストを調べあげ、遂に片腕の男の居所をつきとめる。
彼の家に忍びこんだキンブルは、事件の黒幕が親友のニコルス博士(ジェローン・クラッベ)であることを知り、彼の業績をたたえるパーティの会場に乗りこんでいく。
キンブルとニコルスは大乱闘となるが、駆けつけたジェラードによってニコルスは真犯人として逮捕されるのだった。
コメント:
妻殺しの罪を着せられた医師が警察に追われながらも真犯人を見つけ出すというサスペンス映画。
1960年代に大ヒットしたテレビドラマ「逃亡者」の映画化。
医師リチャード・キンブルをハリソン・フォード、連邦保安官補サミュエル・ジェラードをトミー・リー・ジョーンズが演じている。
妻を殺された上に、その犯人にされてしまった医師キンブル。
冤罪を晴らすべく、警察に追われながらも真犯人を探す。
ハリソン・フォードがヒゲぽうぽうで登場したので、イメージの違いにビックリするが、後の逃亡を考えると、ヒゲを剃れば変装になるのでそれを踏まえた上での役作りだろう。
また医者という設定がいろんな意味で活かされた巧い脚本だ。
まず怪我しても自分で治す。
犯人は義手の男だと判っているので病院関係にも潜り込みやすい。
そこで適切な医療を受け損ねている子供を見ると黙っていられず、つい助けてしまうので、自らピンチを招いてしまう。
そして今回の事件の裏に隠された真相は、やはり仕事と関係があったのだ。
人間味溢れる優しさが、キンブル犯人説に疑問を投げかける一因にもなるのだ。
追手は連邦保安官補のジェラード。
演じるトミー・リー・ジョーンズが、アカデミー助演男優賞を受賞。
てきぱきした采配から、有能さが窺える。
状況を素早く把握し、的確な指示を出す。
テンポの速さが気持ちいい。
何が起きても決して諦めず、死んだと言われても死体を発見するまで追い続ける覚悟が感じられる。
その優秀さはただキンブルを追い詰めるだけでなく、事件の真相に徐々に近づいていくのも見所。
儲け役ではあるが、アカデミー受賞も納得だ。
この役の評判が上々だったので、この後ジョーンズ主演で『追跡者』が作られることになる。
追う者、追われる者の知恵比べが面白い。
ジェラードは常にキンブルのすぐ後ろに迫っている。
この緊迫感の持続が堪らない。
全体的に常にスリリングな展開が楽しめる。
キンブルが逃げることになるきっかけとなった事故からハラハラもの。
病院に忍び込んでも早速警官と遭遇、そのかわし方が絶妙。
顔を知られている護送官の存在。
緊急車両での逃走。
トンネルにヘリ、地下道にダムと、次々と移り変わる画面についていくのが忙しい。
階段から街中、そしてパレードと、息次ぐ間もない畳みかける追っかけっこだ。
さて、キンブルの真犯人探しの唯一の手掛かりは右腕義手の男。
対象者を絞り込んでいく手順にも納得。
警察にわざと居場所を知らせるのもうまいやり方だ。
そして、この事件を仕組んだ人物の正体とは…。
その理由は何か。
真相が究明された後もアクションのサービス。
キンブルとジェラードの何気ないやりとりで、後味の良い締めくくりとなった。
本作ではジェラードの役職がテレビドラマ版とは異なり、所轄の警察の警部(警部補)から連邦保安官補へと変更されている。
これはジェラードが逃亡するキンブルを追って広範囲の捜査を進めるという状況に説得力を持たせるための変更であると言われている。
ただし現実における連邦保安官とは、連邦司法制度の保護(連邦判事・検事の警護、連邦裁判所の警備、連邦刑務所の管理、証人保護プログラムの実施等)をその所掌事務とする司法省の一部局(連邦保安局)の構成員であり、州法上の殺人罪で死刑判決を受け、郡刑務所に移送中の囚人が逃走したとしても、現実には捜査権を持たない。
これを強行すればまさに越権行為であり、連邦―州間の行政訴訟問題へと発展しかねないのだ。
いずれにせよ、テレビドラマを上回るスリルとサスペンスが際立つ名作である。
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