「未知との遭遇」
(原題:Close Encounters of the Third Kind)
人類が初めて異星生命体と接触する姿を描くSF。
1977年11月16日公開。
興行収入:$306,889,114。
受賞歴:
アカデミー賞:撮影賞、特別業績賞(音響効果編集)
英国アカデミー賞:プロダクションデザイン賞
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:
ラコーム:フランソワーズ・トリュフォー
バリー:ケイリー・グッフィ
ジリアン:メリンダ・ディロン
ロイ:リチャード・ドレイファス
ロニー:テリー・ガー
あらすじ:
砂漠。
砂塵の中に第二次世界大戦に使われたらしい戦闘機の姿がみえる。
それは真新しく、20数年前の消失当時と同じ姿だ。
調査団一行のリーダー、ラコーム(フランソワーズ・トリュフォー)により、発見の様子が語られる。
インディアナポリスの交信コントロール・センターのスクリーンに未確認飛行物体の姿が写し出され、TWA機より、不思議な物体を見たという連絡が入る--。
同じ頃、インディアナ州のある人里離れた一軒家に奇妙な事が起こる。
バリー(ケイリー・グッフィ)という少年が、周囲の物が震動するので目をさまし、何物かに引かれるように家をとびだしていったのだ。
母親ジリアン(メリンダ・ディロン)は、彼のあとを追う。
そして、一方、同じ町に住む電気技師ロイ(リチャード・ドレイファス)は、この一帯の停電を調べるため車を走らせていた。
そこへ恐ろしい光が……。
ロイは、この光を追い、バリーやジリアンに出会う。
そしてUFOらしき光が空を横切った--。
やがて、ロイは怪光に夢中となり、会社もクビとなり、妻ロニー(テリー・ガー)と子供達にまで逃げられる。
またラコーム達は、UFOとのコミュニケーションの可能性を見い出す。
ジリアンは失踪したバリーをさがし、一方ロイはこの異常なミステリーの原因を解こうとした。
そして、ロイのイメージは『山』にひっかかり、その山の模型を作るようになる。
ジリアンも自らのイメージの山の絵を描き、それは、ワイオミング州にあるデビルズ・タワーであることがはっきりした。
そして今、その山は、毒ガス発生のため付近の住民に避難命令が下されていたのだ。
そしてその山こそは、今までこの怪事件に出会った人々のイメージの中の山だった。
そう、これこそがUFO、つまり異星人との接触が予定されていた地点なのだ。
政府はこれを隠そうとしている。
この出来事をひろめてはならない。
だが、ロイとジリアンは追手をふりきり、ついに、このデビルズ・タワーに登る。
そして、そこで見たものは。
そして、ここで彼らが経験したものは、今まで人類が誰一人として経験したことのないことであった--
大きなUFOの母船(マザー・シップ)が降りてくる。
その輝くばかりの船体。
そして、今まで行方不明であった人々がその中より降りてくる。
あの戦闘機の乗員が、あのバリーが降りてくる。
やがて、ぼんやりとした中から、手の長い異星人が降りてくる。
そして異星人は、今しずかに人類に向かってほほえみかける--。
人類史上初の異星人との触合--、この一瞬に人々はたちつくす。
やがて、ロイも含めた地球人の代表団は、母船に乗りこむ。
彼ら異星人の星へ行くために--。
間もなく、光り輝く母船は静かに上昇していく。
そして今、人類は新たなる世紀の時へ歩もうとしているのだった--。
コメント:
世界各地で発生するUFO遭遇事件と、最後に果たされる人類と宇宙人のコンタクトを描いた、大ヒットSF大作。
原題の「Close Encounters of the Third Kind」とは、「第三種接近遭遇」の意。
これは、ジョーゼフ・アレン・ハイネックの著書で提唱された用語であり、人間が空飛ぶ円盤に接近する体験のうち、搭乗員とのコンタクトにまで至るものを指す。
フランスの映画監督フランソワーズ・トリュフォーが出演しているが、それまでトリュフォーは自作の映画にしか出演せず、またSF嫌いで「宇宙だのロボットだのは生理的に嫌悪感がする」とまで公言していた。
そのため、本作への出演は驚かれた。
監督のスピルバーグとはアメリカに行くたびにパーティ等で会い、出演を打診されていた。
当初コロンビア ピクチャーズは、リノ・ヴァンチュラかジャン=ルイ・トランティニャンを起用する予定だったが、スピルバーグがトリュフォーに出演を懇願し続けて実現したものである。
あの五音階の電子音が夜空の暗闇に響くなか、徐々に姿を現す巨大なマザーシップの壮麗な美しさに圧倒される。
宇宙人との接触を描いたミステリアスな物語とともに、そんな臨場感いっぱいのラストシーンが心に残る出色のSFファンタジーだった。
俳優として出演したF・トリュフォーの役に馴染んだ好演も見応えあり。
本作のストーリーは『十戒』を基にしている。
劇中でも「山」に向かうことになる主人公の家族が家のテレビで『十戒』を観ているシーンがある。
また、宇宙船が現れる前ぶれとしての雲の動きは、まさに紅海が割れる場面の雲の動きとそっくりなのである。
そして、宇宙船が地球に到着する感動は、モーゼが紅海を割る奇蹟と、意識の中でつながってくるのだ。
欧米のキリスト教を信じる人々にとっては、こういうシーンが心に残ったのだろう。
子供のころから、神の存在や、モーゼの教えや、キリストの説教などの逸話を聞かされて育った人たちには、自分たちの精神世界に近い映像が観られたことで、この作品への賛同の気持ちが沸き起こったのだろう。
Rotten Tomatoesでは、批評家の肯定的評点が90%、観客の肯定的評点が85%となっている。
オリジナル版の他に、マザーシップ内を公開した1980年の『特別編』、さらに再編集や修正がされた2002年の『ファイナル・カット版』がある。また、アメリカABCテレビで143分の版が放映されたことがある。
この映画は、以下のサイトで動画配信可能: