「見知らぬ乗客」
(原題:Strangers on a Train)
1951年7月3日公開。
偶然乗り合わせた客から交換殺人を申し込まれるスリラー映画。
興行収入:$7,020,913。
原作:パトリシア・ハイスミス
脚本:ウィットフィールド・クック
監督:アルフレッド・ヒッチコック
キャスト:
ガイ・ヘインズ:ファーリー・グレンジャー
ブルーノ・アントニー:ロバート・ウォーカー
アン:ルース・ローマン
ミリアム:ケイシー・ロジャース
あらすじ:
アマチュア・テニス選手として名の通っているガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、ワシントンから故郷メトカルフへ離婚のため帰る途中、列車の中で不思議な青年ブルーノ・アントニー(ロバート・ウォーカー)と知り合った。
ブルーノは、ガイが最近妻ミリアム(ケイシー・ロジャース)と不和になり、モートン上院議員の娘アン(ルース・ローマン)と結婚したがっていることを知っていて、自分の父を殺してくれるならミリアムを殺してやろうと申し出たのである。
むろんガイはこの交換殺人を一笑に付したが、アントニーは遊園地の草原で本当にミリアムを殺してしまった。
ガイはアリバイが不充分なまま刑事の尾行を受けることになったが、そのスキを狙ってブルーノはしつこく返礼殺人をガイに迫るのだった。
ガイも、この事実を知ったアンも、心からブルーノに翻意を促したが、彼はいよいよ狂的になって行き、ついにフォレスト・ヒルの試合当日、ブルーノは車中でガイからかすめたライターを現場に置いてくる計画をたてていることが判った。
ガイは必死に試合をすすめ、敵に辛勝して尾行刑事をまき、ブルーノを遊園地に追った。
2人はメリーゴーランド上で対決、あわてた刑事の一弾が係の男を倒したので、突然急転をはじめたメリーゴーランドの上の格闘は凄絶をきわめるものとなった。
つにい回転木馬は心棒から折れて、こっぱみじんに崩け、ガイは外へ放り出されたが、ブルーノは敢えなく下敷きとなって息絶えた。
その手の中に握られていたライターによって、ガイの容疑が晴れたのはいうまでもない。
コメント:
ヒッチコック監督のサスペンス映画である。
列車に乗り合わせた見知らぬ乗客から交換殺人を持ちかけられたテニスプレーヤーを描いている。
パトリシア・ハイスミスの原作を気に入ったヒチコックが映画化権を手に入れた。
フィリップ・マーロウが主人公の「かわいい女」を発表した後のハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーに脚本を依頼したが出来栄えがさっぱりだったのでチャンドラーの脚本を原型がないほど大幅に書き直した脚本をもとに撮影されたそうだ。
無駄がない完璧なカット割。
文句ない傑作。
有名なテニスコートのカットも印象的だが、心に残ったのは遊園地の中でブルーノが腕力試しのゲームをする場面だ。
ハンマーで台を叩くと錘が柱を登って柱の天辺に設置された鐘を鳴らすゲーム。
ブルーノはハンマーを手に取り、ニヤリと笑って台を思い切り叩く。
錘は柱を駆け昇って鐘を鳴らす。
それだけなのだが「シャイニング」のジャック・ニコルソンが斧を扉に叩きつけるカットを思い出させる。
ゲームをやっているだけなのだが、まるで人を殺している場面のように見える。
見慣れたものが別のものに見えるというヒッチコックならではの腕の冴えだ。
最後の最後までハラハラさせる傑作。
何といっても、主人公が結婚したい女性・アンを演じているルース・ローマンの美しさが際立っている。
この女優は、マサチューセッツ州出身。
両親はリトアニア系ユダヤ人。
1940年代から1950年代にかけて、アルフレッド・ヒッチコック監督のスリラー映画の本作『見知らぬ乗客』に出演したのを始め、カーク・ダグラス主演の『チャンピオン』、ゲイリー・クーパー主演の『ダラス』、ジェームズ・スチュワート主演の『遠い国』など、多くの映画で主人公の相手役を演じた。
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「挑発的な基本設定と独創的なセットデザインがヒッチコックの悪魔のように面白い傑作への道を照らしている。」であり、評論家による好評価は98%となっている。
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