「フレンチ・コネクション」
1971年10月7日公開。
フランスと米国を結ぶヘロインの密売ルートを追う。
アカデミー賞各賞獲得の名作。
興行収入:$51,700,000。
受賞歴:
1971年 第44回 アカデミー賞 主演男優賞
1971年 第44回 アカデミー賞 作品賞
1971年 第44回 アカデミー賞 脚色賞
1971年 第44回 アカデミー賞 監督賞
1972年 第29回 ゴールデングローブ 男優賞(ドラマ)
1972年 第29回 ゴールデングローブ 作品賞(ドラマ)
1972年 第29回 ゴールデングローブ 監督賞
原作:ロビン・ムーア
脚本:アーネスト・タイディマン
監督:ウィリアム・フリードキン
出演者:
ジーン・ハックマン 、 ロイ・シャイダー 、 フェルナンド・レイ 、 トニー・ロー・ビアンコ 、 マルセル・ボズフィ 、 フレデリック・ド・パスカル 、 エディ・イーガン 、 ソニー・グロッソ 、 ビル・ヒックマン 、 アン・レボット
あらすじ:
フランスのマルセイユで刑事が1人殺された。
同じ頃、ニューヨークのブルックリンでは、通称ポパイと呼ばれるドイル刑事(ジーン・ハックマン)と相棒のラソー刑事(ロイ・シャイダー)が、麻薬の売人狩りに躍起になっていた。
2人は、とあるクラブで金使いのあらい男を見つけ、クサイとにらんだ。
そのイタリア人の男はサル・ボカ(トニー・ロー・ビアンコ)といい、やはり麻薬ルートとつながりを持っていた。
一方、マルセイユの港では刑事を射殺した殺し屋ニコリ(マルセル・ボズフィ)が、フランスの実業家シャルニエ(フェルナンド・レイ)と密談していた。
シャルニエはテレビ・スターのアンリ(フレデリック・ド・パスカル)を使って、アメリカの麻薬ルートとのコネクションを図っていた。
ドイルとラソーは、サルを洗っていくうちに仇敵の麻薬商人のワインストックと、シャルニエを捜査線上に描き出していた。
それから、ドイルたちのシャルニエに対する執拗な尾行が始められた。
しかし、ドイルはシャルニエの悪知恵にまんまとまかれてしまった。
ドイルの上官のシモンソンは、本格的な尾行活動に先だって、連邦警察官のマルデリッグとクラインの2人を、ドイルとラソーに組ませたが、彼らの間には絶えず険悪な空気が流れていた。
そうした頃、アンリがはるばるフランスから船で運んできたリンカーン車が、ニューヨークの港に着いた。
数日後、ドイルはビルの屋上から何者かに狙撃された。
それは殺し屋のニコリだった。
狙撃に失敗したニコリは高架線の地下鉄で逃走を図った。
ドイルは手近の車を徴発して、ニコリを追った。
高架線の上と下で、暴走する地下鉄と自動車のすさまじい競走が繰り広げられた。
そして数十分後、他の電車に激突した車両から出てきたニコリの体をドイルの執念の銃弾が貫いた。
更にアンリの車が怪しいとにらんだドイルは、車を押収し解体して、大量のヘロインを発見、それを元通り復元してアンリに戻し、罠を張った。
そうとは知らぬシャルニエとワインストック、サルの一派は、ワード島で取引を行なった。
しかしその時には、ドイルたちに率いられた警官隊が周囲を包囲していた。
やがて激しい銃撃戦が展開され、サルは射殺され、ワインストックは逮捕された。
また、廃墟に逃げ込んだシャルニエを追ったドイルは、誤って仲間を1人射ってしまったが、うろたえるラソーに一瞥をくれただけでひるまずにシャルニエを追い詰めていった。
やがて、その廃墟に、銃声が一発響いて消えた。
コメント:
原作はロビン・ムーアによる同名のノンフィクション小説。
1961年に発生した、ニューヨーク市警察本部薬物対策課のエドワード(エディ)・イーガンとサルヴァトーレ(ソニー)・グロッソがフランスから密輸された麻薬約40キログラムを押収した実在の事件がモデルとなっている。
タイトルの「フレンチコネクション」とはトルコからフランスを経由して米国に輸出されていたヘロインの密売ルートおよびその組織のこと。
イーガンとグロッソはアドバイザーとして制作に協力しており、両者とも本編にカメオ出演を果たしている。
「ダーティハリー」と本作は、のちの刑事映画や刑事ドラマに大きく影響を与えたといわれている。
この作品では追跡が映画の大半を占める。
刑事が逃げる犯人を追いかけるというのは、刑事ものの定番だ。
走る刑事と逃げる犯人の疾走感だけでなく、評判を呼んだカーチェイスもある。
やたらと車が壊されるわけではないのだが、このスピード感がスリリングだ。
プロデューサーのフィリップ・ダントニは、この映画の三年前に「ブリット」を製作したが、カーチェイスも好評だったので、再び採用したのだろう。
ストーリーは割と単純だが、麻薬密売組織を追い詰めようとする二人の刑事の執念が最大の見どころ。
二人の刑事、ジーン・ハックマン扮するポパイとロイ・シャイダー扮するクラウディは、暴走するポパイをクラウディがなだめる格好のバディムービーにもなっている。
アメリカンニューシネマ時代の作品ということで、ドラッグやセックスに溺れる人々の描写は約束事のように盛り込まれている。
ポパイは刑事ではあるが、聖人君子のような正義漢ではない。
女性が欲しくなれば行きずりの女と一晩を過ごすし、暴力で自白を迫る行き過ぎた捜査もあり、その過激さは狂人そのもの。
本作は、序盤の時点で麻薬密輸の犯人が分かってしまう。
サスペンス的な謎解きは皆無で、犯人を追うスリリングさをひらすら楽しむだけで良い作品なのだ。
地下鉄の駅構内で犯人を尾行するシーンや、麻薬を密輸する手口などは凝っていて面白さは十分。
また、ブルックリンという街の背景も映像を際立たせました。
あの映画史に残る地下鉄を追うカーチェイスシーンは、地下鉄が地上を走る区間だから撮れたので舞台選びは最高だ。
ちなみにこのカーチェイスのスタントマンは「ブリット」のサンフランシスコでのカーチェイスと同じ人だ。
そして、ウィリアム・フリードキンのカメラワークと合わさって、リアリティをスゴく感じる。
終盤に至るまでに犯人に逃げられてばかりだったので、もう逃がさんという狂気に近い執念は伝わってくる。
犯人に近づいては逃げられて、また近づいては逃げられる繰り返しなのでスリルはある。
ヘロインの隠し場所からの下りから、廃屋での銃撃戦に至るまでは、当時の映画らしいクライマックスで、もう最高。
これを選んだ黒澤明。
彼が、アメリカンニューシネマをいかに好んでいたか、だんだん分かってくる。
この映画は、Amazon Primeで動画配信可能: