「エクソシスト」
(原題:The Exorcist)
1973年12月26日公開。
少女の肉体から悪魔を追放しようとする悪魔払い師の恐怖の戦いを描く。
興行収入:$441,071,011。
第46回アカデミー賞脚色賞・音響賞を受賞。
脚本:ウィリアム・ピーター・ブラッディ
監督:ウィリアム・フリードキン
キャスト:
リーガン:リンダ・ブレア
クリス:エレン・バースタイン
メリン神父:マックス・フォン・シドー
カラス神父:ジェイソン・ミラー
バーク・デニングス:ジャック・マッゴーラン
キンダーマン警部:リー・J・コッブ
あらすじ:
北イラクの古代遺跡。
アメリカの古生物学者でありカトリックの神学者でもあるメリン神父(マックス・フォン・シドー)は、発掘中に悪霊バスズの偶像を発見した。
吹きすさぶ風の中、灼熱の焔を吹き上げて、今まさに沈まんとする太陽を背に、いつか再びこのバズスと対決することを異様な戦慄と緊迫感のの中で全身に感じていた。
ところ変わって、ここはワシントンのジョージタウン。
ロケのため臨時に借家住まいをしている人気女優クリス(エレン・バースタイン)は屋根裏で響く異様な物音に悩まされていた。
初めはネズミの仕業だろうとさほど気にしなかったが、まもなく一人娘のリーガン(リンダ・ブレア)の身に恐るべき事が起こり始めたのだ。
それはリーガンの誕生パーティの夜だった。
各界の名士を集めたパーティも夜更けてほんの数人になった頃、憑かれたようにリーガンがベッドから起きだして居間へやってくると、客の1人である宇宙飛行士に向かって<おまえは宇宙で死ぬぞ>といってその場に放尿するのだった。
数日後の夜、リーガンの悲鳴に寝室にかけ上がったクリスは一瞬わが眼を疑った。
リーガンを乗せたベッドが巨大な何者かに揺られているように上下左右に揺れ動いているのだ。
近代医学の粋を集めた大病院での検査もいっこうにらちがあかず、たまりかねたクリスは精神科医を訪ねる。
だがその診察中、リーガンはいきなり医師の股間に手を伸ばし、凄まじい勢いで締めあげると「さわるんじゃない!この牝豚は俺のもんだ」と叫んだ。
それはまぎれもなく悪魔の声だった。
クリスが主演した映画を監督したバーク・デニングス(ジャック・マッゴーラン)が恐ろしい死に方をし、キンダーマン警部(リー・J・コッブ)がクリスの家に出入りし始めたのもこの頃からだった。
リーガンの形相は一変した。
あどけなかった顔が醜い悪魔のそれに変わって、瞳にたえず憎悪と嘲笑の笑いを浮かべ、神を冒涜する卑猥に満ちた言葉をまき散らす。
部屋は異様な臭気に満ち、コケのはえた長い舌を蛇のように出し入れし十字架を手に「ファック・ミー」「イエスはお前とやりたがっている」。
そんな言葉の合間にも「いやよ、やめて」というリーガンの泣き声が口をつく。
十字架をつきさして血に染まる股間にクリスの顔をおしつけ、狡猾な笑いを浮かべたまま首を敢然に1回転させる…これは、悪魔が自分の力を誇示するために最もよく使う方法である。
万策つきたクリスは、“悪魔払いの儀式”を行なってもらおうと、カラス神父(ジェイソン・ミラー)に頼み込むが、神父はそれを信じない。
しかし、リーガンの腕に“ヘルプ・ミー”の文字が浮かび上がったとき、彼は現代ではすたれてしまった“悪魔払いの儀式”を行なうことを決意した。
カトリックの中でも数少ない悪魔払いの経験者、メリン神父が呼ばれカラス神父を助手に悪魔との壮絶な闘いが始まった。
凄まじい言葉のやりとり。
しかし、闘い半ばにしてメリンは心臓発作で倒れてしまった。
苦境に立たされたカラスはリーガンの体をつかみ殴りつける。
その彼の顔が突然、悪魔の形相となり、そのまま窓から表に身を投じた。
石段を転落して行くカラスの死体。
2人の神父の死によって、とうとう悪魔はリーガンの肉体を離れ、滅び去ったのだった。
コメント:
20世紀も後半の現代のワシントンで、12歳になる女優の孫に悪魔がとりつき、可憐な少女の肉体から悪魔を追放するために立ち上がった悪魔払い師(エクソシスト)の恐怖の戦いを描く。
悪魔祓いを一躍有名にし、ホラー映画ブームのきっかけとなりいまだにスピンオフ作品が作られているホラー映画の金字塔である。
その迫力と恐怖感は暗い劇場の大画面で観ると半端ではない。
俗に背筋も凍ると言うが、緊迫感と共にうすら寒さを感じた印象は強烈だ。
題名となっているエクソシストとは、英語で"悪魔払い(カトリック教会のエクソシスム)の祈祷師"という意味である。
本作の大ヒットにより、その後シリーズ化されている:
- エクソシスト2(EXORCIST II: THE HERETIC 1977年)
- フリードキンが製作したエクソシストの続編。監督はジョン・ブアマン。リーガンのその後を映画オリジナルで描いた作品。前作の事件を調査するラモント神父(リチャード・バートン)は、リーガン(リンダ・ブレア)にまだ悪魔が憑いていることを突き止める。ホラーというよりはSFに近い作りで、今なお賛否両論分かれる作品。絶賛派の代表として都筑道夫の「この数年間でただ一度、終わったとたんに、思わず、拍手してしまった映画」(集英社文庫ほか「サタデー・ナイト・ムービー」)の一文があるが、都筑は同書で正編を「わかりやすいのだけがとりえ」と一蹴しており、2本の映画で党派が分かれる傾向の一例ともなっている。
- エクソシスト3(THE EXORCIST III 1990年)
- ブラッティの小説Legionを原作とした作品。原作者のブラッティが前作の『エクソシスト2』の出来に怒り3作目を制作した。前作までの制作会社であったワーナー・ブラザースへの不信感から、20世紀フォックス社へ企画を持ち込んでまでの実質的な『エクソシスト』の続編であった。当初ブラッティ自身は「『エクソシスト』の続編」としての公開を嫌がったが、自らが製作・脚本・監督の主要3職を兼任する事で合意。ブラッティの目が行き届いた「『エクソシスト』の正当な完結編」として制作された。第1作の脇役キンダーマン刑事を主人公に、悪魔によって連続殺人鬼の魂を体に押し込まれたまま蘇生していたカラス神父との最後の戦いを描く。作風は、当時珍しかったサイコスリラーの体裁をとっており、このジャンルのはしりとなった。キンダーマンにジョージ・C・スコット。カラスは第1作と同じくジェイソン・ミラー。日本の映画監督、黒沢清が非常に影響を受けた作品として絶賛している。
- エクソシスト ディレクターズカット版(The Exorcist: The Version You've Never Seen 2000年)
- エクソシスト公開25周年を記念して、公開時にラッシュ版からカットされた15分ほどのシーンを追加した作品。リーガンがブリッジ姿勢で歩く蜘蛛歩きのシーンが一部復活し、話題を呼んだ。
- 当初日本公開が2000年10月7日の予定であったが、公開数日前に突如としてワーナーブラザースが公開延期を発表(アメリカ本国では2000年9月22日に公開済)。その後、公開日の調整を経て同年11月23日に日本公開した。公開延期の理由としてワーナーブラザースは「編集を加えるため」と発表したが、公開直前の延期という異例の対応にインターネット上では「話題作りを狙ったものだ」など諸説噂が飛び交う事態となった。
- エクソシスト ビギニング(EXORCiST: THE BEGiNNiNG 2004年)
- エクソシストに登場したメリン神父を主人公にした作品。
- エクソシストの謎(La Casa 4:Witchcraft 1988年)
- リンダ・ブレア出演のホラーだが、シリーズとは無関係の作品。
- エクソシスト・トゥルーストーリー (POSESSED)
- メリーランド悪魔憑依事件を基にした作品だが、シリーズとは別の作品。
- 裸の十字架を持つ男/エクソシストフォーエバー (Repossessed)
- レスリー・ニールセンが主演の同作品のパロディ作品。しかしただのパロディではなく、悪魔に取り憑かれる同役でリンダ・ブレア本人が出演している。
- エクソシスト3(THE EXORCIST NO.2)
- イタリアで製作された作品。原題は“EXORCIST No.2”であり、日本でビデオリリースされた際に邦題として3がつけられた。『エクソシスト2』の同年に製作された、2匹目のドジョウを狙った作品であり、後年公開されたナンバリングタイトルとしての『エクソシスト3』とは、全く別の映画である。
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