永井荷風の映画 「渡り鳥いつ帰る」 荷風原作映画の第1作! 森繁久彌、田中絹代、 | 人生・嵐も晴れもあり!

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「渡り鳥いつ帰る」

 

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1955年6月21日公開。

永井荷風原作の東京下町の色町に生きる人々を描く映画化第1作。

 

原作:永井荷風『にぎりめし』『春情鳩の街』『渡鳥いつかへる』

脚本:八住利雄 

監督:久松静児 

 

キャスト:

久慈あさみ 民江
桂木洋子 種子
淡路恵子 栄子
高峰秀子 街子
織田政雄 佐藤由造
水戸光子 千代子
森繁久彌 吉田伝吉
田中絹代 おしげ
富田仲次郎 田部和市
浦辺粂子 まさ
二木てるみ 照子
勝又恵子 トヨ子
春日俊二 松田
太刀川洋一 村井
岡田茉莉子 鈴代
藤原釜足 老人

 

赤線ものの名作/ 生誕110年・森繁久彌特集 ☆上映中~6/2(金)迄 『渡り鳥いつ帰る』 1955 年・久松静児監督  永井荷風原作の映画化で、東京下町の赤線を舞台にした人情ドラマ。田中絹代、高峰秀子、岡田茉莉子、淡路恵子ら豪華女優陣が顔を揃える。|千代田区|千代田区民  ...

 

あらすじ:

吉田伝吉は、戦禍の中に妻千代子、娘トヨ子を見失ない、馴染みの女おしげにひきとられ、鳩の街の「藤村」の主人になる。

自分に夢中の時計工寺田を嫌いぬく疳癪持ちの栄子。

母親と娘照子を養う為に客から金銭をせびる苦労性の民江。

一緒になれる日を夢みて情人武田に金を貢ぐ種子。

恋愛と称して客の選り好みをするアプレ娘街子。

彼女等は「藤村」に働いている女達である。千代子は善良な佐藤由造に救われたのが縁で一緒におでん屋を開いている。鈴代は鳩の街の生活から足を洗い、その時の恩人松田、村井と共に流しの歌手をしている。

民江は病気になり家へ帰り、栄子は寺田から逃れる為に伝吉を誘惑して駈け落ちをする。

武田が帰らないので絶望している種子は失意の寺田と同情し合う。

駒形のどじょう屋で千代子、由造、栄子、伝吉は偶然出会う。

千代子が娘を育てているのを知り、伝吉は由造の店を訪ねるが自分の立場を知ると離婚届に捺すべき印鑑を置いて飛び出す。

警察に追われる武田は、手紙と返済金一万円を種子に渡す様にと鈴代に頼む。

鈴代は手紙だけ渡し、金は胸を病む松田の医療費に取って了うが、松田は鈴代と村井の幸せを希って帰郷する。

寺田は種子と死ぬつもりで家を出るが、自棄酒に酔った伝吉が川に落ちるのを見ると種子をおき去りにする。

伝吉と種子の「心中した」死体があがりおしげは驚く。

街子は種子の持物を持って逃げ、民江は子供が入院したので無理に働きに出る。

鳩の街の生活は今日も続けられる。

 

幻映画館(49)「渡り鳥いつ帰る」 : ふらり道草―幻映画館―

 

コメント:

 

永井荷風の短編小説『にぎりめし』『春情鳩の街』『渡鳥いつかへる』を映画化。

 

名匠・八住利雄が脚色し、監督は「おふくろ(1955)」の久松静児が担当。

 

出演者は、森繁久彌、田中絹代、高峰秀子、久慈あさみ、岡田茉莉子、淡路恵子など豪華俳優。

 

戦後間もない東京は向島の「鳩の街」という通りで、生活のために働いても報われることのない女性たちの辛さを浮き彫りにしていく。

その中でも、病を抱えながらも事故に遭った娘の医療費を稼がんとする久慈あさみがラストで言う台詞「体は売っても心は売らない」という言葉が胸を打つ。
 

妻子をほったらかしにする薄情な道楽者の森繁久彌も必ずしも憎み切れず、グデングデンに酔い潰れ、葛西橋の上で憂さを晴らすかのようにどなりまくる様は何ともしみじみしてくる。

それまで眠っていた弱さや哀愁が良く出ていた。その後直ぐに橋の上から呆気なく落っこちてしまう展開も、あまりに悲しすぎる。

 

永井荷風原作の色街もの。売春禁止法ができる前の向島の「鳩の街」という名前の通りを舞台に、そこで生きる男女の模様を描く。
とにかく出てくる女優陣がすごい。

田中絹代、久慈あさみ、桂木洋子、淡路恵子、高峰秀子、水戸光子、岡田茉莉子という豪華陣だ。

それを受ける藤村のお父さん役に森繁久弥だから、これはもう丁々発止の芝居があちこちで炸裂する。

 

色町を訪れる客は、みんないけ好かない男になっており、それだけに体を売るという女性の悲哀が明らかになっている。

一番楽しそうにしている淡路恵子も、森繁に「誰も好きでやってるんじゃない」というようなセリフを吐く。

足を洗った岡田茉莉子、子供のために病をおして働く久慈あさみ、自殺してしまう桂木洋子は言うまでもない。

だからと言って、映画は暗くない、辛い境遇にあっても何とか生きていく庶民の生活がそこにはある。


妖艶な淡路恵子、森繁久弥を誘惑するシーンは思わず膝を乗り出してしまう。

出色なのは、色町にいながらなんだかんだと働かない高峰秀子、彼女は結局自殺する同僚の荷物を盗んで逃げてしまう。

唯一、色街から自由な女として描かれ痛快である。

 

森繁久弥のお父さんの情けなさ、田中絹代のお母さんの強欲、いずれも素晴らしい。
監督は久松静児、うまい。

 

この映画は、2023年にも神保町シアターで上映されたようだが、その後は不明。

ぜひどこかのサイトで動画配信してほしい。