「ビクター/ビクトリア」
(原題:Victor Victoria)
1982年3月16日公開。
ジュリー・アンドリュース主演のミュージカル・コメディ。
興行収入:$28,215,453。
監督・脚本:ブレイク・エドワーズ
キャスト:
- ビクトリア/ビクター:ジュリー・アンドリュース
- キング:ジェームズ・ガーナー
- トディー:ロバート・プレストン
- ノーマ・キャシディ:レスリー・アン・ウォーレン
- スカッシュ:アレックス・カラス
- カッセル:ジョン・リス=デイヴィス
- ラビス:ピーター・アーン
- リチャード:マルコム・ジェイミソン
- ウェイター:グレアム・スターク
あらすじ:
1934年冬のパリ。同棲中のリチャードと口喧嘩をしたゲイの初老芸人トディ(ロバート・プレストン)は、浮かぬ顔で勤め先のナイト・クラブ・リュイにゆく。
折しも、一人の女が経営者ラビスのオーディションを受けていた。
ワイン・グラスが砕けるほどの凄いソプラノだったが、ここではそんな声は必要なかった。
彼女の名はビクトリア(ジュリー・アンドリュース)。
ここ数カ月、職がなくアパートの大屋からは、うるさく家賃の催促をされていた。
一方、リュイでは、トディがリチャードと一悶着をおこし、クビになってしまう。
彼は近くのレストランで、ビクトリアを見かけて中へ。
彼女はたらふく食って、用意のゴキブリを出し無料にさせようという魂胆だった。
ゴキブリが店内を歩き廻って大騒動になったすきに二人は逃げ出した。
トディは彼女を自分のアパートにつれてゆく。
彼女の服が雨のために縮んでしまい、かわりにリチャードの服をきたところ、これが良く似合うので、トディが妙案を思いついた。
ビクトリアをポーランドの伯爵ビクター・グラジンスキーということにし、ゲイの歌手として有力興行者カッセルに売り込んだのだ。
六週間後、彼女はビクターとして初舞台を踏む。
結果は大成功。
見物客の1人、シカゴのクラブ経営者キング(ジェームズ・ガーナー)が彼女に惹かれ、楽屋におしかける。
キングには彼女が男とはどうしても思えなかった。
彼があまりに熱をあげるので、愛人ノーマ (レスリー・アン・ウォーレン)が怒り出したため、用心棒のスクウォッシュ(アレックス・カラス)に命じて帰国させる。
ついにホテルの部屋に侵び込み、浴室でビクターが女であることを目撃する。
キングは彼女とトディをつれて、リュイにゆく。
トディはまたもや現われたリチャードと喧嘩を始めた。
その大混乱を抜け出したキングとビクトリア。
彼女は女であることを告白。
2人がベッドにいるのを見たスクウォッシュが誤解し、自分もゲイだと告白する。
パリにやって来たキングの共同経営者サルがゲイとは一緒にやれないといい出す。
ビクトリアは、ビクターであることをやめ、キングの妻になることを決意。
かわりに舞台にたったのは、トディだつた。
その珍妙な女装と演技に観客は大爆笑するのであった。
コメント:
売れないソプラノ歌手が男に化け、女装のシンガーとしてスターになったためにおきる珍騒動を描くコメディ。
ジュリー・アンドリュース主演のミュージカル映画である。
この映画は、異性装と性同一性がメインテーマとなっている。
ジュリー・アンドリュースという女優は、まったく色気がなくて、彼女に女としての魅力を感じたことは一度もない。清廉潔白の健康的なイメージで、女優というよりも学校の女教師だ。
それがピッタリの映画は、彼女の代表作「サウンド・オブ・ミュージック」や「メリー・ポピンズ」である。
さらに、もうひとつ彼女の代表作が出来たといえるのが、本作である。
ジュリーの個性を活かした設定が秀逸である。
女っぽくないジュリーが、男装するとこれがまあ、女優としての輝きが出てくるのだ。
ゲイの男性歌手というこの設定が、彼女にはうってつけなのだ。
男装のジュリーは宝塚の男役の女優に見えて、とても魅力があった。
そんな中で歌ったり踊ったりする彼女の新しい局面が見えたようである。
惜しむらくは、この洒落たミュージカル・コメディに泥臭いドタバタを入れたこと。
これをやらなきゃ、洗練された作品になったのに。
それをやらずにいられないのは、さすが「ピンクパンサー」の監督だけあると思える。
まあこの監督の資質は洗練されたものより、この泥臭さなのだろう。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。