「おかしなおかしな大追跡」
(原題:What's Up, Doc?)
1972年3月10日公開。
同じ形の4つの旅行カバンをめぐるスクリューボール・コメディ。
興行収入:$66,000,000。
脚本:バック・ヘンリー、デイヴィッド・ニューマン、ロバート・ベントン
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
キャスト:
- ジュディ・マクスウェル:バーブラ・ストライサンド
- ハワード・バニスター:ライアン・オニール
- ユーニス・バーンズ:マデリーン・カーン
- ヒュー・サイモン:ケネス・マース
- フレデリック・ララビー:オースティン・ペンドルトン
- スミス:マイケル・マーフィー
- ジョーンズ:フィリップ・ロス
- ハリー:ソレル・ブック
- ヴァン・ホスキンズ夫人:メイベル・アルバートソン
- マクスウェル判事:リアム・ダン
- ホスキス教授:ランディ・クエイド
- 警官:M・エメット・ウォルシュ
あらすじ:
ジュディ(バーブラ・ストライサンド)は自分の旅行カバンの中に百科事典を1冊つめこんで放浪の旅をしている。
ハワード(ライアン・オニール)のカバンの中には岩石が数個入っている。
一見何の変哲もない石ころだが、これを使って原始時代のネアンデルタール人が岩石から音楽を作りだしたという新学説を論証し、賞金2万ドルをものにするつもりなのだ。
そのためにわざわざアイオワから飛行機に乗って、ここサンフランシスコで開かれる音楽理論学者たちの学会にやってきたのだ。
さて、同じ形のカバンを持って2人が偶然泊まり合わせたのがサンフランシスコ・ヒルトンの17階。
ところが、この17階にあと2人、同じカバンの客がいた。
バン・ホスキン夫人(メイベル・アルバートソン)とスミス氏(マイケル・マーフィ)。
夫人のカバンの中身は宝石類。
スミス氏の中身は政府の秘密書類。
その書類を狙ってジョーンズという男が後をつけまわし、宝石を狙ってホテルの専属探偵と帳場係がこれまたウロチョロしているからたまらない。
更に、ハワードの婚約者ユニースまで同じ17階に部屋をとって、未来の夫の監視をつとめているのだから状況はややこしい。
おまけに、音楽財団の会長で、ハワードが狙っている賞金の提供者であるララビー氏(オースティン・ペンドルトン)がそそっかし屋で、ジュディをハワードのフィアンセと思いこんでいるから、誤解が誤解を生んで話は混線するばかり。
数日後に開かれたパーティの席上、4つ並んだそっくりのカバンのうち、大事な岩石の入っているカバンがどれなのかわからなくなって、ジュディとハワードが全部を表に持ち出そうとしたため、みんな大あわて。
つかまってはならじとばかり、ジュディとハワードは雑貨屋の運搬車に乗って逃げだし、あとの連中は逃してはならじと自動車に飛び乗り、坂の多いサンフランシスコの市街で珍妙な大追跡を展開する。
チャイナタウンでは中国人のお祭に使う竜をまきぞえにし、世界で一番大きいとシスコの人々が自慢する1枚のガラスにあわや衝突の危機をまぬがれ、そしてとうとう全員サンフランシスコ湾に落ちてしまう。
命に別状なかったのがせめてもの幸い。
法廷に引っぱりだされたものの、いくら判事に事情説明しても、そのあまりの複雑さに全然理解してもらえない。
それでも無事釈放されたのは、この判事がジュディのパパだったからということになる。
ドラマの解決は、再び故郷に帰る飛行機の中だ。ハワードの後に陣どっているのは意外やジュディ。
フィアンセだったユニースはララビー氏と結ばれ、ハワードとジュディもめでたく結ばれることになった。
コメント:
博識多才なオテンバ娘と、音楽理論学会にのり込んできた田舎青年が、まったく同じ形の4つの旅行カバンのおかげでとんでもない大事件にまき込まれていくスクリューボール・コメディー。
坂の多い町・サンフランシスコならではの追跡コメディとして大ヒットした作品である。
偶然にも、4つのグループがブリストルの同じフロアに滞在しており、全員が同じチェック柄のバッグを持っている。
●ハワードのバッグには、或る音楽特性を持つ火成岩「タンブラ」岩が入っている。
●謎の「ミスター・スミス」は、不正に入手した政府の極秘文書が入ったバッグを持っている。彼の後を、同様に謎めいた「ミスター・ジョーンズ」が追う。彼は極秘文書を取り戻す任務を負う政府職員である。
●裕福な社交界の有名人ヴァン・ホスキンス夫人は、高価な宝石が沢山詰まったバッグを持っている。ホテル従業員のハリーとフリッツが宝石を盗もうとしている。
●ジュディのバッグには彼女の衣服と大きな辞書が入っている。
その日の夕方、4人は知らず知らずのうちにお互いのスーツケースを奪い合うこととなり、バッグは部屋から部屋へと次々に移動する。最後は、ハワードは宝石を、ジュディは極秘文書を、スミスはジュディの服を、そして泥棒たちは石を手にすることになる。
バーブラ・ストライサンドとライアン・オニールの二人を巡るさまざまなトラブルが休むことなく起こり、そのスピード感がさわやかで、これぞハリウッドのコメディだと思わせてくれる愉快な作品だ。
特に、カーチェイスのシーンは圧巻!
原題の「What's Up, Doc?」の「What's Up?」は、「どうなってるんだ?」という意味。
「Doc」は「Doctor」の略だが、特に意味はないという。
これは、1940年の『野生のバニー』(原題:A Wild Hare)でデビューした野生のウサギ・バッグス・バニーのセリフ。米国では知らない人はいないという。
バッグス・バニー(Bugs Bunny)は、ワーナー・ブラザースのアニメーション作品、ルーニー・テューンズに登場する架空のウサギで、アメリカの文化の象徴の一つとされる。
ワーナー・ブラザースにおけるマスコットキャラクターでもある。
本作の監督をつとめたピーター・ボグダノヴィッチは、翌年『ペーパー・ムーン』 (1973)でも大ヒットを記録している