「天国漫歩」
(原題:Topper)
1937年7月16日公開。 日本未公開。 シリーズとなった人気幽霊コメディの第1作。 興行収入:2百万米ドル。 |
脚本:ジャック・ジェヴン、エリック・ハッチ、エディ・モーラン
監督:ノーマン・Z・マクロード
キャスト:
コンスタンス・ベネット | マリオン・カービイ |
ケーリー・グラント | ジョージ・カービイ |
ローランド・ヤング | 頭取トッパー |
ビリー・バーク | トッパー夫人 |
あらすじ:
トッパー銀行の頭取トッパー(ローランド・ヤング)は頑固で冷酷な性質の男であった。
この銀行の大株主であるジョージ・カービイ(ケーリー・グラント)は妻のマリオン(コンスタンス・ベネット)と共に、至って有閑的な生活を送り、飲んだり踊ったりの夫婦生活を続けて来た。
ある時この二人の乗った自動車は、樹木と衝突して二人は道路にほおり出されて重傷を負い、夢うつつとなって現世とあの世の境をうろついてた。
ジョージは自分の霊が天国の門前へ近づいたことを知った。
すると思い出されるのは夫婦の送った過去の生活である。
未だかつて善根をほどこしたことのない障害が悔いられるのであった。
この世の終わりに夫妻は、わからず屋のトッパーの目を醒まさせようと意見が一致した。
二人が死んだ後でトッパーはジョージの車を修繕し、衝突現場で休息をしていると、彼はいつの間にか自分の意志に背いて、その身はカービイ夫妻の世界に引き込まれ、まるで人が変わったように乱痴気な生活を始めた。
トッパーの心境は自分ながら変な説明のできない境地にあった。
彼と妻はまるで訳の分からない怒りと狼狽の状態に置かれ、これが例会のマリオンとジョージを喜ばせるのであった。
トッパーは銀行へ行って仕事に専念しようと心掛けても、そこへ生きているマリオンが現れて彼を誘惑した。
トッパーは彼女と一緒に車に乗り、不思議な楽しみに酔わされた。
彼が休暇を取って旅行すると、いつの間にか傍には美しいマリオンの姿があった。
すると彼は何もかも忘れて彼女の美しさに惹かれ、ついにマリオンをホテルに連れ込んで歓楽に酔っていた。
するとそこへ嫉妬に燃えたジョージが姿を表し、夫妻でトッパーを悲惨な状態にひき入れて悩ました。
トッパー夫人(ビリー・バーク)は夫の乱脈な生活に憤慨したが、家僕に貴方も魅惑的な女性になれば良いとそそのかされると、その気になって不しだらな行動を取るようになった。
しかしトッパーの夢の世界はやがて冷めて来た。
そこから目覚めたトッパー夫妻は、人間味豊かに更生した。
その姿を見たジョージとマリオンは、初めて彼らの善事が成功したのを見て、二人は手を携えて天国へ行くのであった。
コメント:
幽霊コメディというジャンルである。
とにかく笑える。
「四つの恋愛」「ある夜の特ダネ」のコンスタンス・ベネットと、「男装」「暁の爆撃機」のケーリー・グラントが主演する映画で「奇跡人間」のローランド・ヤングと「ある夜の特ダネ」のビリー・バークが共演する。
原作はセオーン・スミスの小説で、ジャック・ジェヴン、エリック・ハッチ、エディ・モーランが協力脚色し、「珍芸騒動」のノーマン・Z・マクロードが監督をつとめた。
助演者は「四つの恋愛」のアラン・モウプレイ、「幽霊西へ行く」のユージーン・ボーレット、アーサー・レイク、ヘッダ・ホッパー等。
原題は「Topper」。
これは、グラントの役名ではなく、中年のおじさん、ローランド・ヤング が演じている "Cosmo Topper" の姓である。
冒頭、ジョージ・カービー(ケーリー・グラント)が松林の中の未舗装道路を、なんと足でハンドルを操って運転している場面で始まる。
ニューヨーク近郊でも、対向車はほとんどない。
1937年当時はこんなものだったのかも。
高級遊び人とでも呼ぶべきカービー夫妻は、当時最新流行のクラブやキャバレーやバーを、踊り倒し、飲み倒す。
すっかり夜が明けると、タキシードにドレスの格好のまま、マンハッタンの路上で仮眠。
オープンカーなので、野次馬の注目を浴びるのは、当然である。
さて、風采の上がらない「トッパー」氏(ローランド・ヤング)は、大金持ちの銀行頭取である。
ただし、上品な奥様・クララ(ビリー・バーク)と、燕尾服の執事に、分単位で操られているのだ。
トッパーのお仕事は、大銀行の頭取で、あの遊び人のジョージも、なんとこの銀行の、取り締まり役であったのだ。
しかも、謹厳実直なトッパー氏は、密かに、奔放なマリオン・カービー夫人に思いを寄せているのだった。
取締役会の直後、カービー夫妻は、自損事故で、あっけなく死亡。
自由な生活に憧れるトッパーが、この自動車を購入して、ドライブに出掛けると、カービー夫妻の亡霊が現れる。
トッパーがマリオンの幽霊とご乱行を演じて、新聞沙汰になると、たちまち女子社員にもてもてになり、社交界からひっぱりだこになる展開が、笑わせる。
この幽霊コメディは、よほどアメリカ人のお気に召したらしく、ケーリー・グラント抜きで、次作の "Topper Takes a Trip" (1939)(邦題不明)が撮影され、特殊効果賞でアカデミー賞を貰っているという。
さらに、三作目の「彼女はゴースト」【1941】『TOPPER RETURNS』まで出来た。
それだけでは収まらず、TV シリーズが、何回も製作されたのだった。
この映画の影の主役が、派手なスポーツカーで、"1936 Buick Roadmaster" のシャーシを元に作られた、特製品だそうだ。
座席の背を持ち上げると、スペアタイヤが納まるトランクルームが出現する仕組みになっている。
エンジンを掛けるのに、キーを差し込む場面がないので、どうやらスターターボタン始動のようだ。
本作は、日本未公開のようで、ほとんどの日本人が知らないコメディだが、当時の米国では、幽霊コメディやド派手なスポーツカーが大人気だったようだ。
この映画は、日本未公開。
日本語でのソフト化もされていない。
幸いなことに、現在YouTubeで全編無料視聴可能。
ただし英語のみだが、ほとんど理解できて、笑える。