山崎豊子の映画 「白い巨塔」 田宮二郎主演の大ヒット作品! 名医か偽善者かを問う問題作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「白い巨塔」

 

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「白い巨塔」 予告編

 

1966年10月15日公開。

医学界の闇を描いた山崎豊子の代表作。

キネマ旬報ベストテン第1位。

田宮二郎の代表作。

 

受賞歴:

  • 第40回キネマ旬報ベスト・テン 第1位、日本映画監督賞、脚本賞
  • 第21回毎日映画コンクール 日本映画大賞、監督賞、脚本賞
  • 第17回ブルーリボン賞 作品賞、脚本賞
  • 第21回芸術祭賞
  • 第5回モスクワ国際映画祭 銀賞

 

原作:山崎豊子「白い巨塔」

脚本:橋本忍

監督:山本薩夫

 

キャスト:

  • 財前五郎:田宮二郎
浪速大学医学部第一外科助教授→浪速大学医学部第一外科教授
  • 里見脩二:田村高廣
浪速大学医学部第一内科助教授
  • 東貞蔵:東野英治郎
浪速大学医学部第一外科教授 →近畿労協病院院長
  • 鵜飼雅行:小沢栄太郎
浪速大学医学部第一内科教授、浪速大学医学部長
  • 大河内清作:加藤嘉
浪速大学医学部病理学教授(浪速大学前医学部長)
  • 今津:下條正巳
浪速大学医学部第二外科教授
  • 野坂:加藤武
浪速大学医学部整形外科教授

 

  • 花森ケイ子:小川真由美
財前五郎の愛人、バー「アラジン」のホステス
  • 東佐枝子:藤村志保
東貞蔵・東政子の娘
  • 財前杏子:長谷川待子
財前五郎の妻、財前又一の実娘

 

  • 財前又一:石山健二郎
財前五郎の義父、大阪市北区医師会副会長、財前産婦人科医院院長
  • 岩田重吉:見明凡太朗
岩田病院院長、大阪市北区医師会会長
  • 鍋島貫治:潮万太郎
鍋島外科病院院長、大阪市議会議員、浪速大学医学部同窓会幹部
  • 東政子:岸輝子
東貞蔵の妻、くれない会前副幹事
  • 船尾厳:滝沢修
東都大学医学部第二外科教授
  • 菊川昇:船越英二
金沢大学医学部外科教授

 

  • 佐々木庸平:南方伸夫
繊維業「佐々木商店」社長、胃癌患者
  • 佐々木よし江:村田扶実子
佐々木庸平の妻
  • 関口仁:鈴木瑞穂
第一審原告側弁護士、関口法律事務所所長
  • 河野正徳:清水将夫
第一審被告側弁護士、河野法律事務所所長、大阪弁護士会会長

 

9月29日(金)『白い巨塔.映画』 | ヤスの徒然日記

 

あらすじ:

浪速大学医学部では、明年定年退官となる東教授の後任をめぐって、色々な前工作が行なわれていた。

東の教え子財前五郎は最有力候補と目されていたが、東は五郎の傲慢不遜な人柄を嫌っていた。

貧しい家庭に生まれた五郎は人一倍名誉欲が強く、苦学して医学部を卒業した後、裕福な開業医財前又一の婿養子となり、その財力を利用して、助教授の地位を手にしたのである。

最も五郎は食道外科に関しては若いながら権威者であり、癌の手術をさせると見事な腕前を示した。

五郎は日頃から教授と助教授の間には大きな差があることを実感していたから、教授候補者として入念な事前工作を進めていた。

その中で、医学部長鵜飼に高価な絵を贈って味方にしたことは成功だった。

一方、東は自分の派閥を拡張したいという含みで、東の出身校東都大学系列である金沢大学医学部の菊川教授を、後任教授に推薦した。

その上娘の佐枝子と結婚させて、退官後の地位を確保しようという思惑もあった。

こうして、教授選の日までに、財前、菊川、それに、基礎医学グループや整形外科の野坂教授の推す葛西という三人の候補者が推薦された。

そんなある日、五郎は、同期生である里見助教授の依頼で胃癌患者佐々木庸平を手術した。

しかし、五郎は、術後に庸平が苦しむ原因を探ろうともしなかった。

教授選に気をとられていたのである。

庸平は間もなく死んだ。

やがて教授選の日、様々な思惑をもって投票が行なわれたが、結局、五郎と菊川が日を改めて決選投票を行うことになった。

そうなると、財前又一の金力を背景にもつ五郎が断然有利である。

買収、脅迫、あらゆる手段を用いて五郎は教授の地位を手にしたのだった。

ところが、間もなく、佐々木庸平の遺族が、五郎に対して誤診の訴訟を起した。

これはマスコミの注目するところとなったが、医学界の権威を守ろうとする大学側の証人は、五郎を無罪にしてしまった。

そして純粋に医学上の立場から五郎に不利な証言をした里見は、大学を去らねばならなかった。

今や、財前五郎の前に敵はなく、白い巨塔の中を自信たっぷりに闊歩している。

 

芸能】白い巨塔:田宮二郎主演で医学界の腐敗を鋭く描いた傑作 1966年の映画がNHK・BSプレミアムで

 

コメント:

 

大映製作・配給。

監督は山本薩夫、主演は田宮二郎。モノクロ、シネマスコープ、149分。

 

医学界の内幕を描いた山崎豊子の同名小説の映画化作品。

 

山崎豊子の長編小説。浪速大学に勤務する財前五郎と里見脩二という対照的な人物を通し、医局制度の問題点や医学界の腐敗を鋭く追及した社会派小説である。

山崎豊子作品の中でも特に傑作と名高く、1966年の映画化以来、何度も映像化された。

1963年9月15日号から1965年6月13日号まで『サンデー毎日』に連載された。

当初、第一審の結審までの完結予定だったが、主人公の勝訴で終わっていることに対する不満から、予想外に読者からの反響が大きく、1967年7月23日号から1968年6月9日号にかけ「続・白い巨塔」が『サンデー毎日』に連載された。単行本は各・新潮社で、正編は1965年7月、続編は1969年11月に刊行された。

 

白い巨塔 第1巻 | フリマアプリ ラクマ

 

今回のブログ掲載の直前に全編を読了したが、確かに正編では、主人公・財前の誤診が問題なしという結論になっており、これは今後の医学界への悪影響もありうるのではとの危惧を抱かされる感はある。

そのため続編として出版されたものは、控訴審の様子が描かれており、裁判の判決は財前側の敗訴となった。

判決内容としては佐々木庸平の死そのものは不可抗力としつつも、術後一週間の時点での容態急変に際し化学療法を用いぬが故に、短期間で死なせた責任を問うと患者への説明責任の欠如(インフォームド・コンセント)趣旨で、予備的請求を認めた原告側の一部勝訴という事になる。

「最高裁に上告する」と息巻いた財前だったが、その直後に突然倒れ込む。

控訴審での敗訴が遠因となったのか、財前は自らガンを発症し、死亡してしまうという悲劇の結末になっている。

 

 

独立プロで活躍した社会派監督の山本薩夫が、娯楽性を持った政治社会派ドラマの第一人者であることを立証させた記念すべき作品であり、山本並びに主演の田宮の代表作となった。

田宮、小沢栄太郎、加藤嘉は1978年のドラマ版でも同じ役を演じている。

2001年(平成13年)にはDVDでデジタルリマスター版が発売された。

第40回キネマ旬報ベスト・テン第1位。

昭和41年度芸術祭賞。

 

映画化されたのは当時完結していた本編のみであるため、物語は裁判の第一審と里見の辞職で終わっている。

 

 

会派作家の山崎豊子の原作を社会派の山本薩夫が監督をしているが、おもしろいのは原作を連載していた「サンデー毎日」が実名で登場し、田宮演じる財前五郎を取材し、そのグラビアを週刊誌に掲載していることだ。

毎日新聞社もなかなかしたたかだ。

 

ほかにも財前が勤める旧帝大の浪花大学は架空の名前だが、旧六医科大学の金沢大学や新潟大学は実名で登場する。

冒頭、実在する団体等とは一切関係がないとの断り書きは出るものの、その辺は当時まだゆるやかだったのかもしれない。


浪花大学医学部助教授の財前は、次期教授の座をねらい、権謀術数をめぐらす。

外科医としての腕前はあるものの、それ以上に出世欲に取りつかれている。

開業医で大阪医師会副会長の彼の義父は金にものを言わせ、買収工作に走る。

口ではきれいごとを言っている教授連もあっさりと買収に乗る始末だ。

大学病院の実態はこうなのかと思うと恐ろしいばかりだ。
 

財前は激しい教授選を制し、念願の教授のいすに座る。

教授になった彼が田中角栄ばりの口ひげをはやしているのはこっけいだが、ひげが権力の象徴だったことも時代を感じさせる。
 

順風満帆かと思われたが、彼が手術した患者が死亡したことで遺族から訴えられる。

教授選から法廷に争いの場が移されるが、最も恐ろしいのは医学界の最高権威者が法廷で財前を擁護するシーンだ。

それは医学界の権威を守るためで、被害者救済の理念はない。

映画的にもカタルシスはない。
 

医療事故の裁判で医療ミスを立証することがいかに困難か。

現代の医学界は大丈夫か。

疑問が残る形で映画は終わっている。

 

その後、何度もテレビドラマ化され、原作の続編も含む総集編として、財前の死去までのドラマが制作されている。

追って、別ブログでレビューする予定。

 

やはり田宮二郎の財前五郎は格別だ。
俳優・田宮二郎自身がこの映画を契機に大スターとなったことで自らの傲慢さから映画界を追い出され、テレビで再びこの役を演じることで復活し、その後自らの命を落とすまでの人生は財前五郎に重なる。

だからこそ格別なのだ。

適役というより運命的な存在といえるだろう。

ちなみに当時の田宮二郎は30歳そこそこ。

それでこの風格である。

 

昭和のクールガイ「田宮二郎」の映画ポスターです。白い巨塔・鉄砲犬・黒の超特急・不信のときなど | 映画ポスターコレクション

 

財前と好対照なのが、同じ病院で同じ助教授の里見脩二という医師である。

常に患者第一で、名誉より医師としての使命を果たそうとする正義感の塊のような生真面目な男だ。

田村高廣が演じるこのひたむきな医者の姿こそ、山崎豊子が描きたかった理想像だろう。

 

映画「白い巨塔(1966年)」田宮二郎 - 映画とライフデザイン

 

この作品が映画化され、その後何度もテレビドラマ化されたことで、山崎豊子は船場の女の物語という初期の作品群から飛躍して、日本の恥部や暗黒の歴史をテーマにした社会派作家として日本で有数の本格的な文豪になって行くのだ。



映画は、橋本忍脚本で監督は山本薩夫。
山本薩夫監督というと、『あゝ野麦峠』が晩年の傑作だが、山崎豊子原作の映画化も多い。

『華麗なる一族』や『不毛地帯』も。

山本薩夫監督と山崎豊子原作は相性がいい。

社会派というスタンスと娯楽性が重なるのだ。

この映画は選挙戦と裁判劇で展開する。

いまでこそインフォームドコンセントが普及するが、この原作が書かれた頃は、医療が極めて保守的で権威主義に満ちていたことを示す。

否、それは今もおそらく同じだろう。

現代医学の化学療法に比べれば、映画の始まりにもある内臓を切ったり繋いだりするシーンはもう見られないかもしれない。

この原作をリアルに再現するのに、この手術シーンは見逃せない。

モノクロでありながらその音とともに色合いを感じさせる。

このオープニングは、実際の開腹手術の映像が使われていて、鮮烈な印象を与える幕開けといえる。

作中でも実物の食道を扱うリアルなシーンを数回使っている。

 

そして映画は病人を置き去りにして教授選を延々と展開して行くのだ。

 

天才医師と言われた主人公が、数々の手術を短時間で仕上げるというこのシーンは、その後の数多くの医療ドラマのお手本になっている。

あの「ドクターX」や、妻夫木聡主演の『Get Ready!』など。

 

助教授から教授にのし上がった財前を演じる田宮二郎の得意の絶頂の表情がカッコいい。

最近はこういう名優が少なくなった。

 

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