「オペラは踊る」
(原題: A Night at the Opera)
1935年11月15日公開。
マルクス兄弟3人による最高のコメディ作品。
脚本:ジョージ・S・カウフマン、モリー・リスキンド
監督:サム・ウッド
キャスト:
- オーティス・B・ドリフトウッド:グルーチョ・マルクス
- フィオレッロ:チコ・マルクス
- トマッソ:ハーポ・マルクス
- ローザ・カスタルディ(ソプラノ歌手):キティ・カーライル
- リカルド・バローニ(テノール歌手):アラン・ジョーンズ
- ロドルフォ・ラスパッリ:ウォルター・ウルフ・キング
- ヘルマン・ゴットリーブ:シグ・ルーマン
- クレイプール夫人:マーガレット・デュモント
あらすじ:
ミラノに旅行中の金満家の未亡人クレイプール夫人の支配人オーティス・B・ドリフトウッドは、兼ねてから夫人との結婚を望んでいる。
彼は夫人を社交界に紹介する約束をし先ずその手始めにニューヨークオペラ劇場の重役ゴットリープに対面させた。
ゴットリープは夫人を説いて劇場に20万弗の出資をさせ、また世界一のテナーと言われるロドルフォ・ラスパリと契約を結んだ。
劇場の下回り歌手リカルド・バロニは非常に良い素質を持っているが、機会に恵まれないので認められていなかった。
この2人はソプラノのローザを共に愛している。
ローザはリカルドに恋して彼の成功を祈っていた。
ラスパリの衣装方トマソは自分の主人を嫌ってローザとリカルドに親しくしている。
リカルドと一緒に音楽を勉強しているフィオレロも彼を好いていた。
ラスパリとローザはゴットリーブとの契約がなってニューヨーク行きの船に乗る。
リカルド、フィオレロ、トマソの3人は秘かにオティスのトランクに潜込んで上船した。
同じ船に髭をはやした3人の有名なギリシャの飛行家が乗っていた。
密航者3人はその船室に忍び入って飛行家の衣服をつけ付け髭をした。
本物の飛行家が現れたので移民官が彼らを逮捕に向かったときには、3人は早くもオティスのホテルに隠れていた。
ここでリカルドは偶然ローザの室に入って彼女に会い互いに再会を喜んだ。
ラスパリがローザの室に来て求愛したので、リカルドは彼を殴り倒す。
怒った彼はローザを役から除いてしまう。
その時ゴットリープの勧めで夫人はオティスを解雇したので3人は協力して復讐を決心した。
初日が始まったとき3人はゴットリープを縛り上げ、オティスは彼の服を着て夫人と一緒に澄まして重役席に座った。
フィオレロとトマソはオーケストラの中に入って音楽を目茶目茶にしたその時劇場は火を発している事が発見され、臆病なラスパリは命欲しさに演技を中止して逃げだした。
観客は総立ちになって大混乱に陥ったが、フィオレロ、トマソ、オティスの懸命の努力と、リカルドとローザが舞台で悠々と歌い続けたので、観客は平静に帰して無事に退場する事が出来たのであった。
コメント:
マルクス兄弟のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)専属第一作であり、サム・ウッドが監督、キティ・カーライルとアラン・ジョーンズが共演した。
前作『吾輩はカモである』の失敗からパラマウント社の契約を解除されたマルクス兄弟であったが、チコ・マルクスがMGM社の敏腕プロデューサー、アーヴィング・タルバーグとブリッジの遊び仲間であったことから、タルバーグの招へいでMGMに入社。
総売り上げの15%をギャラとする破格の条件を手に入れた兄弟は、満を持して本作に取り掛かった。
この時点でゼッポ・マルクスがグループから脱退。
その結果、マルクス4兄弟からゼッポを抜いて、グラウチョ、チコ、ハーポの3兄弟が主演する映画となっている。
以降も、彼らは3人のユニットで活動する。
イタリアのミラノで大富豪の未亡人をたらしこんで、オペラのアメリカ巡業の資金を手に入れた詐欺師のドリフトウッド。
一座を率いて意気揚々とアメリカ行きの船に乗り込んだが、そこには無名歌手のひと癖ありそうなマネージャーと助手が入り込んでいて大騒動になる。
一座は、ようようにしてアメリカに到着し、「イル・トロヴァトーレ」の公演の初日を迎える。
従来のマルクス兄弟に見られるアナーキーな面は影をひそめたが、楽しい音楽に笑いを加えた分かりやすさに、タルバーグの物心両面の援助や、制作の前に175回にわたる舞台巡業をして、ギャグシークエンスをふるいにかけるなどの丁寧な映画作りなどが功を奏して、マルクス兄弟最大のヒット作となった。
これまでの全編通して兄弟がギャグをぶちまけ暴れまわっていた作品と違い、ストーリーの中心となる売れない歌手の男とスターの道が拓こうとしている女の恋愛模様も描かれており、今までのドタバタ劇よりも映画として一皮向けた作品となっている。
今回彼らは、引き裂かれようとする男女のキューピッドとなるべく奮闘する。
無論それで彼らがおとなしくしているわけもなく、せまい船室に次々と人を招き入れるシーンや、ベッドがどんどん減ってゆくシーンなどは、よくぞここまでと感心する。
作中でハーポ・マルクスがその名の通りハープの即興演奏を披露するが、そのときの彼は普段のとぼけた顔してイタズラを繰り返している時とは別人のように真剣であり、兄弟の「芸人」としての実力を魅せてくれる。
船室に数えきれない人間が入り込むシーンは、バスター・キートンのアイデアによるものとされており、そのナンセンスさからダリなどシュルレアリスムの芸術家から高く評価された。
ロックバンド「クイーン」のアルバムのタイトル『オペラ座の夜 A Night at the Opera』は本作に由来するという。
その中にこの名曲も含まれている:
この映画は、Amazon Primeで動画配信可能: