「ぼんち」
山崎豊子の名作であるこの小説は、映画のみならずテレビドラマや舞台にも何度も登場している。
2024年4月の時点で確認できた情報を掲載する。
原作のあらすじ:
船場の足袋問屋河内屋の一人息子喜久治は、祖母と母の勧めで弘子を嫁にしたが、養子旦那だった二人の嫁いびりで、長男を生んだ後に離縁する。
その後の喜久治は、父が死んで河内屋の主人におさまるや、彼の商売上手で店は繁盛し、それにつれて女性関係もますます盛んになっていく。
二号となった芸者ぽん太には男の子を生ませ、娘仲居の幾子が芸者に出たのを機に三号で囲って、その他カフェの女給の比佐子、仲居頭のお福と妾同様の女がいる。
やがて日中戦争が始まって不景気になり、太平洋戦争に突入して、河内屋も空襲で蔵一つを残して焼失した。
喜久治は、ぽん太、比佐子、お福に金を渡して河内長野の菩提寺に行くよう仕向け、祖母と母も田舎に返そうとしたが、船場の悲惨な状況に落胆した祖母は半ば自殺のように死んでしまう。
戦争が終わり、菩提寺を訪れた喜久治は、三人の女のあけすけな姿をのぞき見して、これで放蕩も終わりと見切りをつけ、女に会わずに帰った。
昭和35年になり、57歳の喜久治は彼なりに商売に対する夢を抱いているが、今は二人の息子の世話になっている身になり、ぽん太の子・太郎からは今更足袋屋でもないと諭されてしまう。
テレビドラマ
1962年版
NET(現:テレビ朝日)で1962年1月4日から同年6月28日に毎週木曜21:15 - 21:45に放送。
キャスト
- 中村扇雀
- 中村芳子
- 賀原夏子
- 平田満
- 扇千景
ほか
スタッフ
- 脚本:土井行夫
- 音楽:渡辺宙明
- 演出:奈良井仁一
1972年版
フジテレビの「土曜劇場」枠で1972年1月1日〜同年3月25日に放送。
「土曜劇場」が元日に放送されるのは本作が唯一。
キャスト
- 津川雅彦
- 加賀まりこ
- 中村玉緒
- 北林谷栄
- 木暮実千代
- 紀比呂子
ほか
スタッフ
- 脚本:土井行夫
- 演出:山像信夫
舞台
1960年版
1960年8月公演、大阪歌舞伎座新派公演。
キャスト
- 河内屋喜久治 - 市川雷蔵 (8代目)
- ぽん太 - 淡島千景
- 仲居お福 - 霧立のぼる
- 舞妓小りん - 桜緋紗子
- 君香 - 緋桜陽子
- 比沙子 - 渡辺千世
- 妻・弘子 - 阿部洋子
- 祖母・きの - 英太郎(初代)
- 母・勢以 - 中村芳子
1962年版
1962年6月3日から20日まで産経ホールで、菊田一夫脚色・演出、観世栄夫プロデュースで上演された。
テレビ版で喜久治を好演した中村扇雀が主演。
キャスト
- 喜久治 - 中村扇雀
- ぽん太 - 高千穂ひづる
- お福 - 南悠子
- 比沙子 - 黒木ひかる
- たいこもち - 田武謙三
- きの - 三戸部スエ
- 萬代峰子、英つや子、一条久枝 ほか
1966年版
1966年10月、東京宝塚劇場、東宝歌舞伎公演。
キャスト
- 河内屋若旦那喜久治 - 長谷川一夫
- 比沙子 - 越路吹雪
- ぽん太 - 鳳八千代
- 喜久治の妻弘子 - 長谷川季子
- 仲居富之家養女幾子(後に改め幾代) - 春日野八千代
- 芸者君香 - 東郷晴子
- 芸者千代春 - 藤波洸子
- 小りん - 桑野みゆき
- 喜久治の祖母きの - 三益愛子
- 喜久治の母勢以 - 神代錦
- 仲居お福 - 丹阿弥谷津子
- 客市河屋・防火群長 - 杉浦エノスケ
- つる八 - 西川右近
- マネージャー - 花柳寛
- 河内屋番頭秀助 - 林成年
- 河内屋大番頭和助 - 嵐三右衛門
- 河内屋大旦那喜兵衛 - 浅尾奥山
- 佐野屋六右衛門 - 柳永二郎
1976年版
1976年11月、新橋演舞場、新派公演。
キャスト
- 喜久治 - 中村扇雀
- ひさ子 - 水谷良重
2008年版
2008年4月3日から4月21日まで紀伊國屋サザンシアターで行われた沢田研二主演の舞台、音楽劇。
同年4月25日から4月28日まで新神戸オリエンタル劇場、さらに、同年5月10日、11日には中日劇場で行われた。
キャスト:
沢田研二 喜久治
土居裕子 幾子
土田早苗 祖母 きの
加納幸和 佐野屋
田中隆三 河内屋番頭 和助
木下政治 河内屋 貞吉
野田晋市 幇間 つる八
小椋あずき 勢以
出口ルナ お福
佐藤綾 ぽん太
原 尚子 比沙子
有馬自由 河内屋 亀蔵
山口智恵 お時
宴藤裕子 君香
- 脚本:わかぎゑふ
- 演出:マキノノゾミ
- 音楽:coba
- 振付:南流石
コメント:
この舞台は非常に人気が高かったようで、今でもこの公演を観た人がいくつもネットに関連情報をアップしている。
たとえば:
この舞台はDVD化もされているようだ:
これ以降は、テレビドラマでも舞台でも「ぼんち」が登場することはなかったようだ。
令和の時代に活躍している名優たちの出演作品もぜひ見てみたいものだ。