「フライングハイ」
(原題:Airplane!、別題:Flying High)
1980年7月2日公開。
名作「大空港」のパロディ映画。
興行収入:$83,453,539。
監督・脚本:
ジム・エイブラハムズ デヴィッド・ザッカー ジェリー・ザッカー |
キャスト:
テッド・ストライカー:ロバート・ヘイズ
イレイン:ジュリー・ハガティ
オーバー機長:ピーター・グレイヴス
マードック:カーリー・アダブル・ジャバール
マクロスキー:ロイド・ブリッジス
クレイマー:ロバート・スタック
あらすじ:
ロサンゼルス空港に1台のタクシーが乗りついた。
運転するのはテッド・ストライカー(ロバート・ヘイズ)。
彼は、シカゴ行き209便のスチュワーデスのイレイン(ジュリー・ハガティ)に会うためにかけつけたのだ。
イレインはテッドの恋人だったが、最近になってその仲がうまくいかず、イレインが出て行ったきりになっていたのだ。彼女を失いたくないテッドは、209便に乗る決心をしたのだが、戦争中の苦い体験が蘇り、テッドの胸は震えた。
出発を前にした209便のオーバー機長(ピーター・グレイヴス)に電話が入り、同乗する心臓移植手術予定の少女のためにも時間通りの飛行をと確認してきた。
副操縦士マードック(カーリー・アダブル・ジャバール)の準備も完了し、209便はシカゴに飛び立った。
機内サービスを始めたイレインは、客席のテッドを見て驚く。
大戦中の基地でのイレインとの甘い思い出に耽るテッド。
その戦線で、彼は味方を死に追いやるという苦い体験もしたのだった。
快適な飛行を続けていた209便に恐ろしいハプニングが生じた。
魚がもとで食中毒患者が続出したのである。
何よりも操縦者であるオーバー機長、マードックなどもダウンしてしまい、イレインはS0Sを叫ぶ。
それをキャッチしたシカゴ空港のマクロスキー(ロイド・ブリッジス)は、この非常事態にうってつけの男クレイマー(ロバート・スタック)に誘導を依頼した。
何と偶然にもクレイマーはテッドの部隊のキャプテンだった。
209便では、唯一操縦できるテッドがパイロットとして席につき、そのクレイマーの誘導で操縦桿を握ることになった。このニュースで全世界が注目する中、スモッグがたちこめるシカゴに、クレイマーの巧みな誘導とテッドの必死の操縦さばきで無事209便は着陸に成功した。
同じ恐怖を味わったテッドとイレインは、すべてのわだかまりを捨てて抱きあい、少女の手術も間に合い、すべてうまくいくのだった。
コメント:
乗客を満戴した旅客機内を舞台に、突然の食中毒発生にパニック状態に陥る人々と操縦を託された元パイロットの活躍を描くパロディ映画。
『大空港』の雰囲気を漂わせる、航空パニックもののパロディだ。
全編ほぼパロディだけで構成されたコメディ映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』(1977)の制作陣がメガホンをとり、『大空港』などの1970年代のパニック映画のパロディ作品として制作されている。
一応、ストーリーはあるものの、描かれるのはギャグの連続。
それもウケたものだけを厳選して繋ぎ合わせたというから徹底していて、笑えること必至である。
内容的には、テッド・ストライカー(ロバート・ヘイズ)とスチュワーデス・イレイン(ジュリー・ハガティ)との、恋人関係が見つめ直される。戦争で飛行機恐怖症になってしまったテッドに対して、想いが冷めつつあるイレイン。何とか関係を修復したいと願うテッドは、彼女の乗る航空機に、意を決して乗り込むのだが…。
空港内でのアナウンス・ネタ、レントゲンのお遊び、しつこい勧誘など、同じパターンのギャグが次第にエスカレートしていく様子が面白い。
飛行機内でテッドとイレインは、二人の過去を回想するのだが、出逢いはあのダンス映画そのまんまのパロディに大笑い。
付き合い始めてからは名作の名場面が笑いで再現される。
病院ではあの“ブロードウェイの女王”本人がカメオ出演。
入院中、テッドの描く絵が、また可笑しい。
仲間を死なせたというトラウマで飛べなくなった元空軍のパイロットとスチュワーデスとの恋物語を面白おかしく描いている。
ギャグの一例がこちら:
随所に笑いネタを仕込んであって、例えば金属探知機を通るとき、ブザーが鳴ると係員が「金属は皆出してください」と言う。
客はポケットからキーフォルダーを出し、そのあとで義手を外して差し出す。
おまけに片方の足まで義足というような笑いを仕込んである。
もう一つは、正副パイロットが急病で倒れてしまうとスチュワーデスに「オートパイロットのスイッチを押してくれ」と言う。
スイッチを押すと副操縦席に空気人形が膨らみ操縦し出す。
そのほか色々な客や空港のコントロールセンターの職員の描写などがあり、バカバカしいながらも笑える映画である。
ケンタッキー・フライド・シアターで上演されていたスケッチが3割、残り7割が映画用に書き下ろしたものとなっている。
- 11時のニュース (News at 11) パート1
- ニュース番組のパロディ。
- オイル不足 (Argon)
- 架空の石油会社「アルゴン」のCMで、ファストフードやニキビ面の若者から油を搾り取って燃料に再利用するという内容。
- モーニング・ショー (A.M.Today)
- 回線が故障してスタジオからの呼び出しに気がつかずハナクソをほじるレポーター、スタジオで暴れだすゴリラ等。
- ニュー・カー (His New Car)
- 発進しようとしても警報が止まない新車の話。脚本のデヴィッド・ザッカー自らドライバー役を担当。
- カトリック女子高生のトラブル (Catholic High School Girls in Trouble)
- 架空の成人映画の予告編。出演俳優陣のクレジット紹介の中にシンガーソングライターのスティーヴン・ビショップがいる。
- 感じる映画 (Feel-A-Round)
- 観客の背後に一人の案内係が立ち、映画に添った内容の行為を観客に行う話。
- 頭痛薬「ナイテクスPM」のCM (Nytex P.M.)
- 飲むと夜眠れるが朝起きることができなくなる架空の頭痛薬のCM。出演しているのは脚本のジェリー・ザッカー。
- ハイ・アドベンチャー (High Adventure)
- フランスの海洋冒険家・ラモンへのテレビ・インタビューの話。
- 11時のニュース (News at 11) パート2
- 頭痛クリニック (Headache Clinic)
- 頭を殴られても痛みを感じなくなる架空の頭痛薬のCM。ビル・ビクスビーが本人役で出演。
- お家をよい香りに! (Household Odors)
- 悪臭を別の悪臭でごまかす架空の消臭剤のCM。
- セックス・レコード (Sex Record)
- セックスの手ほどきをする内容の音声が収録されたレコードを買ってきた夫婦の話。
- 燃えよ鉄拳(ドラゴン イカレの鉄拳) (A Fistful of Yen)
- 『燃えよドラゴン』のパロディ。ブルース・リーのような秘密捜査官・ズロース・リー(演:エヴァン・C・キム)が犯罪組織の島でアクションを駆使して敵を倒すにつれて、ストーリー展開が不条理化していき、悪役・クランは水をかけると溶けてしまう(『オズの魔法使』の西の魔女のパロディ)。主人公が履いていた赤い靴のかかとを鳴らすと、舞台はカンザス州の農村に変わり、すべては少女(演:キムの二役)の見た夢であったことが明らかになる(『オズの魔法使』のドロシーのパロディ)。
- ウィラー・ビール (Willer Beer)
- 架空のビールのCM。ビラを配り終わったハレクリシュナ教徒が酒場で暴れるという内容。
- 11時のニュース (News at 11) パート3
- 大統領暗殺ゲーム“スコット・フリー” (Scot Free)
- 大統領暗殺を目指す架空のボードゲームのCM。
- 『ザッツ・アーマゲドン』予告編 (That's Armagedon)
- 架空のパニック映画の予告編。ジョージ・レーゼンビーとドナルド・サザーランドが出演している。
- 死者の権利を守る会 (United Appeal For the Dead)
- 架空の公共広告のパロディ。ミイラ化した息子を交えた一家団欒が描かれる。ヘンリー・ギブソンが本人役で出演。
- 法廷 (Courtroom)
- 1950年代に流行した法廷ドラマを舞台に、コメディドラマ『ビーバーちゃん』の要素が加わったスケッチ。脚本のデヴィッド・ザッカー自ら被告人役を担当。
- ネコのフライ (Nesson Oil)
- 「法廷」の途中で挿入されるパロディCM。
- クレオパトラ・シュワルツ (Cleopatra Schwartz)
- 架空のブラックスプロイテーション映画の予告篇。『クレオパトラ・ジョーンズ』シリーズのパロディ。
- 教育映画 「酸化亜鉛」とあなた (Zinc Oxide)
- 日常用品に多く使用されている酸化亜鉛がもしなかったら? という内容の教育映画のパロディ。
- 危険を求める男 (Danger Seekers)
- ヘルメットとライディングスーツを身に着けた男(イーブル・ニーブルのパロディ)が「危険な冒険を行う」と称し、人けのないスラム街でたむろしている黒人の若者の一団に割り込み「ニガー!」と叫んで走って逃げ出す話。
- アイウィットネス・ニュース (Eyewitness News)
- テレビをつけている部屋で若いカップルが性事を始めると、テレビ画面の中のキャスターやスタッフが画面からそれを覗き込むという話。
- 11時のニュース (News at 11) パート4
- 最後のスケッチ。「モーニング・ショー」のニュースキャスターが再び登場して「もうパンツを脱いだ」と発言して終了する。
この映画の制作者たちは全米脚本家組合賞の最優秀脚色賞を受賞し、ゴールデングローブ賞 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)や 英国アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた。
また、のちにアメリカン・フィルム・インスティチュートのアメリカ喜劇映画ベスト100の10位に選ばれている。
さらに、ストライカーとルーマックの遣り取り「Surely you can't be serious.」「I am serious... and don't call me Shirley.」がアメリカ映画の名セリフベスト100で79位にランクインした。
テレビ局Bravoの"100 Funniest Movies"で6位にランクインした。
この映画は、Amazon Primeで動画配信可能: