「春琴抄(1976)」
山口百恵17歳の主演作品。
配給収入:8億8400万円。
原作:谷崎潤一郎の映画「春琴抄」
脚本:衣笠貞之助、西河克己
監督:西河克己
キャスト:
- お琴:山口百恵
- 佐助:三浦友和
- 鵙屋安佐衛門:中村竹弥
- 美濃屋利太郎:津川雅彦
- 春松検校:中村伸郎
- しげ:風見章子
- お良:井原千鶴子
- 富三郎:若杉透
- 温井与平:桑山正一
- 千吉:品川隆二
- 市蔵:小松方正
- 善助:名古屋章
- お種:北川たか子
- お吉:榊原郁恵(新人)
- 芸妓:絵沢萌子
- 芸妓:白川望美(現・志麻いづみ)
- 若旦那:片岡功
あらすじ:
明治のはじめの大阪道修町。
軒をならべてにぎわう薬種問屋。
その中の一軒、鵙屋の次女お琴は、九つの春に病がもとで失明して以来、一心に琴の修業を続けている。
丁稚の佐助はそんなお琴の身のまわりの世話を、一人でまかされていた。
お琴の教えるままに佐助は三味線のけいこをするようになった。
そんなある日、突然激しい地震が鵙屋をおそった。
必死にお琴を救った佐助と、お琴の間には、愛が芽ばえ、はたの者のはかり知ることのできない、不思議な生活が生まれた。
やがて一つの奇妙な事件が持ち上がった。
お琴が子を宿したのだ。
激しくつめよる主人に佐助は、かたくなに答える。
「わて、何も知りまへん」。
お琴もまた、血相を変えて母にくってかかった。
「佐助は奉公人でっせ、わての弟子でっせ」。
結局、この子は父親の知れぬまま、さる人にもらわれていった。
そうこうするうちにお琴の身に、あいついで大きな不幸がおとずれた。
父・安左衛門が死に、その死に誘われたように、師匠・春松検校もまた他界していったのだ。
お琴は、師匠に生前から許されていた春琴の名をかかげ、佐助ともども新居に移った。
そんな時、お琴をめあてに、美濃屋利太郎が、かよってくるようになった。
利太郎はお琴にむりやり、自分の別荘で琴の独演会を開くことを承知させ、当日、別室でいきなりお琴を抱きすくめるのであった。
騒ぎを聞きつけて佐助がかけつけた時、利太郎は眉間から血を流してぶざまに倒れていた。
ある夜、お琴の身に思いがけない惨事があった。
逆うらみをした利太郎がさしむけた賊によって、お琴は顔に熱湯をあびせられたのだ。
佐肋が飛び起きた時にはすでにおそかった。
お琴はうつぶせで苦悶しながらも、絶叫する。
「見たらあかん、わての顔みたらあかん!」。
月日が流れ、明日は包帯がとれるという日に、お琴は佐助に涙ながらにうったえた。
「お前だけには、この顔を見せとうない」。
意を決した佐助は部屋にいき、針を持って、鏡の前で、左、右と激痛にたえながらおのれの両目を突きさすのであった。
気配を感じたお琴が佐助の所にきた。
「佐助、どないしたんや」
「わて、針で目を突きました!」。
絶句するお琴。
佐助は、自分の目を自らつぶし、お琴と同じ世界に入り、佐助の心にしみついたその美しい姿をだいじにするのだった。
そして涙にぬれたほほをよせて、二人はかたく抱きあった。
コメント:
17歳にしてこの難しい役柄を立派に演じ切っている山口百恵には恐れ入る。
やはりこの人は天才だ!
「あなたの美しさを永遠に灼きつけた私の目はもう何も見る必要はありません……」
銀色に光る鋭い針の先が二人を残酷なまでに哀しい。
谷崎潤一郎の「耽美主義」を最も深く描いた作品は絶対に「春琴抄」だろう。
「美しさ」への深い想いがこの作品に込められている。
山口百恵の数ある映画作品の中でも忘れられない名作と言って良い。
数ある「春琴抄」の映画の中でも、トップクラスに位置する名作であり、大ヒット作である。
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