「ジュリオの当惑（とまどい）」
（原題：La messa è finita）
1985年公開。
故郷のローマに戻って来た若き神父の姿を描く。
ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞。
脚本：ナンニ・モレッティ、 サンドロ・ペトラリア
監督：ナンニ・モレッティ
キャスト：
ジュリオ：ナンニ・モレッティ
アントニオ神父：ユージェニオ・マシャリ
サヴェリオ：マルコ・メッセリ
チェーザレ：ロベルト・ヴェッツォー二
ジャンニ：ダリオ・カンタレッリ
アンドレア：ヴィンチェンツォ・サレンメ
ヴァレンチナ：エンリカ・マリア・モドゥーニョ
あらすじ：
ジュリオ（ナンニ・モレッティ）は、ローマに近い小高い丘から故郷ローマを眼下にみていた。
新米神父として離島で数年間生活した彼は、今、家族のもとに戻ってきたのだ。
ローマ郊外の教会に通うことになった彼は、さっそく翌日その教会を訪れるが、荒れ果てたその教会の様子に驚いた。
初めてのミサの日、出席者が誰もいないことに疑問を抱いたジュリオは、前任者のアントニオ神父（ユージェニオ・マシャリ）が恋人を妊娠させて教区の人々の不信をかってしまったことを知った。
順調ではなかったが、ジュリオは、新しい教区で自分の理想をかかげて、精一杯努力をした。
学生時代に共に、新左翼に傾倒しその運動に力を注いだ友だちたち、サヴェリオ（マルコ・メッセリ）、チェーザレ（ロベルト・ヴェッツォーニ）、ジャンニ（ダリオ・カンタレッリ）、アンドレア（ヴィンチェンツォ・サレンメ）のそれぞれも、みな今は変わっていた。
久しぶりに会ったサヴェリオは妻に逃げられ人間不信に陥っていた。
ミュージシャンのチューザレはジュリオに洗礼を受けたいと言い出し、書店を経営しているジャンニはアンドレアがテロリストとして刑務所に入っていると告げる。
面会に行ったジュリオに、しかしアンドレアは無言だった。
離島での平和な生活が一変した。
町はマフィアが暴れまわり、教会の婚前講義では、未経験の彼はみなにばかにされた。
ある日、父が訪ねて来て、ジュリオの妹ヴァレンチナ（エンリカ・マリア・モドゥーニョ）の友人マリアンナと愛し合うようになり家を出てゆくと告げた。
家では急にふけた母が暗く沈んでいた。
アンドレアの裁判では、裁判官の汚ないやり方に怒りを爆発させるジュリオ。
やがてヴァレンチナは恋人の子を妊娠して中絶すると言い出した。
今やジュリオの精神状態は限界に達していた。
一番信頼していたジャンニが、さらにホモだとわかった。
母の自殺……。
その数日後、チェーザレの結婚式がジュリオの手で行なわれた。
これを最後にこの地を去ろうと決意するジュリオ。
ミサは終わった。
音楽に合わせて、チェーザレと花嫁が踊り出すと、友人らが“君はきっと帰ってくる”とでも言いたげに踊り出すのだった……。
コメント：
ナンニ・モレッティが監督・脚本・主演をつとめた傑作である。
原題のローマに里帰りした若き神父が直面するさまざまな問題を通して、当時のイタリアの世情を描く作品。
せっかく居心地のよい田舎の教区から、張り切って故郷のローマ郊外に戻ってきたジュリオだったが、誰も教会に来やしない。
昔の友人たちは人が変わったようだ。
とまどうことばかりの主人公の悩める姿。
努力はみんなカラ回りしていくのだった...。
教理問答コメディにもなっている味わい深い青春映画。
ジュリオが当惑に直面しながらも、人生の意味を模索していく姿が描かれている。
ジュリオは、仕事、家族、社会など、さまざまな問題に直面するが、最終的には自分の人生に意味を見出すことができまたのであった。
本作は、その優れた脚本と演技で高い評価を受け、多くの映画賞を受賞した。
また、世界中の映画ファンから愛され、今もなお多くの人々に影響を与えている。
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