「監督ミケーレの黄金の夢」
(原題:Sogni d'oro)
1981年公開。
1981年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。
映画製作にとりかかろうとしている監督の苦悩を描くコメディ。
監督・脚本:ナンニ・モレッティ
キャスト:
ミケーレ監督:ナンニ・モレッティ
女子高生シルヴィア:ラウラ・モランテ
母親:ピエラ・デッリ・エスポスティ
新人監督・ジージョ:ジージョ・モッラ
あらすじ:
映画評論家に悪罵に近い辛辣な批評を浴び、さらに強力な新人の登場で足元が危うくなっている映画監督ミケーレ(ナンニ・モレッティ)は、3作目の映画「フロイトの母」の製作準備に取りかかってはいるものの憂鬱で、悪夢の毎日を送っていた。
夢の中では、憧れの女子高生シルヴィア(ラウラ・モランテ)まで彼から逃れようとしており、悪夢から醒めれば、母親(ピエラ・デッリ・エスポスティ)からマザコンと言われ、どなり返すのだった。
そんなある日、ミケーレはテレビの番組の企画で、新人監督のジージョ(ジージョ・モッラ)と、どちらが最強の映画監督かを賭けて戦うが、敗れた。
さらに、さすらいの中でシルヴィアにプロポーズするが、その時、彼は狼男に変身しているのだった。
コメント:
ヴェネツィア映画祭で銀獅子賞を受賞した作品。
「父 パードレ・パドローネ」(1977)の監督をつとめたナンニ・モレッティが脚本・監督・主演を独占した作品である。
コメディだと言っているが、腹を抱えて笑える作品ではない。
この映画は、1981年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。
この評価は映画界で受け入れられたが、若干の反対意見もあった。
この映画は、モレッティの自伝的作品として誇張され過ぎていて、フェリーニの映画「8 1/2」 の模倣でもあると批判された。
同年の『ヨーロッパ』誌では、セルジオ・レオーネの次の発言が引用されている:
「フェリーニの8 1/2には興味があるが、モレッティの1 1/4には興味がない」。
モレッティは、創造的危機に陥った芸術家の苦悩を描いた作品として、あるいは映画そのものについての作品として、自身の映画を再解釈することを否定しようと繰り返し試みたが、無駄だった。
パオロ・メレゲッティは次のように批評している:
「映画の中で映画についての映画」
...超現実的な自伝...神経症的で不遜な知性...不連続な方向性、
しばしば不十分で偏執的なナルシスト...
[映画を見ると]あなたは疑うようになる[ モレッティ ] は実際には偉大な失敗した批評家だ。
原題の「Sogni d'oro」とは、「甘い夢」という意味。
だが、この映画での実際の夢は、全然甘くない。
甘い夢を見たかったが、実際には悩ましい夢しか見れなかったということか。
とにかく、映画監督という職業の人は、自分の見た夢を映画化したくなるようだ。
フェデリコ・フェリーニの「8 1/2」がその典型だが、日本の黒澤明も「夢」という作品を残している。
この黒澤の作品は、秀逸だ。
モレッティにも、こういう作品を作って欲しかった。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。