「さすらいの二人」
(原題:Professione: reporter)
1975年2月28日公開。
ミケランジェロ・アントニオーニによるサスペンス映画。
イタリア・スペイン・フランス合作映画。
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、マーク・ペプロー、ペーター・ワレン
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
キャスト:
- ジャック・ニコルソン:デイヴィッド・ロック
- マリア・シュナイダー:女
- イアン・ヘンドリー:マーティン
- ジェニー・ラナカー:レイチェル・ロック
あらすじ:
イギリスのトップ新聞記者であり、テレビ・レポーターのデイヴィッド・ロック(ジャック・ニコルソン)は北アフリカの砂漠にいた。
彼はホテルの隣室にいた自分に瓜ふたつの男ロバートソンの死を目撃したことによって、順調に運んでいた仕事、愛する妻レーチェル(ジェニー・ラナカー)と築いた家庭を棄てる決心をした。
今までのすべてを棄て、新しい人生、つまりロバートソンの人生を生きようと決めたのだ。
ロバートソンの死体を自分の部屋に運び、パスポートの写真を貼りかえると、一たんロンドンに戻ることにした。
1度だけ妻に会おうと我家に向かう途中、彼はベンチでひとり本を読む不思議な女子大生(マリア・シュナイダー)に眼をとめる。
家の玄関までくると、中からは死んだ自分のニュースが流されていた。
妻に会うことを断念すると、ロバートソンの持っていた航空券の上に書かれてある西ドイツ・ミュンヘン空港のロッカーの番号を思い出した。
何気なしにロッカーを開けると、中には分厚い書類が入っていた。
手帳にはその書類を持って教会で人と会う段取りになっている。
デイヴィッドは2人の男に声をかけられた。
書類を渡すと、大金の入った封筒が返ってきた。
ロバートソンは武器密輸商人で武器をある新興国のゲリラ組織に売っていたのだ。
その頃ロンドンでは、デイヴィッドの妻レーチェルが、夫の死に立ち合ったと思われるロバートソンという男を思い出し、友人のテレビ・ディレクター、マーティン(イアン・ヘンドリー)にその男を捜してほしいと依頼していた。
一方デイヴィッドは、ロバートソンの手帳に書かれたスケジュールに従い、スペインのバルセロナに飛んでいた。
だがそこには、ロバートソンの行方を追うマーティンがいた。
デイヴィッドは、街中にひっそり建つ礼拝堂に逃げ込んだ。人気のない堂内でデイヴィッドは、ロンドンで会った女子大生に会った。
彼はこの不思議な女子大生を使い、マーティンに感づかれないように荷物を持ち出してほしいと頼み込んだ。
それが契機となって、2人の逃避行が始まる。
だが、そんな彼らの前にレーチェルが立ちはだかった。
夫の死に不審を持った彼女が、送られてきた遺品の中のパスポートが夫のものでないことを見抜き、事実を確かめようとやってきたのだ。
逃げるデイヴィッドと女子大生、追うレーチェルと警察、さらにゲリラ組織。
郊外の辺ぴなホテルに着くと、事件にまき込ませないために途中で突き放した女子大生が待っていた。
デイヴィッドは嬉しかったが、再び彼女を近くの港にいかせる。
そこに1台の車が着き、ひとりがホテルに入る……。
やがてパトカーがやってきて、警官とレーチェルが降りたつ。
静かな部屋の中ではデイヴィッドが、あのロバートソンと同じようにあおむけになって、死んでいた……。
コメント:
偶然のなり行きから、仕事と家庭を棄てて他人になりきろうとしたテレビ・レポーターの行動を描くアントニオーニ監督の異色作。
アフリカで反政府ゲリラを報道していた記者のデビッド・ロックは、同宿していたロバートソンが部屋で急死しているのを発見する。
ロックとロバートソンは容貌がよく似ていたことから、人生に嫌気をさしていたロックは身分証明書の写真をすり替え、自分が死んだことにしロバートソンに成りすまして生きていこうとする。
そして途中知り合った女子大生と共にヨーロッパ各地を転々とする。
ロックの妻レーチェルは夫の死の不自然さに気付き、ロバートソンの行方を探ろうとし始める。
ロードムービー風の作品で、様々な風景の切りとり方や色彩が美しい。
この監督らしく、人間世界は曖昧で不確かだという余韻を強く印象付けた幕切れとなる。
哀感のあるギターの調べがBGMに使われるなど、抒情性も豊かな作品に仕上がっている。
ラスト近くの有名な長回しシーンは秀逸である。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。