「デカメロン」
(原題:Il Decameron)
1971年8月25日公開。
パゾリーニの「生の三部作」の第1作。
第21回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。
原作:ボッカッチョ『デカメロン』
監督・脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
キャスト:
- チャペレット:フランコ・チッティ
- ペルージャのアンドレウッチョ:ニネット・ダボリ
- マゼット:ヴィンチェンツォ・アマート
- ペロネッラ:アンジェラ・ルーチェ
- 貴婦人:マリア・ガブリエラ・マイオーネ
- 僧:ジュゼッペ・ジガイナ
- ジョット:ピエル・パオロ・パゾリーニ
- 裕福な商人:グイド・アルベルティ
- 聖母:シルヴァーナ・マンガーノ
- カテリーナ:エリザベッタ・ジェノヴェーゼ
あらすじ:
「第一話ペルージャのアンドレウッチョ」
商用でナポリにでかけたペルージャのアンドレウッチョ(N・ダボリ)は一人のずるがしこいシシリー女の術中におちいり、金をまき上げられたあげく、汚物だめの中につき落とされた。
ようやく這いだした彼は、友もなく、頭から足の先まで汚物にまみれてさまよった。
彼が次に会ったのは二人の泥棒だった。
泥棒達は二日前に死んだ大司教の墓から高価な指輪を盗みだす計画を立てており、彼はその手伝いをさせられることになった。
石棺の蓋を開けてはいり込んだ彼は指輪を抜きとり、泥棒には法衣だけを渡した。
怒った彼らはアンドレウッチョを中に閉じ込めたまま逃げてしまった。
しばらくして泥棒と同じ考えを持った司祭がやってきて、アンドレウッチョとぶつかり、びっくり仰天して逃げてしまった。
見ると蓋は開いたまま。彼は再び自由の身となり、おまけに高価な指輪まで手に入れたのであった。
「第二話マゼットと尼僧」
農夫たちは休みの時間になると、尼僧院で夜な夜な行われる秘め事について語り合った。
尼僧たちがけしからぬ行為をしていると告げられた尼僧院長がある夜、不意を襲おうとして起きだしたが、一緒に寝ていた司祭のベールをつけていたために、せっかくの叱言も威厳がなくなってしまった。
この話を聞いた若者マゼット(V・アマート)は、聾唖、知的障害者をよそおってまんまと修道院の園長になることに成功した。早速、若い尼に誘惑されたマゼットだが、ほどなく全部の尼の相手をしなければならなくなった。
その上、今度は尼僧院長に呼びだされお相手をさせられたからたまらない。
彼は家に帰してほしいと願いでた。
彼をはなしたくない院長は一計を案じ、彼が口をきけるようになったのは神様の思し召しとばかり、彼を聖者に仕立ててしまったのだ。
マゼットはおしをよそおう必要もなく、仕事をする必要もなく、ただ尼たちを満足させることに専念すればよいということになったのである。
「第三話ペロネッラ」
ペロネッラ(A・ルーチェ)が愛人グラネッロを連れ込んでよろしくやっている最中夫が突然帰ってきた。
彼女はあわてて愛人を油や酒を入れておく大がめの中に隠した。
帰ってきた夫がいうにはその大がめを五デナリで買いたいという人を見つけたという。
利口な彼女は、私は七デナリで買いたいという人を見つけた、
今その人が、かめを調べていると隠れている愛人に聴こえるように大声で話した。
そこで愛人も口裏を合わせてまんまと夫をだましたのである。
「第四話聖チャペレット」
これ以上の極悪人はいないといわれる程の高利貨しチャペレット(F・チッティ)も、寿命には勝てないものか、旅先で病いに倒れた。
彼の同業者は、こんな悪党では引きとってくれる教会もあるまいと心配したが、彼の懺悔を受けた神父はその立派さにおどろき、死後、聖チャペレッタと呼んだ。
「第五話カテリーナ」若い公爵リカッド(F・ガバッチ)と愛し合っているリツィオ・デ・バルボーナの娘カテリーナ(E・ダボリ)は自分の部屋がむし暑いからナイチンゲールの歌の聞こえるテラスで休みたいと両親に訴えた。
実はこれは口実で、恋人と逢い引きするためだった。
しかし、その現場を父親に見つかってしまい、彼は烈火の如く怒ったが、娘の恋人が公爵と知って、結婚するならばよろしいということになった。
彼は承知し、以後二人はベッドで楽しむことができたのである。
「第六話リザベッタとロレンツォ」
リザベッタの三人の兄が、彼女の恋人ロレンツォを生まれが卑しいという理由で殺してしまった。
ロレンツォはある晩彼女の夢枕に立って自分が埋められている場所を教えた。
彼の死体を見つけた彼女は、重くて運べないので、頭を切り離して持って帰り、めぼうきの鉢の底に入れ、毎日眺めては泣いていた。
ところが、その鉢が兄弟に見つかって捨てられてしまい、リザベッタは悲しみのあまり死んでしまった。
「第七話コンパール・ピエトロ、ドンナ・ジェンマータとドン・ジャンニ」
ドン・ジャンニという狡猾な司祭は、頭の単純な夫婦に、女を馬に変えることができると話した。
夫婦は即座に申し込んだので、司祭は、その最中に声をださないよう注意して女を裸にした。
夫があわてて抗議すると時すでに遅く、欲望を満たした司祭は、「話しかけるからまじないが消えたのだ」と、二人をどなりつけたものだ。
「第8話ティンゴッチョとメウッチョ」
ナポリの二人の放蕩息子、ティンゴッチョとメウッチョは、罪のうちに死に、永遠の地獄に苦しむのではないかと、恐れおののきながらも、女遊びに明けくれた。
二人は、先に死んだものが、この世に戻って、あの世はどんな風かを話す約束をした。
しばらくしてティンゴッチョが先に死ぬ。
ある夜、メウッチョの枕元に現われた彼がいうには、判決はまだ決っていないが一つ確かなことは恋愛は罪にならぬというのだ。それを聞いたメウッチョは前から愛していたティンゴッチョの愛人のもとへと飛んで行った。
コメント:
原作は、ヨーロッパ文学における最も傑出した人物といわれる作家・ジョバンニ・ボッカチオの『デカメロン』。
ジョヴァンニ・ボッカッチョ(伊: Giovanni Boccaccio, 1313年6月16日 - 1375年12月21日)は、中世イタリア、フィレンツェの詩人、散文作家、イタリアルネサンス期のヒューマニスト(人文主義者)である。
『デカメロン』(Decameron)は、ジョヴァンニ・ボッカッチョによる物語集。
「デカメロン」という名称は、ギリシャ語の「10日」(deka hemerai)に由来しているとされることから、『十日物語』とも和訳される。
ダンテの『神曲』に対して、『人曲』とも呼ばれる。
1348年から1353年にかけて製作された。
サブタイトルは「ガレオット公爵」で、アーサー王物語においてランスロットの不倫の恋を仲立ちしたキャラクターの名前から取られている。
1348年に大流行したペストから逃れるためフィレンツェ郊外に引きこもった男3人、女7人の10人が退屈しのぎの話をするという趣向で、10人が10話ずつ語り、全100話からなる。
内容はユーモアと艶笑に満ちた恋愛話や失敗談などで、それぞれ『千一夜物語』や『七賢者の書』から影響を受けている。
チョーサーの『カンタベリー物語』やマルグリット・ド・ナヴァルの『エプタメロン』(七日物語)などに影響を与えた。
この映画は、ピエル・パオロ・パゾリーニが脚本・監督をつとめている。
パゾリーニは、ボッカチオが活躍した十四世紀が現代社会と強い類似性があるとし、現代に照し合わせながら、「デカメロン」からナポリを舞台にした六篇を選び、他にアラブが一篇、北国が一篇、更に狂言廻しの画家ジョットーの挿話を書き加えた。
ボッカッチョは、「デカメロン」のほかにも多くの作品を残しているようだが、世界的に知られているのは、この作品のみだ。
やはり12世紀の頃からすでにこういった艶笑コメディは人気があったのだろう。
おおらかなセックスが、コミカルにえがかれている。
エピソード全8話の中で、最も印象に残るのは、男子禁制の僧院のはなしだろう。
こんなことが実際にあったのかも知れない。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。