「サン・ミケーレのおんどりさん」
(原題:San Michele aveva un gallo)
1972年公開。
タヴィアーニ兄弟が制作したテレビ映画。
トルストイの短編小説「神性と人間性」を翻案したイタリア式共産主義者の末路を描いた作品。
原作:トルストイ
監督・脚本:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
キャスト:
ジュリオ・ブロジ:ジュリオ・マニエリ
レナート・スカルパ:バッティストラーダ
ダニエレ・ダブリン:刑務所の看守
あらすじ:
ジュリオ・マニエリ( ジュリオ・ブロジ)は、裕福な中産階級の出であった。
幼い頃、ジュリオはいたずらをした罰として戸棚の中に閉じ込められた。
彼は、「サン・ミケーレのおんどりさんは、赤、白、緑、黄色・・・・・」と、童謡を歌って気を紛らしていた。
成長したマニエリは、社会主義者となり、国際的なアナキストを気取っていた。
そして、小さな町で少数の仲間と蜂起し、町長を捕らえ、小麦粉を町の人々に配った。
だが、町の人々が彼らに合流しなかったために蜂起は失敗に終わった。
こうしてマニエリは警察に逮捕され、死刑が宣告された。
だが、まさに銃殺刑が執行されようとした時、終身刑に減刑されたとの知らせが届く。
こうして彼は、10年間の独房生活を送ることになった。
牢獄の中で彼は、想像力によって、まるで自由の身になったかのように過ごした。
ある朝、マニエリは、ヴェネト地方の別の刑務所に移送されることになった。
長い監獄生活にもかかわらず、彼は健康で、精神状態も安定していた。
マニエリは、川をゴンドラで護送されることになった。
その途中、やはりボートで護送されて行く若い過激派グループと出会い、会話を交わした。
その結果、彼が投獄させていた間に政治の動きが大きく変わってしまったことを知った。
いつしか彼は時代に取り残された革命家となっていたのだ。
マニエリは、若者たちと別れた後、くつろいだ様子で口笛を吹いていたが、やがて、口笛が止んで、一瞬微笑みを浮かべたのち、川の水の中に身を躍らせた。
今や自分は役に立たず、歴史に追い越されたと感じた彼は、溺れるために水に身を委ねたのであった。
コメント:
イタリアで社会主義革命を夢見た青年の挫折を描いた異色作。
ロシアの文豪・トルストイの短編小説「神性と人間性」を原作として、パオロとヴィットリオの仲良しタヴィアーニ兄弟がイタリア風に翻案して映画化した作品である。
原題の「San Michele aveva un gallo」は、直訳すると「聖ミカエルは雄鶏を飼っていた」。
これは、主人公が子供時代に愛唱していた「サン・ミケーレのおんどりさんは、赤、白、緑、黄色・・・・・」という歌詞で始まる童謡のタイトルのようだ。
ヴィアーニ兄弟二人は、ジャーナリストとして活動した後、1954年に短編『San Miniato, luglio '44』を共同製作し、映画監督としてデビュー。
1960年に初の長編となるドキュメンタリー『イタリアは貧しい国ではない』をヨリス・イヴェンスと共同で製作。
その後、2本の長編『火刑台の男』(1962年)と『ああ結婚』(1963年)をヴァレンティノ・オルジーニとともに製作し、前者はヴェネツィア国際映画祭でパジネッティ賞など3つの賞を受賞する。
初めて二人だけで監督した1967年の『危険分子たち』は同年のヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品された。1969年の『蠍座の星の下で』ではジャン・マリア・ヴォロンテを主演に起用した。
そして、1970年代に入って公開した映画が、レフ・トルストイの小説を映画化した本作『サン・ミケーレのおんどりさん』(1972年)である。
本作は、第22回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で上映された。
その後、マルチェロ・マストロヤンニが主演を務めた『アロンサンファン/気高い兄弟』(1974年)が第27回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映されるなど、イタリア国外でも注目されるようになる。
そして、1977年に言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝的小説を映画化した『父 パードレ・パドローネ』が第30回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、パルム・ドールを受賞。1982年の『サン★ロレンツォの夜』も第35回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。
その後も、5つのエピソードからなるオムニバス大作『カオス・シチリア物語』(1984年)やD・W・グリフィスの『イントレランス』の撮影現場を舞台にした『グッドモーニング・バビロン!』(1987年)、トルストイの『神父セルギイ』を原作にした『太陽は夜も輝く』(1990年)、11年ぶりにカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された『フィオリーレ/花月の伝説』(1993年)などを製作する。
2000年代に入ると、主にテレビ映画とミニ・シリーズを製作し、2001年にトルストイの同名小説を映画化した『復活』はモスクワ国際映画祭で金賞を受賞。2004年には全2部作のテレビ・シリーズ『サンフェリーチェ/運命の愛』を製作した。
2007年には『ひばり農園』で9年ぶりの劇場用映画を製作した。
2012年、刑務所内の演劇でウィリアム・シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』を演じることになった囚人たちの姿を描いた『塀の中のジュリアス・シーザー』を発表。
第62回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。
この映画は、日本未公開で、日本語版ソフトも存在していないようだ。
アマゾンでDVDは販売されている: