「悲しみの青春」
(原題:Il giardino dei Finzi-Contini)
1970年12月4日公開。
第二次大戦の犠牲になった北イタリアのユダヤ人一家の悲劇。
巨匠デ・シーカ監督の傑作。
受賞歴:
アカデミー賞外国語映画賞
ベルリン国際映画祭金熊賞(デ・シーカ)
原作:ジョルジョ・バッサーニ『フィンツィ・コンティーニ家の庭』
脚本:ヴィットリオ・ボニチェリ、ウーゴ・ピロ
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
キャスト:
- リノ・カポリッチオ:ジョルジョ
- ドミニク・サンダ:ミコル
- ヘルムート・バーガー:アルベルト
- ファビオ・テスティ:マルナーテ
- ロモロ・ヴァリ:ジョルジョの父
あらすじ:
北伊エミリア地方のフェルラーラは、中世の城壁に囲まれた美しい街。
その町の外れに孤立するかのように高い塀をめぐらせたフィンツィ・コンティーニ家の広大な屋敷があった。
夏の終りの昼さがり、手にラケットを持った若い男女の一群が、コンティーニ家の大門をくぐった。
コンティーニ家の娘ミコル(D・サンダ)に招かれた彼らの中にジョルジョ(L・カポリッキオ)もいた。
親しみをこめて迎えてくれたミコルとの幼い頃の思い出が、ジョルジョの胸にひろがった。
町の人々とは隔絶したコンティーニ家、ミコルも弟のアルベルト(H・バーガー)も町の学校にさえ通わず年に何度かの試験のときだけ、ジョルジョはミコルの可憐な容姿を胸を焦がす想いで、まぶしく見つめていたのだ。
最初の出会いはユダヤ教会だった。
見交わす二人の瞳には、単にユダヤ人同士の了解というより、ひそやかな初恋の想いがこめられていた。
ミコルの弟アルベルトは、病弱で繊細な神経を持ち、門から一歩も外へ出ようとはしなかったが、ただ一人ミラノ大学の先輩のマルナーテ(F・テスティ)が心の許せる親友であった。
時代は、しだいにナチズムの凶悪な毒牙にかかりつつあり、ジョルジョも日ごと、身に迫る危険を感じるようになっていった。
逃げるようにベネチアに旅立ったミコルと再会したのは、過越祭の夜だった。
一面雪景色の、コンティーニ家の庭を駆け抜けたジョルジョは思わず、ミコルを抱きしめ、接吻した。
数日後、愛を求めたジョルジョをミコルは堅く拒んだ。
迫りくる悲劇を予感していたかのように……。
第二次大戦に突入した今、イタリアも参戦し、マルナーテに召集がきた。彼が出征の前夜、不吉な予感に襲われたジョルジョは、コンティーニ家の庭に忍び込んだ。
そしてテニス・コートわきの山小屋のベッドでマルナーテと抱き合うミコルの姿を見て、ジョルジョは絶望に打ちのめされた。
すべては終ってしまった。
病気で死んだアルベルトの葬列をそっと見送ったジョルジョは、喪服のミコルを見た。
それが彼女を見た最後であった。
マルナーテも戦死し、ユダヤ人狩りが始まった。
ミコルも捕われ、拘留所の一室でジョルジョの父(R・ヴァリ)と会った。
父は恐怖におののくミコルの肩をそっとやさしく抱いた。
ジョルジョは母と妹を連れ、遠くへ逃げのびたという。
しかし、ミコルたちの行くてには、ナチの収容所が、そしてガス室が待っていたのだ。
光にあふれたコンティーニ家の庭。
白いテニス服のミコル、アルベルト、マルナーテ、そしてジョルジョ。彼らの青春はこうして終焉を告げた。
コメント:
戦争の黒い影がしのびよる北イタリアの古都フェルラーラに生きる若い世代の、愛と哀しみを描いた作品。
ジョルジョ・バッサーニの小説『フィンツィ・コンティーニ家の庭』を原作としている。
北イタリアのエミリア地方にあるフェルラーラのはずれに住むユダヤ人一家であるフィンツィ・コンティーニ家の悲劇を描いている。
ヴィットリオ・デ・シーカの後期の傑作である。
ヘルムート・バーガーが素晴らしい。
新人女優のドミニク・サンダも初々しく、存在感がある。
この時代、イタリアはドイツと同盟を結び、ファシズムの台頭とそれに伴う人種法の施行によりユダヤ人が官憲によって次々に拘束され始め、ミコラとその一家も例外ではなかった。
重苦しく息詰まるような時代の空気が覆いかぶさる中で、若く多感な男女の愛がむなしく空回りしていく悲劇。
イタリアの絵画的な美しい風景と哀調を帯びた音楽が、行き場のない情況をさらに引き立てて観る者の心を揺さぶる。
舞台となったフェルラーラは、北イタリア・ボローニャの北東に位置する古都で、ルネサンス時代に栄えた街である。
風光明媚で立派な建造物も数多く存在しているようだ。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。