「ウエスタン」
(原題: C'era una volta il West、英語: Once Upon a Time in the West)
1968年12月21日公開。
セルジオ・レオーネがアメリカで監督した西部劇。
脚本:セルジオ・レオーネ、セルジオ・ドナティ、ミッキー・ノックス
監督:セルジオ・レオーネ
音楽: エンニオ・モリコーネ
キャスト:
フランク:ヘンリー・フォンダ
ジル:クラウディア・カルディナーレ
マクベイン:フランク・ウルフ
モートン:ガブリエル・フェルゼッティ
その男:チャールズ・ブロンソン
シャイアン:ジェイソン・ロバーズ
保安官:キーナン・ウィン
あらすじ:
西部に初めて鉄道が敷かれようとしていた頃……。
アイルランドから移住して来たマクベイン(F・ウルフ)は、この荒野に大きな夢を抱いていた。
そして、彼は砂漠を買い、ニュー・オリンズにいる婚約者ジル(C・カルディナーレ)を呼ぶ準備をした。
その彼の地権を狙う二人の悪党がいた。
鉄道局の役人モートン(G・フェルゼッティ)と、ガンマンのフランク(H・フォンダ)である。
そこへ、フランクを捜して一人のよそ者(C・ブロンソン)がやって来た。
彼は“その男”と呼ばれた。
もの凄いガンさばきとハーモニカのうまいのが特徴であった。
彼と同じ馬車でジルもやって来た。
彼女はマクベインに呼ばれて来たのだった。
しかし、その時すでに、マクベインはフランク一味の銃弾に倒れていた。
この事件は、ハーフのシャイアン(J・ロバーズ)のしわざということになったが、居酒屋で“その男”に出会ったシャイアンは、犯行を否定した。
一方、法的な利権がジルに与えられると知ると、フランクは彼女を狙いはじめた。
身の危険を感じたジルは、保安官(K・ウィン)の助力を得て遺産をせりに出した。
フランクは裏工作をしたが、“その男”とシャイアンが権利を買いとり、再びジルに与えた。
その後も、フランクは執拗に彼女を狙ったが、目的を果せなかった。
そしてついに、フランク一味の襲撃を待っていた“その男”の怨みの銃弾がフランクを倒した。
その時“その男”の脳裏には一五歳の時フランクに虐殺された兄の事が浮かんでいた。
彼は再びこの土地を去って行った。
夫の夢をうけついでいこうとするジルを残して……
コメント:
物語は物寂しい西部のアリゾナ州にある駅から始まる。
駅のホームで何者かを待ち受ける屈強な3人の賊。
そこにハーモニカを吹きながら飄々と現れた先住民のガンマンは早撃ちで賊達を斃した。
舞台は変わって荒野の真ん中にあるスィートウォーターと名付けられた一帯に建つ一軒屋。
そこでは開拓者のブレット・マクベインが亡き妻の後にニューオーリンズで高級娼婦だったジルを娶り、本妻として家族総出で迎え入れる準備をしていた。
しかし突如として現れた冷酷非情で凄腕ガンマンのフランクとその手下達によってマクベイン一家は皆殺しにされてしまう。
更にフランクは偽の証拠を現場に残すことで事件を山賊のシャイアン一味の仕業に見せかける。
新妻となるはずだったジルは夫を殺した一味への復讐と、女一人で西部で生きていく決意をする。
フランクが一家を殺害したのは、その一家の土地を奪い取ろうとする鉄道王モートンの差し金だった。
事件の真相を探ろうとする賞金首のシャイアンと、フランクを付け狙う「ハーモニカ」は美しい未亡人ジルと彼女の財産を守るために協力しあう。
土地を巡る莫大な利権に裏切りと思惑が交差し、ある者は野垂れ死に、ある者は目的半ばで力尽きた。
ジルの前に現れた男たちは斗い、死に、仇を討ち、線路が開通し新しく発展するであろうジルの街を見ること無く消え去って行った。
『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン』のいわゆる「ドル箱三部作」を撮影し終えたレオーネは、もう西部劇というジャンルでやりたいことは全てやりつくしてしまったとして、新しく禁酒法時代のユダヤ人ギャングを描いた映画(17年後に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』として結実)を製作しようとしていた。
しかし、ハリウッドがレオーネに期待したのはあくまで従来のマカロニ・ウェスタンでしかなかった。
当初「ドル箱三部作」の配給会社であったユナイテッド・アーティスツはチャールトン・ヘストン、カーク・ダグラス、ロック・ハドソンたちが出演する映画製作を打診したが、レオーネは気が進まなかったのでその申し出を辞退した。
しかしパラマウント映画がヘンリー・フォンダが出演する映画製作のオファーを出した時にはそれを受け入れた。
パラマウントが提示した潤沢な製作資金が魅力的であったことの他に、ヘンリー・フォンダがレオーネの敬愛する俳優であったことがレオーネの心を動かしたといわれている。
レオーネは新鋭監督のベルナルド・ベルトルッチと当時まだ映画評論家であったダリオ・アルジェントに映画の原案を委託した。彼らはレオーネの自宅で『真昼の決闘』や『大砂塵』といった西部劇の名作を鑑賞しながら、本作プロットを練ったという。
そのためか本作はこれまでの娯楽性を追求したレオーネの「ドル箱三部作」(いずれも典型的なマカロニ・ウェスタン)と異なり、登場人物の心境の変化や作品のテーマ性によりフォーカスを当てた構成、いわば伝統的な西部劇スタイルへの回帰が見られるとされる。
「アメリカの良心」を体現してきたヘンリー・フォンダが悪役を演じることに抵抗を感じた観客が多かったアメリカでは期待されたほどのヒットにはならなかったもののヨーロッパや日本では大ヒットし、それらの国におけるレオーネの評価を更に高めることになった。
2005年にはアメリカの雑誌『TIME』によって映画ベスト100中の1本に選ばれた。
エンニオ・モリコーネの音楽が本作でも素晴らしい: