「欲望(1966)」
(原題:Blow-up)
1967年1月公開。
イタリア・イギリス・アメリカ合作映画。
1967年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ、エドワード・ボンド
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
キャスト:
- トマス : デヴィッド・ヘミングス
- ジェーン:ヴァネッサ・レッドグレイヴ
- ザ・ブロンド(モデル):ジェーン・バーキン
- パトリシア : サラ・マイルズ
あらすじ:
ハンサムなロンドン児のトマス(D・ヘミングス)は、二十歳の若さで早くも名声を得ている職業写真家だ。
ある土曜日、彼は気晴らしのため人通りのない街で、ローバーの新車を飛ばしていた。
車をおいて緑いっぱいの美しい公園を散歩していると、魅惑的な女と好色そうな中年の男が戯れているのに出会った。
トマスは二人が木陰で接吻しているのを見て、純粋な職業的興味から、いつとはなしにそれを撮影していた。
男はいち早く姿を消したが、その美しい女は彼の家まで訪ねて来て、一心にフィルムを返してくれと頼んだ。
彼女はジェーン(V・レッドグレイヴ)といった。
トマスがフィルムをやるから、その代償として彼女のヌードを撮らせろというと、彼女は仕方なくその場で裸になった。
撮影後、彼が違う写真を返すと、彼女は安心して帰って行った。
トマスは早速公園で撮った写真を現像し、引き伸して見た。
ところがその写真にうつっている薮の中に、銃を持っている見知らぬ男を発見して驚いた。
更にまたその薮の中には、死体のようなものまで写っていた。
彼は公園に車を飛ばした。
果してそこには男の死体があった。
しかもその男はジェーンと逢い引きをしていた男だった。
びっくりした彼は急いで家に帰ったが、意外にも彼が苦心して引き伸した写真もフィルムもそっくり盗まれているのに気づいた。
翌朝トマスは、再び事実を確かめるため公園へ行った。
だが、昨日横たわっていた死体は消えていた。
するとそこへ多数のモッズ族が乗りこんできて、パント・マイムでテニスボールを打ち始めるのだった。
これは幻想の世界であった。
トマスは、何時、どこで現実の世界から幻想の世界へ足を踏み入れたかという絶望的な疑問を抱きながら、目に見えないテニスボールを追っていた。
コメント:
アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの小説『悪魔の涎』を下敷きに、ミケランジェロ・アントニオーニが監督・脚本をつとめた。
アントニオーニ初の英語作品であり、カラー撮影としては第2弾にあたる。
原題は、「Blow-up」。
英語である。
この言葉には、ふくらます、爆破するなど、多くの意味があるが、この映画では「(写真などを)引き伸ばす」という意味らしい。
たしかに、主人公は公園で撮った写真を現像し引き伸している。
その結果、予想もしなかった映像が出て来た。
だが、それは現実だったのか?
1960年代中盤のロンドンを舞台に、人気カメラマンの主人公が撮った、ある写真にまつわる奇妙な出来事を描く。
「スウィンギング・ロンドン」と言われた、イギリスの若者のムーブメントを織り交ぜつつ、サスペンスかつ不条理な独特の世界観となっている。
1967年のカンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞した。
同年度アカデミー監督賞候補にもあげられ、さらに、アメリカ映画批評家協会主催の1966年度最優秀作品賃、最優秀監督賞を獲得している。
これまでコミュニケーションの断絶や、「愛の不毛」といったテーマを追求してきたアントニオーニ監督が、初めてイタリアを離れてロンドンでロケして、新境地を示したミステリー・タッチの野心作である。
アントニオーニのテーマが、「愛の不毛」から「真実の不在」になってゆくのか。
いよいよアントニオーニが、国際的な監督として知られるようになってきたのだ。
音楽は、米国のジャズピアニスト・ハービー・ハンコック。
監督のアントニオーニは当初、BGM無しで映画を作ろうとしたが、ロケ地のロンドンで聴いたハンコックのジャズを気に入り採用したという。
この映画でハンコックは、ジャズ以外にもポップ・ミュージック指向の強い楽曲も披露している。
1969年に「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」で一世風靡したジェーン・バーキンが、まだ無名のモデルとして出演している。
可愛い!
この映画は、当ブログの「イギリス映画ベスト100」シリーズのひとつとしても、昨年9月にアップしている。
イタリア・イギリス・アメリカの合作映画であったためだ。
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