「蜜がいっぱい」
(原題:Signore e Signori)
1965年公開。
イタリア式コメディ。
イタリアの男と女をめぐるアホな出来事を映画化。
第19回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。
脚本:ピエトロ・ジェルミ、アージェ=スカルペッリ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
監督:ピエトロ・ジェルミ
キャスト:
カステラン:ジジ・バリスタ
ノエミ:ベバ・ロンカー
トニー:アルベルト・リオネロ
オスバルド:ガストーネ・モスキン
ミレナ:ヴィルナ・リージ
ギルダ:N・リッチー
あらすじ:
イタリアのトレビソの町に近いある別荘で、パーティが開かれた。
客の中には、医師のカステラン(ジジ・バリスタ)と若くて美人の妻ノエミ(ベバ・ロンカー)それに、彼等の友人トニー(アルベルト・リオネロ)もいた。
トニーは、妻のイポリタ(オルガ・ヴィリ)と結婚してから、もう、十年以上になっていた。
このイポリタは、町一番の意地悪女という評判であった。
そこで、トニーは、この妻の眼をぬすんで、友人の妻・ノエミという美人と浮気をしてやろうとたくらみ、このパーティの席で、うまく彼女の夫に話しかけに行った。
そして、トニーから彼が不能者であることを聞いた夫のカステランは、その言葉に安心して、妻を彼にまかせてしまった。
ところがそのすぐ後で、彼が町一番の絶倫男と聞かされたから、さあ大変。
カステランは疾風のごとく二人の後を追い、ノエミとトニーの浮気の証拠を、おさえてしまった。
同じトレビソの町で、妻のある銀行員オスバルド(ガストーネ・モスキン)が、カフェで働く美人店員・ミレナ(ヴィルナ・リージ)を見染めた。
だが、猫の額のような狭い町で、女房持ちが浮気をするのは、はなはだ危険なことだった。
やがて、ミレナはカフェをお払い箱となった。
オスバルドは、決して恋をしていることを人々に隠さなかったが、世論は味方をしなかった。
ついに、不幸な恋人たちは、姦通罪の嫌疑で逮捕されたが、ミレナは説得され町から去って行った。
前途を悲観したオスバルドは、ビルの屋上から飛び降り自殺を図るが失敗、数カ月入院することになった。
退院の日、口やかましい妻ギルダ(N・リッチー)が、子供たちをつれてやって来た。
町のうるさ方も彼の様子を見に来た。
そこでオスバルドは両耳に栓をして、一人すずしい顔をしているのだった。
ある日農家の若い娘が、トレビソの町に買物に出かけて、帰ってから父親に「媚びを売ったら安く買物が出来た」と告げた。
これを聞いた父親は、娘に手を出した店主たちを相手どり、訴訟を起こした。
店主たちはさっそく父親を買収。
やがて公判が開かれ、偽の証言をしたため、逆に、娘の父親は偽証罪で刑務所おくりになってしまった。
コメント:
原題の「Signore e Signori」は、「紳士、淑女の皆さま」という意味。
英語では「Ladies and gentlemen」。
本作は、「イタリア式コメディ」を代表する作品のひとつ。
1966年の第19回カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを『男と女』(監督クロード・ルルーシュ)と分け合って受賞した作品である。
3つのストーリー・ラインをもつ艶笑コメディで、イタリア北部の町・トレヴィーゾを舞台にしている。
最初の話は、夫が浮気を隠すために不能を偽る話である。
二つ目は、銀行員が愛人のために妻を捨てるが、町の残りの夫たちが嫉妬し、銀行員と愛人に対して陰謀を企てるべく団結する話である。
最後の話は、町の全ての男たちが、ある無軌道なティーンエイジャーを誘惑しようとするが、彼女の父親がついに彼女が未成年であることを明らかにするという話である。
とにかく、イタリア人がいかに恋愛が好きかという事を徹底して描いている、笑える作品になっている。
男も女も、男女の秘め事に夢中で、そのためにはどこまでも努力しているシーンが際立つ作品だ。
男女が出席しているパーティでも、セミヌードで踊る女性ダンサーがいて、これでは発情しない方がおかしい。
イタリアは恋の国だということがよく分かる。
出演者の中で最も有名なのは、カフェに働く女性・ミレナを演じたヴィルナ・リージだ。
この人は、イタリアを代表する国際派女優である。
1953年から映画に出演し始める。イタリア映画やフランス映画で活躍していたが、ハリウッドにも進出し、多くの映画で存在感を誇示した。
ジャック・レモン共演の『女房の殺し方教えます』や、フランク・シナトラ共演の『クィーン・メリー号襲撃』や、ジョージ・C・スコット共演の『おれの女に手を出すな』などの映画に出演。
晩年までイタリアのテレビ等で活躍した。
1966年4月に開催された第38回米国アカデミー賞授賞式で、ジェームズ・コバーンと一緒にプレゼンターを務めた。
『王妃マルゴ』で第47回カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。