イタリア映画 「ポケットの中の握り拳」 恐怖の親族殺人映画! 気の小さい人は観ないで! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「ポケットの中の握り拳」

(原題:I pugni in tasca

 

Amazon.co.jp: I pugni in tasca. Con DVD : Bellocchio, Marco, Autelitano,  A., Ciment, M.: 洋書

 

 

「ポケットの中の握り拳」 全編

 

1965年10月イタリア公開。

1983年9月23日日本公開。

新人・マルコ・ベロッキオ監督による恐怖の殺人一家を描く異色作。

 

原案・脚本・監督:マルコ・ベロッキオ

 

キャスト:

アーレッサーンドロウ:ルー・カステル

母親:リリアーナ・ジェラーチェ

アウーグストウ:マリノ・マーゼ

ジューリア:パオラ・ピタゴーラ

 

Amazon.co.jp: I pugni in tasca [Import italien] : Lou Castel, Paola  Pitagora, Marino Mase', Ennio Morricone, Marco Bellocchio: DVD

 

あらすじ:

アーレッサーンドロウ(ルー・カステル)はこれといった職もなく家族と暮らしている。

盲目の母親(リリアーナ・ジェラーチェ)は無気力で、家族のことは長男のアウーグストウ(マリノ・マーゼ)に任せきりだった。

一方、妹のジューリア(パオラ・ピタゴーラ)は、兄のアウグーストウに近親相姦的な愛着を抱き、兄と婚約者との仲を裂こうとする。

アウグーストウは婚約者と結婚して町に移り住みたいと思っているが、家族に対する責任や経済的な理由で結婚には踏み切れなかった。

ある日、弟のアーレッサーンドロウは母を車に乗せて墓参りに行き、その帰りに母を崖から突き落としてしまう。

アウグーストウは殺人を予告した弟のメモを発見するが、動揺もせず、二人の後を追おうともしなかった。

母の死後、アウグーストウは結婚して町に住むようになり、アーレッサーンドロウとジューリアは母親の遺品を片端から燃やしてしまう。

アーレッサーンドロウは冷静に第二の殺人を遂行した。

今度は知的障害の弟である。

浴槽で弟が死んでいるのを発見したジューリアは、ショックのあまり癲癇(てんかん)の発作を起こし階段から転落した。

その後、アーレッサーンドロウは晴れ晴れとした様子でヴェルディのオペラ『椿姫』に合わせて踊るうち、突然癲癇の発作に襲われもがき苦しみながら息を引き取る。

隣の部屋にいる病気のジューリアは兄が苦しんでいるのを知りながら、起き上がれないのか起き上がろうとしないのか、ベッドから出ようとはしなかった。

 

I pugni in tasca – Films – Visions du Réel

 

コメント:

 

家族や宗教に対する反乱を過激に表明する青年を描く、ぞっとするような恐怖ドラマである。

イタリア内陸部の田舎町で起こる、血の濃さに起因すると思われる視覚障害やてんかん発作の頻発を抱えた上流家庭の次男が犯した罪と、その代償ともとれる自滅を描いている。

 

アンファン・テリブル(恐るべき子供)の一人と呼ばれた異色の映画監督・マルコ・ベロッキオの映画デビュー作だ。

60年代にフランスを中心に同時多発的に起こった若手監督による新しい波を起こしたとされる、ベルトルッチとともに、イタリアのニューウェーブを担った異端児ベロッキオの驚くべき監督第1作だ。

 

『ザ・ニューヨーク・タイムズ』は「貧困と障害を抱えていることによって社会に適応することができない人々を描写している」という評価をしている。

1965年にイタリアで公開されたが、あまりの問題作だったためか、日本公開がその18年後になった。

 

マルコ・ベロッキオは、1939年11月9日、北イタリアのピアチェンツァ県ボッビオで生まれる。

ミラノで哲学を学んでいたが、映画に転向。1959年からローマ国立映画実験センターで映画製作を学んだ。

1965年、本作『ポケットの中の握り拳』で映画監督としてデビューし、注目される。

 

1967年の『中国は近い』は第28回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞と国際映画批評家連盟賞を受賞した。

1968年にはイタリア共産党に入党している。

 

その後、精神科医のマッシモ・ファジョーリと知り合い、作風を精神分析的なものへと変貌させる。

マルーシュカ・デートメルスを起用してレイモン・ラディゲの同名小説を大胆な解釈で映画化した『肉体の悪魔』(1986年)やベアトリス・ダルが自身を魔女と称す女性を演じた『サバス』(1988年)、日常的な会話を止め、舞台言語だけを話す男を描いた『蝶の夢』(1994年)がその代表作である。

 

また、1991年には『La Condanna』が第41回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを受賞している。

2000年代からは作風を再び社会的・政治的なものに戻し、1978年に赤い旅団が起こしたアルド・モーロ元首相の誘拐殺人事件を扱った『夜よ、こんにちは』(2003年)やベニート・ムッソリーニの最初の妻イーダ・ダルセルを描いた『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(2009年)といった作品を発表し、いずれも高い評価を得ている。

2011年、第68回ヴェネツィア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞。

2012年、尊厳死について扱った『眠れる美女』を発表。

同作は第69回ヴェネツィア国際映画祭や第25回東京国際映画祭で上映された。

2015年、『私の血に流れる血』を発表。

また、同年、第68回ロカルノ国際映画祭にて名誉豹賞を受賞した。

 

File:Lou Castel i pugni in tasca.jpg - Wikipedia

 

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