「革命前夜」
(原題:PRIMA DELLA RIVOLUZIONE)
1964年公開。
若い青年の心の移り変わりを描いた作品。
ブルジョワ青年のアイデンティティーの危機を描く。
脚本:ジャンニ・アミーコ、ベルナルド・ベルトルッチ
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト:
フランチェスコ・バリッリ:ファブリツィオ
アドリアーナ・アスティ:ジーナ
クリスティーナ・パリゼット:クレリア
アレン・ミジェット:アゴスティーノ
チェクローペ・バリッリ:プック
あらすじ:
1962年4月。
復活祭の少し前のとある日曜日。
共産党員でマルクス主義者を自認するファブリツィオ(フランチェスコ・バリッリ)は、自らも属するブルジョワ階級の婚約者クレリア(クリスティーナ・パリゼット)との訣別を決意し、最後に一目彼女を見ておこうとパルマの教会へと向かっていた。
そんなある日、彼は13歳の時からの親友だったアゴスティーノ(アレン・ミジェット)の突然の死に、深いショックをうける。
その頃、ミラノの生活の倦怠に苦しみ神経症気味の女性・ジーナ(アドリアーナ・アスティ)がファブリツィオの家に滞在することになる
やがて彼は母の妹である彼女と愛し合うようになるが、家族は誰も二人の関係に気づかなかった。
そしてファブリツィオは、ある日ジーナが見知らぬ男とホテルから出て来るのを見て激しい嫉妬にかられたり、二人で出かけたポー河の沼地で再会した無気力な没落貴族プック(チェクローペ・バリッリ)に将来の自分の姿を認めるのだった。
やがてジーナはパルマを去っていった。
6月15日。
公園では、「赤旗祭り」の準備が進められていた。
ファブリツィオの心は沈み、党のイデオロギーに幻滅を感じていた。
12月29日。
パルマの歌劇場でオペラ・シーズンが開幕した。
街のブルジョワたちの中にファブリツィオとクレリアの姿もあった。
二人は近く結婚することになっていた。
彼はロビーで顔を合わせたジーナに「このほうがよかったんだ、僕にはどうしようもなかったんだから」と告げる。
結婚式の日、新婚旅行に出発する二人を見送るジーナの目には涙が光っていた。
コメント:
ブルジョワ出身の青年が自分の思想の欺瞞性に思い悩む姿を描く。
コミュニストであることを自認しているが、生き方に自信がなく、付き合う相手の女性への愛情にも確信が持てない。
そんな男性の揺れる心を描いた秀作である。
川を隔てた両岸に格差があることが示される。
主人公は共産党員のようだ。
友人を共産党に誘い、年上の女性と戯れる。
この相手が主人公の叔母にあたるジーナ。
アドリアーナ・アスティが実に美しい。
隠し撮り風に、町を歩く彼女を男たちが振り返るシーン。
彼女のアップシーンが迫ると圧倒される。
くっきりとした瞳が美しい。
映画は哲学的で感動を呼び起こす。
でも、あまりにも詩的で哲学的である。
「ラストタンゴ・イン・パリ」の2年前にベルナルド・ベルトルッチが撮った異色作である。
1962年のイタリア北部のパルマが舞台。
ベルトルッチの自伝的作品といわれる。
主人公の青年は共産党員で自らのブルジョア的境遇を忌み嫌っている。
同じブルジョアの親友が事故死してショックを受ける。
ミラノから来た美人の叔母さんといい仲になってしまう。
すると根っからのブルジョア的精神から、叔母さんの交友に嫉妬してブルジョア的堕落と妥協のもとに、共産党を離れ、ブルジョアの許嫁と結婚式を挙げ、叔母さんと涙の最後の抱擁を交わす。
これをマルクスの麻疹に罹ったブルジョアお坊ちゃんが人間性を回復する話と取るか、そのお坊ちゃんが今度は年上の女性に憧れるという麻疹に罹って現実主義に立ち返る青春のセンチメンタルな話と取るかだが、端的にいえば、自らのブルジョア精神によって自己の革命に失敗した青年が、それを自らの革命前夜だったとニヒリズムを気取っているだけの回想に過ぎず、そこにナルシズムが顔を出している。
ガラス細工のようにデリケートな青春期のセンチメンタルを表現するための露出を上げた白っぽい映像が、ハーレクィーンロマンスのような白々しい効果を出している。
映像的には、けっこう芸術性が高い作品ではある。
ちなみに、美人の叔母さんの役のアドリアーナ・アスティは、ベルトルッチの最初の妻だという。
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