「河内風土記 おいろけ説法」
1961年2月1日公開。
河内を舞台にした、小説家の和尚が庶民たちのぶっ飛びトラブルを裁くコメディ。
原作:今東光
脚本:椎名竜治
監督:久松静児
キャスト:
森繁久彌:今野東吾
→はげ頭を見ているだけで笑える。これがおいろけ説法をかます。
山茶花究:浅吉親分
加東大介:伊之助親分
→ギューちゃんヅラ。
織田政雄:豚の毛はん
中村是好:松つぁん(跛の便利屋)
立岡光:勝造(八百屋の倅)
夏目俊二:荻野(テント劇場のラッパ吹き)
→貞子に声を掛ける。
遠藤辰雄:寄せ屋の親方
→屑屋と称している寄せ屋。
茶川一郎:定助(ブローカー)
藤木悠:米吉(ブローカー)
天王寺虎之助:周さん(古靴屋)
立原博:三次郎(呉服行商人)
船戸順:和太郎)
頭師満:彦助(パア太とお久仁の子供)
平井勤二:須藤(薫の男弟子))
長谷川みのる:拾い屋A
仲塚雅哉:拾い屋B
富士乃章介:散髪屋のおやじ
佐々十郎:パア太(魚屋お久仁の亭主)
頭師孝雄:七公(米吉の弟分)
加藤春哉:万太郎(米吉の友人))
東洋小勝:小男(産婆おりんの情人)
原知佐子:貞子(ブラシ工、片眼)
→見事なまでに片目。不思議なもので、「是が『赤い疑惑』のアレか」と突っ込みたくなるほどに可憐。
浪花千栄子:おりん(産婆)
千之赫子:文栄(後家、女工後に三次郎の妻)
坪内美詠子:薫(生花師匠と称する女)
環三千世:明子(寄せ屋の娘)
園佳也子:お久仁(パア太の女房)
千原万紀子:お三(仲居)
赤木春恵:おます(豚の毛はんの妻)
中北千枝子:東吾の奥さん
梅香ふみ子:貞子の母
吉川雅恵」饅頭屋のおばはん
あらすじ:
小説書きの東吾和尚のところには、河内の野に住むおひとよし達の身の上相談が、次々に持こまれる。
ケチで金をためた“豚の毛はん”と、寄せ屋の親方は、生花の師匠のお色気で、見事にも五十万をまき上げられる。
後家の文栄は、行商人の三次郎に、コロリとだまされ、翌日から一銭ももらえないひどい生活。
東吾和尚の智恵で、三次郎の商売物の洋服、反物一切を質に入れて、あざやかなしかえし。
ある夜、天台院にはいったコソ泥がある。
東京からキャバレーの女と駆け落ちした和太郎という男だ。
東吾和尚らにとっつかまると、居直っての金の無心。和尚に一喝されてシュンとなるが、人の好さそうなところを見こまれて、寄せ屋の親方のところに世話してもらう。
寄せ屋の一人娘明・子は、和太郎に好意を持った。
いくらかうすのろの八百屋の勝造は、口をきいたこともない仲居・お三に一目惚れ。
脅迫により仲人をたのまれた伊之助親分は、ぶ男の勝造に代り、ちょっと不良がかった定助を、見合の席にピンチヒッター。
ひともめあったが、ちゃっかりと定助、お三は夫婦約束をすることになる。
賭場に入りびたりの亭主パア太に愛想づかしのお久仁は、子供と生活のため、週三千円の契約で、数人の男の周り持ち女房。
それをめぐってのドタバタの一幕。
伊之助親分の工場に勤める、片目の不自由な貞子は、かつてひどい夫に苦しめられた身の上だ。
ふと知り合ったストリップ劇場のペット吹き荻野と想い想われる。
荻野もかつて女に裏切られた苦い思い出がある。
荻野は貞子が処女でないことを知ってまたひともめするが、それもめでたくおさまった。
河内の野は、東吾和尚を中心に愛すべき人たちの集まりである。
コメント:
原作は、今東光の『河内風土記』新潮社 1960年発行。
大ヒットした今東光の風俗小説である。
モノ書きの和尚が、河内の庶民たちの苦情を処理せんと苦心惨憺する、最高のコメディ映画になっている。
久松静児監督に豪華な東宝俳優陣を大勢出演させての群像劇。
登場人物の多くが身体的ハンデを持っていて‘ かたわもの ’を始めとして、今や使用禁止用語とされているワードのオンパレードにもなっている。
大らかというよりも無神経すぎる内容だ。
相手を傷つけている事に考えが全く及ばない時代が確かにあったのだという事を知らしめてくれる。
森繁演ずる寺の和尚が、地域で起こる萬相談事、とりわけ男女関係の問題解決に手腕を発揮している。
住民の信頼が篤いのは、原作者今東光の自画自賛ストーリーならではだ。
主人公の、小説書きの東吾和尚というのは、間違いなく今東光本人だ。
自分自身を庶民の中において、男と女、カネにまつわるコソ泥や借金のトラブルを面白おかしいストーリーに仕上げている。
悪名も同じような話ではあるが、任侠の世界はあまり多くない。
こういう作品が当時の関西地方の庶民のくらしを良く反映していたのではないだろうか。
この映画は、残念ながら、動画はネット上に残されていないようだ。
DVDも見当たらない。
だが、3年前にシネマヴェーラ渋谷で上映されたという記録があるので、そのうちにどこかの映画館で再上映されるかも知れない。