「奇跡の丘」
(原題:Il Vangelo secondo Matteo、英: The Gospel According to St. Matthew)
1964年10月2日公開。
イエスの生涯を「マタイによる福音書」に基づき描いた作品。
パゾリーニ監督の代表作。
受賞歴:
ヴェネツィア国際映画祭の審査員特別賞
国際カトリック映画事務局賞
監督・脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
キャスト:
- エンリケ・イラソキ - イエス
- マルゲリータ・カルーソ - 母マリア(若い時代)
- スザンナ・パゾリーニ - 母マリア
- マルチェロ・モランテ - ヨセフ
- マリオ・ソクラテ - 洗礼者ヨハネ
- セティミオ・デ・ポルト - ペトロ
- アルフォンソ・ガット - アンデレ
あらすじ:
予言者の言葉通り、ヘロデ王の代にべツレヘムの大工ヨゼフの婚約者マリアは、聖霊によって懐妊し、生まれた子はイエスと名づけられた。
迫害を逃れるため行っていたエジプトからイスラエルにもどり、ガラリヤで成人したイエス(E・イラソキ)は、ヨハネのもとで洗礼を受けた。
その時天から声かひびきわたり、イエスが神の子であることを告げた。
彼はただひとり、荒野で四十日間にわたって断食し、さらに悪魔と対決し、退けた。
その後イエスはガラリヤ全地を巡り歩き、教えを広め始めた。群衆を伴って山にのぼっては、神の国の福音を説ききかせた。
そしてイエスは数々の奇跡をも行なった。
しかし、悔い改めるものばかりではなかった。
イエスは、自分が長老や司祭たち、律法学者たちから苦しみを受け、殺されることを知っていたが、それでも怖れずエルサレムめざして布教の旅を続けた。
エルサレムについたイエスは、長老や司祭たちの偽善を責め、最後の審判の日の近いことを説くのだった。
やがて過ぎ越しの祭りの日、十二人の弟子とともに晩さんの席についた。
そして「この中の一人が私を裏切るであろう」といった。
その預言通り、イエスは弟子の一人ユダに売られ、ゴルゴタの丘で十字架にはりつけになった。
それから三日目、イエスは復活し、十一人の弟子の前に姿を現わした。
コメント:
原題は「Il Vangelo secondo Matteo」、英語タイトルは「The Gospel According to St. Matthew」。
これは、「マタイによる福音書」の意である。
「マタイによる福音書」に基づいて処女懐胎、イエスの誕生、イエスの洗礼、悪魔の誘惑、イエスの奇跡、最後の晩餐、ゲッセマネの祈り、ゴルゴダの丘、復活のエピソードが描かれている。
音楽はルイス・エンリケス・バカロフで、バッハ、プロコフィエフ、黒人霊歌などを駆使している。
有名なイエス降誕の馬小屋とかはない。
聖書を読み返すとたしかに「マタイ伝」には記されていない。
これは映像で観るマタイの福音書。
だから、映画の作り手の訴えたいことでなく
山上の説教の部分がダイレクトに心に響く。
キリスト教って何なのか。
その原点を確認できる作品になっている。
つい最近も、イエス生誕の地であるユダヤの国「イスラエル」の国内では、ユダヤ人とパレスチナ人の激しい殺し合いが続いている。
これはユダヤ教徒とイスラム教徒の戦いだが、イエスが修行し、愛を説いた土地がそこにあるのだ。
なぜか、キリスト教の信者この国には残っていない。
そして、2千年以上たった今でも、まだ人々は平和とは真逆の争いに夢中になっている。
今イエスがこの現実を見たらどう語るだろうか。
宗教の無力さを感じる2024年の冬にこの映画を観ると、心が凍り付きそうだ。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。
(英語字幕付き)