今東光の映画 「悪名」 今東光の代表作! 勝新が演じた大阪の侠客! | 人生・嵐も晴れもあり!

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今東光の同名の小説を原作とした勝新太郎主演の映画。

 

大阪の河内の暴れ者・八尾の朝吉(姓は村上)を主人公とする今東光の小説「悪名」は、1960年に「週刊朝日」に連載された。

当時の新聞や雑誌に連載された小説の中で、常に最高の人気だったのがこの作品である。

 

その後、大映で1961年に映画化され、主人公・朝吉を勝新太郎、弟分のモートルの貞を田宮二郎が演じた。

このヒットを受け、シリーズ化され、全16作が製作された。

 

今東光原作の映画の中でダントツの存在がこの「悪名」シリーズだ。

 

 

「悪名(あくみょう)」

 

 

 

悪名 予告編

 

1961年9月30日公開。

今東光の小説「悪名」の映画化。

実在の人物をモデルとした痛快ヤクザ映画。

悪名シリーズ第1作。

 

原作:今東光「悪名」

脚本:依田義賢 

監督:田中徳三 

出演者:

勝新太郎、田宮二郎、中村玉緒、水谷良重、浪花千栄子、永田靖、中田康子、阿井美千子、山茶花究 

 

 

あらすじ:

河内の百姓の伜・朝吉(勝新太郎)は無類の暴れ者で“肝っ玉に毛の生えた奴”と恐れられていたが、盆踊の晩、隣村の人妻お千代(中田康子)と知りあって有馬温泉へ駆け落ちした。

しかし働きに出るお千代に、ゴロゴロ待っている朝吉は次第に退屈し、彼女が酔客と戯れているのを見たのをシオに大阪に帰った。

彼はそこで幼馴染の青年達にあい、そのまま松島遊廓にくりこんだ。

琴糸(水谷良重)という源氏名の女は朝吉にぞっこん惚れ込んだ。

その晩連れの青年が酔った勢いで土地の暴れん坊、モートルの貞(田宮二郎)と悶着を起こし、彼らと貞は翌朝対決する羽目になった。

しかし機敏な朝吉の働きで貞は散々に打ちのめされた。

この時現れた貞の親分吉岡(山茶花究)の客分として一家に身を預けた朝吉は、喧嘩やバクチ場で無類の強さを示し、貞も次第に彼にひかれた。

そんな時、朝吉と馴染を重ねていた琴糸が逃げて来た。

松島一家を恐れて匿うことを渋った吉岡の薄情さを怒った貞は、杯を叩き返し朝吉を親分と立て、一家を去った。

琴糸は吉岡の隣のお絹(中村玉緒)の家に匿われていたが、松島一家に捕えられて因島へ売られてしまった。

朝吉と貞は対策を練るが、その夜かねてから朝吉を好いていたお絹は“妻にする”という証文を書かせて身を任せた。

二、三日お絹と甘い生活を送っていた朝吉は、貞の仕入れたピストルと軍資金を得て因島にのりこんだ。

そして、わざと別の宿をとった貞は、毎晩琴糸のいる大和楼に、素姓を隠した大尽遊びを続けて手筈をつけ、琴糸をうまく朝吉に渡した。

だが、船で沖へ出た朝吉は潮に流されてまた港へ戻されてしまった。

万事休した彼は度胸をきめて琴糸と貞と三人、旅館の大広間に立て籠った。

その時、この島の王様シルクハットの親分(永田靖)が、大勢の子分をひきつれて琴糸を渡せと迫って来た。

さすがの朝吉も顔面蒼白となり、ピストルで親分の心臓を狙った。

そこへこの旅館の主で、子分二千人を持つ島の女王・麻生イト(浪花千栄子)が出てきた。

自分の持ち家に筋を通さず乗り込んできたシルクハットの無礼をなじり、仲裁をかって出た。

仲裁の儀も滞りなく成立し、自由になった琴糸を中に、朝吉と貞はイト等に見送られて港を離れた。

 

 

コメント:

 

原作は、大人気となった今東光の週刊朝日連載小説「悪名」。

「あくめい」ではなく、「あくみょう」と読むようだ。

 

Yahoo!オークション - ☆『悪名』今東光;新潮社昭和36年初版函帯付;本袖折込;装...

 

この小説の主人公である「朝吉」の魅力がしっかり映像化されている。

この1作目では、勝新太郎演じる主人公・朝吉と、田宮二郎演じる子分のモートルの貞が出会って、兄弟分となる。

最も記念すべき作品である。


勝新太郎が演じる浅吉が、ヤクザなどとの争いでハッタリを効かせたりするあたりがなかなか良い。

勝新太郎の侠客に向いているキャラクターを見込んで主役に抜てきしたことが、最大の成功要因だろう。

 

 

 

弟分・モートルの貞を演じる田宮二郎も存在感を見せている。

この「モートル」というあだ名の根拠は、昔モーターのことをモートルと言っていて、モーターのように馬力のあるけんかをするという説、また、ばくちの隠語を昔はモートルといっていて、貞がばくち打ちだったからという説があるようだ。

この頃の田宮二郎は、若々しく、色気があり、溌溂としてカッコいい。。

このシリーズが16作にも及んだのは、やはり勝新と田宮二郎の二枚看板による圧倒的な迫力があったからだろう。

 

 

水谷良重、中村玉緒などの女性陣の輝く美しさが光っている。

中村玉緒は、実際にこの頃から勝新と恋仲になっていて、この映画封切後の翌年には結婚した。

自然な感じでのいちゃいちゃシーンが微笑ましい。

 

 

本作で極めて見事な存在感を見せているのが浪花千栄子という女優。

大親分としての貫録は十分。
この人は、若尾文子の祇園の映画などに年配の姐さんとして出演しているが、こんな威勢の良い女侠客の役も似合う。

現在放送中のNHK朝ドラ「おちょやん」のモデルになった人物で、河内出身だからこの役にはぴったりだ。

 

 

この映画の主役は、「八尾の朝吉」。

八尾というのは、大阪府の東部に位置する河内地方の現在の八尾市のこと。

朝吉というのは、今東光の「悪名」の主人公の名前だが、実在の人物がモデルだという。

 

朝吉のモデルは岩田浅吉。

1977年7月に70才で死んだと墓碑にある。

八尾はブラシ工場が盛んで、浅吉もブラシ工場の社長だった。

浅吉の養子である、総合ギフトメーカー「岩田良」の会長・岩田良三氏は、

「浅吉は、神社の境内で相撲をとって、体はがっしりして親分肌、バクチ好きだったが、暴れん坊じゃなかった」

という。
 

勝新太郎が演じる「八尾の朝吉」の如く、弱いものいじめをしない正義の味方のようなヤクザは実際には見たことがないが、そのモデルはヤクザではなく、立派な社長さんだったのである。

 

この映画は、Amazon Primeで動画配信中:

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