「激しい季節」
(原題:: Estate violenta)
1959年11月13日公開。
イタリアの呼吸避暑地での激しい恋と戦争を描く異色作。
脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、ジョルジオ・プロスペリ
監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
キャスト:
- ロベルタ・パルメザン:エレオノラ・ロッシ=ドラゴ
- カルロ・カレモーリ:ジャン=ルイ・トランティニャン
- ロッサナ:ジャクリーヌ・ササール
- マッダレーナ:フェデリカ・ランキ
あらすじ:
舞台は第2次世界大戦時でムッソリーニ政権下のアドリア海に面したイタリアの高級避暑地・リッチョーネ。
この地に滞在する上流階級の娘ロッサナ(ジャクリーヌ・ササール)は、戦火を逃れて別荘へ来たファシスト高官の息子カルロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)と恋に落ちた。
ある日、この地の上空にナチスの軍用機が威嚇するように飛んできて、怖がった幼女が逃げ出して転んでしまうが、カルロはこの幼女を助けて上げる。
そして、カルロはこの幼女の美しい母親である未亡人のロベルタ(エレオノラ・ロッシ=ドラゴ)と出会って、彼女に一目惚れをする。
その後、カルロとロベルタは彼の別荘で逢い、甘美な曲に合わせて一緒に踊り、思わず強く抱擁した。
それを見たロッサナは悲しみのあまり泣きながら立ち去ってしまう。
ムッソリーニに代わってバドリオ政権が樹立された頃には、2人は逢瀬を重ねて激しい愛欲にまみれた日々を送っていた。
だが、カルロの兵役延期は期限が切れていた。
どうしても別れられないカルロとロベルタは悩んだ末に駆け落ちを決意するが...。
コメント:
一九四三年のイタリアの動乱の時代を背景に、避暑地での激しい恋を描いた作品。
戦争を背景においての悲恋を描いたメロドラマ。
戦争と大恋愛をセットにした作品で、反戦映画でもある。
ただ中盤まではとても大戦中とは思えない優雅な描写が続く。
イタリアの高級避暑地が舞台となっているせいだ。
そこで若い男女たちの他愛のないそしてどこか暢気な生活が活写される。
いずれも富裕層なのだろう、ネオレアリズモで描かれたような貧困層は一切登場しない。
大戦も末期のこの時期、イタリアにはまだこんな暮らしができる層がいたとは。
主人公のカルロ(トランティニャン)はオヤジのコネで兵役も免れ呑気に遊び歩いているボンボン。
そんな男が未亡人ロベルタとの恋に堕ちるという展開。
ロベルタ役のエレオノラ・ロッシ=ドラゴがとにかく綺麗。
P・ジェルミ監督の「刑事」にも出ていた。
カルロが一途になってしまうのも無理がないと思わせる美しさと品の良さが彼女にはある。
二人がこっそりキスを交わすところをカルロの元カノに見つかってしまい、さっと離れるあたりに彼は初々しさも感じる。
未亡人は、三十路らしい色香が溢れている。
そこまでは戦争など遠い国での出来事のようだったのが、中盤を過ぎてから俄かに暗雲が立ち込めてくる。
二人の恋愛はロベルタが戦争未亡人であることから後ろめたい恋を余儀なくされている。
義妹からの冷たい視線を浴びるロベルタ。
でもそんな後ろめたさなど些細なことに過ぎなかったことがその後の展開でわかる。
映画館でのデート中に突然映画が止まる。
空襲が始まる。
列車に人が殺到する。
やがて戦車の列が続く・・・。
何だか現在進行形のロシア軍によるウクライナ侵攻が被さってしまいやりきれなくなる。
生き延びることに必死な状況となる。
超低空で飛行する戦闘機、苛烈な機銃掃射などなど戦争映画も顔負けというような激しいシーンが続く。
前半と後半のこの対比が強烈である。
同じようなことが今も場所を変えて行われていると思うと人類というのはいっかな進歩のない生き物なのだなと改めて思う。
最後の列車での別れのシーンも映画的であり印象に残る。
生きていたら会おうというロベルタだが、もう会えないことを確信している。
戦争とはそういうものだ。
戦争とは何かを身近に感じさせる秀逸な作品になっている。
若い男に夢中になってしまう年上の女性を演じている女優が上品で美しく、だがエロい。
こういう女性に出会ってしまうと、もう手が付けられない。
若い男はもうエロ狂い状態になってしまうのだ。
やはり、イタリアの女優の色香は凄まじい。
この女優は、エレオノラ・ロッシ=ドラゴ(Eleonora Rossi Drago, 1925年9月23日 - 2007年12月2日)。
イタリア・ジェノヴァ出身。
多くのイタリア映画に出演したが、本作が最高の出来だったようだ。
映画の舞台となった避暑地・リッチョーネの今の様子がこちら:
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。
(英語字幕付き)