「ふたりの女(1960)」
(原題:La Ciociara)
1960年12月22日公開。
ソフィア・ローレンが多くの映画賞を受賞した名作。
受賞歴:
- 第34回(1962年)アカデミー賞 - 主演女優賞(ソフィア・ローレン)
- 第14回(1961年)カンヌ国際映画祭 - ベスト・セレクション・女優賞(ソフィア・ローレン)
- 第27回ニューヨーク映画批評家協会賞 - 主演女優賞(ソフィア・ローレン)
- 第19回ゴールデングローブ賞 - 外国映画賞
- 第16回英国アカデミー賞 - 女優賞(国外/ソフィア・ローレン)
- 第12回ブルーリボン賞 - 外国作品賞
原作:アルベルト・モラヴィア
脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
キャスト:
- チェジーラ:ソフィア・ローレン
- ミシェル:ジャン=ポール・ベルモンド
- ジョヴァンニ:ラフ・ヴァローネ
- ロゼッタ:エレオノーラ・ブラウン
あらすじ:
第二次大戦中のイタリア。
ローマは連日大空襲をうけていた。
夫を亡くし女手一つで食料品店を経営するチェジラ(ソフィア・ローレン)は、娘のロゼッタ(エレオノーラ・ブラウン)を連れ故郷の田舎・チョチャリアへ疎開しようと決心した。
夫の友人で石炭屋をしているジョヴァンニ(ラフ・ヴァローネ)に店の管理を頼もうと出かけるが、彼に愛を告白され、その逞しい体に押倒された。
翌日、チェジラはロゼッタを連れ故郷の村に着いたが、すでに疎開者がたくさん来ていた。
そんな中の一人ミケーレ青年(ジャン・ポール・ベルモンド)は何かとこの母娘に気を配ってくれた。
ロゼッタはいつしか彼を慕うようになったが、乙女心の敏感さで、彼が母を愛していることを知っていた。
ある日、独軍占領下のこの村に英国兵が潜入、にわかに周囲が波立ち始めた。
ムッソリーニ監禁の報が入り、敗残のドイツ兵が姿を見せだした。
ミケーレはそのドイツ兵に道案内として拉致されていった。
間もなく米軍が戦車を連ねて進駐してきた。
戦争は終りだ--
チェジラはロゼッタを連れローマへの帰途についた。
弱い娘をかばい徒歩で行くチェジラ。
母娘は戦火で廃墟と化した教会を見つけ、しばしの休息をとろうと眠りについた。
ざわめきとともに北アフリカ植民地兵の一団が入ってきた。
彼らは喚声をあげて母娘に襲いかかった。失神からさめたチェジラはボロボロになった自分の服に気づいたが、片隅ではロゼッタが太腿もあらわに仰向いていた。
夢遊病者のような娘を助けながら、チェジラは通りかかったトラックにのせてもらい、その夜は運転手の若者(レナート・サルヴァトーリ)の家に泊まった。
深夜、チェジラはロゼッタが若者と戦勝祝賀パーティにいったこと、ミケーレが死体となって発見されたことを知った。
夜明けごろ、ロゼッタが帰ってきた。
母は娘をなじったが、娘は感情をなくしてしまったのか平然としていた。
だが、ミケーレの死を聞くとロゼッタは激しく泣き出した。
母娘はいつまでも抱き合っていた。
コメント:
ヴィットリオ・デ・シーカが六年ぶりに監督した、第二次大戦中のイタリアを舞台にしたドラマ。
原題の「La Ciociara」とは、ソフィア・ローレンが演じるチェジラの故郷の名前「チョチャリア」のことである。
この映画の日本語タイトルが、なぜ「母と娘」ではなく、「ふたりの女」なのかをヒシヒシと実感するエンディングになっている。
ふたりを凌辱するアルジェリア兵たちの愚行に、戦争の恐ろしさを感じる。
ソフィア・ローレンの明るさ、エレオノーラ・ブラウンの無邪気さ、ベルモンドの優しさが際立つ戦争映画である。
ソフィア・ローレンは、これまでの作品でとにかくグラマーでエロいという印象だったが、この作品では、明るさや気高さが感じられるものになっている。
この女優は、神聖ローマ帝国時代の貴族の末裔だという。
ベルモンドは、フランスで「勝手にしやがれ」が公開された直後のイタリア映画への出演となった。
全く別の、好青年を演じている。
物語の悲惨な顛末がより暗く重いものに感じられる反戦映画だ。
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