「ルシアンの青春」
(原題:Lacombe Lucien)
1974年1月30日公開。
第二次大戦末期のフランスを舞台にした若い男の人生を描く。
脚本:ルイ・マル、パトリック・モディアノ
監督:ルイ・マル
キャスト:
ピエール・ブレーズ:ルシアン
オーロール・クレマン:フランス
オルガ・ローウェンアドラー:オルン
テレーゼ・ギーゼ:ベラ
あらすじ:
連合軍がフランスのノルマンディ上陸作戦を開始した一九四四年六月。
フランス西部の農家の一人息子で十七歳のルシアン(P・ブレーズ)は、フィジアックの町の病院で掃除夫として働いていたが、休暇で家に帰ってみると、家は人手に渡っていた。
さらに、父はドイツ軍の捕虜となり、母は村長の情婦になっていた。
彼はレジスタンスに加わろうと思い、その隊長を訪ねたが拒絶された。
ルシアンは再び病院に戻るためにフィジアックに向かった。
その夜、ルシアンがホテルの前でぼんやり立っていると、一人の男に声をかけられた。
そこはナチのゲシュタポの本部でその手先きとなったフランス人たちが集まる場所だった。
酒を飲まされたルシアンは尋問にひっかかり、村の模様をしゃべってしまった。
レジスタンスの隊長である教師が逮捕されたのはその翌日だった。
ルシアンは彼らの華やかな生活に憧れ、その仲間に加わった。
ルシアンはゲシュタポの手先として、レジスタンスの地下運動にたずさわる人々の逮捕や、財産没収に参加した。
ユダヤ人の洋服屋オルン(H・ローウェンアドラー)の娘フランス(A・クレマン)と知り合ったのはそんなときだった。
ある夜、ルシアンはゲシュタポの本部で催されたパーティーにフランスを連れていった。
その帰り道、二人は結ばれた。
だがオルンはフランスとルシアンの関係を認めず、ルシアンを中傷するために、ゲシュタポの本部を訪れたが、逆にユダヤ人であることがばれ、ドイツへ送られてしまった。
連合軍が徐々にフランス領土をナチの手から解放していった。
そんなある日、ナチは、レジスタンスのゲシュタポ本部急襲に対して報復検挙を開始した。
ルシアンもそれに協力したが、その中にはフランスと彼女の祖母ベラ(T・ギーゼ)もふくまれていた。
ルシアンには二人を見殺しにするほかなかったが、ふとしたことでナチの卑劣さを見抜き、翻然と我にかえった。
彼はフランスと祖母を連れてスペインへ脱走する決意を固めた。
国境に近い山間の空家にたどりついた三人は、そこで様子をみることにした。
それはかつて体験したことのなかった安らかな日々だった。
山々には花が咲き乱れ、ルシアンとフランスはその中で子供のように遊び廻った。
それは生まれて初めて体験する楽しさだった。
だがそんな楽しい日々も束の間だった。
ルシアンとフランスと祖母ベラの三人はやがてゲシュタポに捕えられ、処刑されてしまう。
コメント:
第二次世界大戦末期のフランスを舞台に、ナチとフランス・レジスタンスの戦いに捲き込まれた若者を描いた作品。
原題の「Lacombe Lucien」とは、主人公のフルネーム「ルシアン・ラコンブ」。
青春映画というよりも戦時中を描いた一風変わった映画。
第二次世界大戦末期のフランスを舞台にしているのだが、ナチス支配下のフランスという風景が変わった映画に見えた要因かも。そして、ナチとフランス・レジスタンスの戦いが全面に描かれているあたりも異色だ。
ある農村の少年ルシアンは、最初は病院の清掃係として働いていたが、レジスタンスとして戦おうとしたのだが、若さを理由に断られる。
そして成り行きでドイツ警察の手先となり、結果的に祖国フランスへの裏切り行為を重ねていく。
そんな彼の前に現れたのが、ユダヤ人の美しい娘・フランスだった。
彼女に恋したルシアンは、必死に彼女を守ろうとするのだが…。
この物語、映画を観終わってから確認したところ、ルシアンは実在した人物を題材に描かれたとのこと。
「こういう人生を送る若者もいたのだ」という驚きを禁じ得ない。
フランスの農村風景や街中風景そして人物が非常に綺麗に撮られている。
さすがルイ・マル監督、一筋縄ではいかない恋愛映画であった。
ラストショットは、まぶしい陽光の中で、草原に寝ころぶルシアンが見せる幸福そうなまどろみの表情。
それにかぶせて、「1944年10月12日、ルシアンはレジスタンス側の裁判で銃殺刑に処せられた」という字幕でが出て、ルシアンの物語は終わる。
凄惨なシーンが無かったことは救いだ。
ルイ・マルといえば、ナチス占領下のフランスのカトリック寄宿舎で生活する少年たちの心の交流を描いた「さよなら子供たち」が有名だが、本作はその姉妹版のような作品である。
平和というものの重要性を、戦争を背景に訴える傑作である。
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