「ピクニック(1936)」
(原題:UNE PARTIE DE CAMPAGNE)
1936年フランス公開。
1977年3月26日日本公開。
2016年10月デジタルリマスター版公開。
モーパッサンの短編小説の映画化。
自然と人間との調和を描いたルノワール監督の傑作。
原作:モーパッサン
監督・脚本:ジャン・ルノワール
出演者:
シルヴィア・バタイユ、ジョルジュ・ダルヌー、ジャヌ・マルカン、ジャック・ボレル、ポール・タン、ガブリエル・フォンタン
あらすじ:
夏のある日曜日、パリで小さな店を持つデュフール(アンドレ・ガブリエロ)は、妻と娘と義母、そして使用人アナトール(ポール・タン)を連れ、ピクニックに出かけた。
新鮮な空気、きらめく太陽、草のにおい。昼食後、デュフールとアナトールは昼寝、祖母は小径を散歩。
自然の美しさの中、デュフール夫人(ジャヌ・マルカン)と娘アンリエット(シルヴィア・バタイユ)は舟遊びの青年アンリ(ジョルジュ・ダルヌー)とロドルフ(ジャック・ボレル)に誘われる。
岸に舟をよせ、抱きあうアンリとアンリエット。
彼女の頬に一条の涙が……。やがて大つぶの雨が、嵐に変わってゆく。
数年後の日曜日、アンリは忘れることのできない想い出の河畔で、アナトールと結婚したアンリエットと再会する。
そして言葉を交す。
「よくここへ来るよ、素晴しい想い出のために」。
「私は毎晩想い出すヮ」。
コメント:
ピクニックに出かけた一家の歓楽と人生の一コマを描いたジャン・ルノワールの名作。
人間が自然の中で開かれていく。そのシンプルな幸せを美しく見せるだけでなく、一瞬の愛のきらめきを得ながらも結ばれることのない男女のドラマから、人生の歓びや切なさが浮き彫りになっていく。
祝福に包まれたかけがえのない一日が川に浮かぶ泡沫のように消えていくラストには胸が熱くなる。
画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの息子であるジャン・ルノワール監督の『ピクニック』は印象派絵画を越える美しさにあふれた奇跡の映画だ。
白黒でありながら父が残した絵画が動き出したかのように、樹木の色や水面の輝き、そして光の諧調までも鮮明に見えてくる。
デジタルの鮮明なカラーとは違う豊かな色彩のイメージが脳内に広がっていく、抒情と官能に満ちたルノワール映画の真髄。
1936年に撮影された映画のプリントは完成を待つ前に大戦が勃発しドイツ軍によって破棄。
ところがオリジナルネガはシネマテーク・フランセーズの創設者アンリ・ラングロワによって救出されていた。
そしてプロデューサーのピエール・ブロンベルジェの執念により、当時アメリカへ亡命していたジャン・ルノワール監督の了承を得て編集作業が進められついに完成、1946年にパリで公開となる。
こうして戦争の惨禍を超える幸運と情熱を得た『ピクニック』。
数奇な運命を経て、この至福の映画のリマスター版が戦後70年を記念して日本でも公開となった。
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