「果てなき船路」
(原題:The Long Voyage Home)
1940年11月11日公開。
ジョン・フォード監督の名作の一つ。
アカデミー賞の各賞にノミネート。
原作:ユージン・オニール
脚本:ダドリー・ニコルズ
監督:ジョン・フォード
キャスト:
- オーレ・オルセン - ジョン・ウェイン
- ドリスコル - トーマス・ミッチェル
- スミッティ - イアン・ハンター
- ヤンク - ワード・ボンド
- カーキー - バリー・フィッツジェラルド
- キャプテン - ウィルフリッド・ローソン
- フリーダ - ミルドレッド・ナトウィック
- アクセル - ジョン・クォーレン
- ドンキーマン - アーサー・シールズ
- デービス - ジョー・ソーヤー
- クリンプ - J・M・ケリガン
あらすじ:
ロンドンに船籍をおくグレンケアーン号は、速力ののろい貨物船であるが、西インド諸島の基港に碇泊中も、上陸が許されないので船員ははなはだ不服である。古参水夫のドリスコルはひそかに上陸して、原住民の女たちに果物篭の底に酒びんを隠して船に持参させ、水夫たちは酔いかつ踊りかつ殴り合った。船はアメリカの基港に着いたが、そこでは多量の弾薬を積込み、また上陸禁止となった。出帆直前に新参水夫スミッティは、脱船逃走を試みたが警官に捕えられて乗船させられた。2割5分の手当増額という船長の布告に、やや機嫌を直した船員たちはなかなか神妙に働いた。暴風雨に難航した時も水夫のヤンクが重傷を負うくらいに、皆は一所県命だった。船医もない小貨物船では手当のしようもなく、ヤンクは死んでしまった。船は燈火管制をして英国へ急いだが、スミッティが船長室で酒を盗んだのを、給仕のコッキーは机上にあった暗号帳を見たのだと思い誤る。それで彼はスパイと勘違いされ、大切にしている書類をドリスコルが皆の前で読むと、それはスミッティの妻からの手紙で、彼は酒でしくじった海軍将校のなれの果てと判明する。アイルランドも近づいた日、船はナチの爆撃機に襲われたが幸い爆撃を免れたが、機銃掃射でスミッティが殉職した。船はロンドンに着き、契約満期となったドリスコル、オルセン、コッキー、アクセル、ディヴィス等は勇んで下船した。皆はスウェーデンへ帰るオルセンに切符を買ってやり、陽気に飲んで騒いだ。船員を虐使するので評判の貨物船アミランダ号は、水夫が不足なのでポン引のクリンプにやみ取引を頼む。クリンプは正直そうなオルセンに目をつけ、夜の女フリーダに含めて、眠り薬を入れたビールをオルセンに飲ませる。そして皆が別室で騒いでる間にアミランダ号に連れ込むが、オルセンのオームに教えられドリスコル等は、アミランダ号にあばれ込んで眠っているオルセンを救い出す。ところが最後まで残っていたドリスコルは、船長の棒に打たれて倒れ、そのままアミランダ号は出帆してしまう。皆はオルセンをスウェーデン行きの船に乗客として乗り込ませたあと、ドリスコルと別れてしよ気ながら、グレンケアーン号に帰って来る。ドリスコルはアミランダに乗せられたよ、と聞いてドンキーマンは持っていた新聞を水に捨てた。アミランダ号イギリス海峡で雷撃されて沈没ーと新聞にはあった。オルセンは帰国、ドリスコル、スミッティ、ヤンクは死んだが、グレンケアーン号はまた船路についた。
コメント:
「駅馬車」の翌年に作られたジョン・フォード監督作品。
舞台は西部から海洋へと移っているが、ジョン・ウェインとトーマス・ミッチェルはここでも再び顔を合わせている。
あらくれ船員たちの群像劇風なドラマ映画。
皆僅かな賃金で重労働をさせられ、不平がいっぱい。
制服組の航海士らとも一触即発の対立。
もっともフォード監督の描く群像ドラマはどこかコミカルだしおおらかだ。
何かと言うとすぐに乱闘シーンとなるが、後腐れを感じさせない。
アイリッシュらしく、皆酒好き。
酒での失敗も多い。
スミティ(イアン・ハンター)はその酒で失敗した過去があり、一人周囲と違う雰囲気を漂わせている。
それが故にスパイと勘違いされてしまったりする。
航海中に起こる様々なエピソードを紡いでいく一種のロード(航海)ムービー。
たまたま乗り合わせた人々の群像劇であった「駅馬者」の海洋バージョンとも言えようか。
もっともこちらは女ッ気に乏しい。
海の男たちの物語だ。
こちらではインディアンならぬドイツ軍の戦闘機に襲撃される。
いっさい戦闘機の姿を見せることなく空襲の臨場感を出している。
スタジオならではの工夫。
最後のエピソードで悲哀を滲ませて幕を閉じるところもフォード監督らしい余韻を残す演出だった。
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A~Kまでの11篇に分割されているが、映像は綺麗に観れる。
ただし英語音声のみ。