「奇談」
2005年11月19日公開。
諸星大二郎
原作:諸星大二郎
監督・脚本:小松隆志
キャスト:
- 藤澤恵麻(幼少期: 山田夏海):佐伯里美(さえきさとみ)。本作品の主人公。大学院生。7歳当時、村で神隠しにあったが戻ってきた。
- 阿部寛:稗田礼二郎(ひえだれいじろう)。異端の民俗学者。原作が掲載されている妖怪ハンターシリーズでは主人公。
- 神戸浩:重太(じゅうた)。〝はなれ〟の住民。
- 一龍斎貞水:龍尊寺住職。村の伝説を語る。
- 草村礼子:妙(たえ)。神隠しの伝説を語る老婆。
- ちすん:赤沼静江(あかぬましずえ)。江戸時代の神隠しから戻ってきた娘。
- 清水綋治: 村にあるカトリック教会の神父。〝はなれ〟のキリスト教に強い違和感を覚える。
- やべけんじ(声: 三ツ矢雄二):善次(ぜんじ)。〝はなれ〟の住民。死体として登場する。
- 白木みのる:洗礼のヨハネ。〝はなれ〟の住民を見届ける。
- 赤星満:使徒ヨハネ。
- プリティ太田:黙示録のヨハネ
- 柳ユーレイ:中原巡査
- 田中碧海:小杉新吉 : 16年前に佐伯里美と一緒に神隠しに遭い行方不明の少年。
- 土屋嘉男:三戸部孝蔵
あらすじ:
1972年。
民俗学を専攻している大学院生・佐伯里美(藤澤恵麻)は最近、巨大な穴と幼い少年が現れる奇妙な夢を見るようになっていた。
小学一年生の夏休みに、東北の隠れキリシタンの里として知られる渡戸村に住む親戚の家に預けられていた里美は、一緒に遊んでいた少年と共に神隠しに遭い、その前後の記憶がなかった。
当時の記憶の断片にも思えるその不思議な夢に誘われるように、幼い頃の失われた記憶を求めて、里美は渡戸村へと向かった。
渡戸村は徳川幕府の弾圧から逃れたキリスト教徒が作った隠れ里だが、その村の一部にある「はなれ」という集落の住人たちは、村ができる遥か以前から全員がキリシタンだった。
近親婚を繰り返した彼らは7歳程度の知能しかなく、そのうえ不死だと噂されていた。
渡戸村の住人たちは「はなれ」を村八分にし、村の恥部として外部に知られることを嫌っていた。
村の教会に立ち寄った里美は、村に伝わる聖書異伝『世界開始の科の御伝え』を調べるためにやってきていた考古学者・稗田礼二郎(ひえだれいじろう)(阿部寛)に出会う。
翌日、かつて隠れキリシタンの大量処刑が行われた山で、「はなれ」の住人・善次が磔の刑に処せられたかのような遺体となって発見された。
里美と稗田は長老や寺の住職から村に伝わる話を聞き出し調査を続け、渡戸村では昔から子供たちの神隠しが頻発していたことを知る。
やがて、16年前に里美と共に行方不明となった新吉が当時のままの姿で発見された。
彼は人々の問いに何一つ答えず、『世界開始の科の御伝え』をつぶやき続け、そして忽然と姿を消してしまう。
里美と稗田は、すべての謎の根源ともいうべき「はなれ」に向かう。
だが、「はなれ」には重太(神戸浩)以外、誰一人住人は見当たらなかった。
「『いんへるの』行っただ。それから、『ぱらいそ』さいくだ」。そう話す重太から、彼らはさらに、「はなれ」の住人たち全員で善次を殺したという衝撃の事実を聞かされる。
一方、その頃、教会に安置されていた善次(やべけんじ)が甦り、「はなれ」に向かっていた。
それはイエス・キリストが復活したのと同じ、死後三日目のことだった。
稗田は「はなれ」の住人たちの行動が『世界開始の科の御伝え』に書かれていることに合致することに気づく。
そして、かつてキリシタン弾圧のさなか、多くの宣教師が殉教覚悟で日本に渡来した背景に、日本に『生命の木』が生えているという伝説が当時のヨーロッパにあったことを思い出していた。
やがて、稗田は集落の外れに洞窟の入り口を見つけると、ある確信を持ってその中へと歩を進め、里美もその後に続く。
里美の失われた記憶はしだいに鮮明に呼び覚まされ、すべての謎が解き明かされようとしていた。
しかし、その穴の奥で彼らを待ち受けていたのは、彼らの想像を遥かに超える衝撃的な光景だった。
コメント:
諸星大二郎の漫画『妖怪ハンター』シリーズの初期の短編『生命の木』を原作にしている。
この作品は、1974年から『週刊少年ジャンプ』で連載された人気漫画。
漫画家・諸星大二郎の最高傑作との呼び声も高いのが、この『生命の木』だ。
江戸時代からの隠れキリスタンが長い年月の間にカトリックの教義から離れた独自の土着信仰を持っていた、というのは無さそうでありそうな話でそのような発想が面白い。
阿部寛にピッタリの作品だが、トリック・シリーズとは異なる、隠れキリシタンの悲しい過去の物語だ。
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