「汚れた英雄」
1982年12月18日公開。
レースに生命を賭ける若き美貌のライダーの青春を描く。
配給収入:16億円。
原作:大藪春彦『汚れた英雄』
脚本:丸山昇一
監督:角川春樹
キャスト:
- 北野晶夫:草刈正雄
- クリスティーン・アダムス:レベッカ・ホールデン
- 斎藤京子:木の実ナナ
- 緒方あずさ:浅野温子
- 緒方宗行:奥田英二
- 緒方和巳:磯崎洋介
- 大木圭史:勝野洋
- 鹿島健:貞永敏
- 雨宮貴司:林ゆたか
- 御木本菜穂子:朝加真由美
- 亀谷鉄也:草薙幸二郎
- 畑田:中田博久
- 島崎:清水昭博
- テディ片岡:伊武雅刀
- 清水:望月太郎
- 大橋:辻萬長
- 河井和子:中島ゆたか
- ピアニスト:世良譲
- パットン:トニー・セテラ
- ウィリアムス:ジョセフ・グレース
- パーティー司会者:夏八木勲(ノンクレジット)
あらすじ:
全日本選手権ロードレース第8戦、メインレースの国際A級500cc決勝を迎え、SUGOのサーキットは興奮のるつぼと化している。
北野晶夫(草刈正雄)と大木圭史(勝野洋)の宿命の対決が始まろうとしていたのだ。
晶夫が96点で1位、2位には連続チャンピオンを狙う大木、3位は若手の鹿島健(貞永敏)がつけていた。
いつものように晶夫が飛び出し、9周目にはコース・レコードを出す好調さだったが、ラストの直線で大木に抜かれ、一輪差で敗けた。
敗因はマシーンの差、ファクトリー・チームの技術と組織の差だった。
ともあれ、これで晶夫と大木が同点で、勝負は最終戦にもち込まれた。
晶夫のプライベート・チーム〈KITANO〉は、メカニックの雨宮(林ゆたか)、かつてのライダー仲間・緒方(奥田英二)、その妻でチーム・マネージャーのあずさ(浅野温子)、その息子の和巳(磯崎洋介)に支えられている。
チームを維持する莫大な資金は、晶夫の美貌とセックス・テクニックによってパトロンとなっている国際的なデザイナー・斎藤京子(木の実ナナ)、財閥の令嬢・御木本菜穂子(朝加真由美)が出しているが、まだ世界を狙うには金がいる。
晶夫は、折りから来日した、国際的なコングロマリットのオーナーのクリスティーン・アダムス(レベッカ・ホールデン)に的をしぼった。
彼女とはヨーロッパで知り合っていたが、パーティで再会、晶夫の誘惑に何なく陥落する。
恋のライディングは着々と成果を上げたが、肝腎のマシーンの性能アップは思うように進んでいなかった。
メカの雨宮は女の事で作業をスッポカした。
その為、晶夫は雨宮を解雇、自ら徹夜でマシーンに取り組んだ。
いよいよ決勝の時が来た。
全日本選手権最終戦、国際A級500cc決勝レース。
晶夫、大木、鹿島らが一斉に飛びだした。
38周目、魔のヘアピンにさしかかる晶夫。
ついに勝利の女神は晶夫に微笑んだ。
コメント:
1982年製作の角川春樹の監督第一作。
大藪春彦の原作を現代に置き換え、レースシーンを中心に構成した丸山昇一の脚本をもとに、草刈正雄演じるヤマハYZR500を駆る世界グランプリライダーの死と隣り合わせの短くも華麗なレース人生を描いた作品である。
主人公・北野晶夫役は、自ら角川に売り込んだ草刈正雄に決まった。
制作にあたりヤマハ発動機の全面的な協力が得られたことから、ヤマハの関連会社が経営するスポーツランドSUGOで、TZ500や当時のWGP主力マシンであったYZR500を使った模擬レースを開催するなど、現代のロードレースシーンを描くことに成功している。
映画で北野晶夫のレースシーンスタントを担当した平忠彦は、当時国際A級500ccクラスにステップアップしたばかりの若手ライダーだったが、長身で風貌も草刈によく似ていたために異例の抜擢となった。
当時の平は、ヤマハワークスの大先輩である野口種晴の店(野口モータース)に住み込みの身であり、映画のイメージとは全く違う生活を送っていたと言われる。
映画版では北野晶夫が自宅のプールで泳ぐ場面があるが、「平さんも家にプールがあるんですか?」とたびたび聞かれるようになったため、平は当時のインタビューで閉口した旨を述べている。
その後、平は全日本選手権500ccクラス3連覇を達成、世界GPフル参戦も果たし、資生堂の男性化粧品「TECH21」のイメージキャラクターを長年務めるなど、北野さながらの活躍を見せた。
映画のクライマックスのレースシーンで北野晶夫がゴール後のウィニングラップをウイリーで締めくくる場面のスタントは、平ではなく同じヤマハワークスの木下恵司が演じている。
2ストロークの500ccマシンはアクセル操作にとても敏感で、当時500ccクラスルーキーだった平にはまだウイリー走行を披露するほどの経験がなかったためだと言われている。
草刈正雄がとにかくイケメンでチョーかっこいい。
この人は、アメリカ人を父に持つハーフで、身長185cmという、美しいフェイスとすらっとした体格を併せ持つ、日本の映画界でも飛び切りの美男子だった。
しかし、美男子が必ずしも映画俳優として成功するとは言えない。
その典型がこの人だ。
受賞歴を見てみると、何とこんな結果に:
- エランドール 新人賞 (1975年)
- 第33回ベストジーニスト・協議会選出部門(2016年)
- コンフィデンスアワード・ドラマ賞年間大賞・助演男優賞(『真田丸』)(2016年)
- 東京ドラマアウォード2017 助演男優賞(『真田丸』)(2017年)
この映画では主人公のカッコよさが売りになっているので、草刈正雄にはぴったりの作品で、派手な印象の木の実ナナや、浅野温子に囲まれて悦に入っているシーンは絵になっている。
この映画は、Amazon Primeで動画配信中: