横溝正史シリーズII「仮面劇場」
TBS系列で1978年9月16日から10月7日まで毎週土曜日22:00 - 22:55に放送された。全4回。
脚本:鴨井達比古
監督:井上芳夫
キャスト:
- 金田一耕助 - 古谷一行
- 大道寺綾子 - 司葉子
- 虹之助 / 志賀琴絵 - 長尾深雪
- 大道寺珠代 - 新村礼子
- 甲野梨枝子 - 富田恵子
- 甲野静馬 - 富川澈夫
- 甲野由美 - 服部妙子
- 藤原キヨ - 菅井きん
- 藤原源造 - 柳谷寛
- 深町君枝 - 野中マリ子
- 志賀恭三 - 池部良
- 鵜藤五郎 - 睦五郎
- 尼 - 堀井永子
- 松造 - 山本一郎
- 刑事 - 柿沼大介
- 巡査 - 松尾文人
- 鈴木院長 - 下條正巳
- 日和警部 - 長門勇
あらすじ:
棺に入れられて瀬戸内海を漂流していた三重苦の謎の美少年・虹之助(長尾深雪)が、金田一ファンの大富豪の未亡人・大道寺綾子(大道寺綾子)にひきとられるや、奇怪な連続殺人事件が発生し、綾子の身辺を血なまぐさく染めていった。
金田一耕助(古谷一行)は心魅かれる綾子のために事件の唯一の目撃者・紅之助の謎の正体を探る一方、怪奇と冷血の殺人事件解明の鍵を追って、東京、小豆島を奔走する。
コメント:
原作は戦前に書かれた同名作品で、探偵は由利先生なのだが、ドラマでは金田一耕助に変更されている。
内容的には、耽美小説とスリラーと不可能ミステリーを一緒にしたような感じで、正史の戦後の精緻な本格ミステリー群とは比較にならないのだが、これはこれで面白い。
目も見えず、耳も聞けず、口も利けない三重苦の美少年の周囲で次々と起こる殺人事件に因縁話を絡めたものである。
ドラマもだいたい同じだが、ヒロイン司葉子と恋人・池部良との大人の恋愛により重点が置かれている。
昭和26年、金田一は瀬戸内海を走るフェリー上で、大道寺綾子という金持ちの未亡人と知り合う。
演じるのは、司葉子である。
ちょうどその時、フェリーの前に棺桶を乗せて漂流しているボートが現れる。
引き揚げてみると、棺桶には美少年・虹之助なる人物が横たわっていたが、彼はまだ死んでいなかった。
彼が何者で、誰がこんなことをしたのか、皆目見当もつかないが、綾子は目も耳も口も不自由な虹之助に同情し、周囲の反対を押し切って彼を引き取ることにする。
この美少年・虹之助を演じるのは、長尾深雪という女優である。
金田一は綾子に請われて一緒に東京へ戻る。
箱根の芦ノ湖での花火大会の夜、金田一たちは綾子の友人の甲野兄妹および鵜藤という男と出会う。
甲野由美を演じるのは服部妙子。
まだ初々しくてとても可愛い。
綾子は虹之助を自分の屋敷に引き取って世話をしていたが、綾子の家政婦が早速何者かに殺されると言う事件が発生。
死者1号。
ちなみに綾子の幼馴染で密かに思いを寄せている謎の男・志賀恭三を、映画「吸血蛾」で金田一を演じたこともある池部良が颯爽と演じている。
甲野家は小豆島の出身なのだが、兄妹の母親・梨枝子が島から東京へやってくる。
ところが、虹之助と一緒にいる間に、毒殺されてしまう。
死者2号。
警察は当然、虹之助を疑うが、なにしろ目も耳も不自由と言うことで、結局無罪になる。
ついで、綾子の屋敷の運転手が特に理由もなく殺される。
死者3号。
一時、警察から犯人だと疑われていた鵜藤(睦五郎)もあっさり殺される。
死者4号。
この辺で、さすがに綾子自身や、志賀も疑われ、警察に取り調べられたりする。綾子は不幸が続発しても、頑なに虹之助を手放そうとしない。
ネタバレをしてしまうと、犯人は〔虹之助〕なので、結局綾子の無分別な善意が全ての惨劇の源になっているので、この辺は見ていてイライラしてしまう。その癖、最後に自分だけ幸せになっちゃうし。
ついで、綾子のワガママぶりに反発していた義理の妹・珠代(新村礼子)、そして虹之助の周囲に暗躍していた顔に火傷のある男が立て続けに殺される。
死者5号、6号。
直後、虹之助の秘密について金田一に話そうとしていた尼さんも殺されてしまう。
7号。
事件の源は、小豆島にありということで、金田一は島へ渡って、二大旧家の争いについて情報を集める。
また、恭三が妹をある精神病院へ預けていることを知り、そこを訪ね、同じ小豆島の出身で過去の経緯について良く知っている院長に話を聞く。
院長を演じているのはご存知、おいちゃんこと下條正巳である。
彼の口から明かされる虹之助の出生にまつわる人間関係が、これまた複雑怪奇。
まだまだ続く殺人。
甲野静馬は、絵を描いている途中、急に苦しみだして崖から落ちて死亡。
8号。
それとほぼ同時に、妹の由美も毒を盛られて、苦しむ。
死者9号……と言いたいところだが、彼女はかろうじて一命を取り留める。
良かった良かった。
果たして真犯人は誰なのか……?
この段階で、生き残っているのは綾子と志賀、虹之助、そして運転手の妻(菅井きん)だけなので、考えるまでもないが。
恭三の妹は、虹之助に瓜二つだったと言う正史好みの設定があり、長尾深雪が二役で演じている。
いろいろあって、虹之助と恭三の妹も自殺する。
9号、10号。
……遂に10人達成!
警察関係者を除くと、登場人物は15人くらいで、なんとそのうちの10人が死ぬと言う物凄いことになるのだった。
死亡率66パーセントである。
ミステリードラマとしては人間関係の複雑さや、犯人の意外性を除くと、ほとんど取柄のない作品になってしまった。
まあ、ここまで豪快に人が死ぬと、ある意味立派だが、これが横溝正史の世界だ。
「お前は一体何をしてたんだ、金田一?」
と、ツッコミを入れたくなるほど、今回はほとんど焼きに立たず仕舞いの金田一耕助だった。
ヒロインの大道寺綾子を演じる司葉子が美しい。
金田一まで惚れちゃって、鼻の下を伸ばす。
「悪魔の手毬唄」では岸恵子に刑事が惚れていて金田一が「愛していたんですね。」と言うが、ここでは逆に、ラストで刑事から「惚れていたんでしょう。」とからかわれる。
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