「刑務所の中」
2002年12月7日公開。
刑務所の中の、意外に快適な暮らしの様子を描出した喜劇。
受賞歴:
- 第76回キネマ旬報日本映画ベスト・テン第2位、助演男優賞(香川照之)
- 第45回ブルーリボン賞監督賞
- 第15回日刊スポーツ映画大賞助演男優賞(香川照之)
- 第28回報知映画賞邦画作品賞
- 第59回毎日映画コンクール監督賞、美術賞
原作:花輪和一
脚本:崔洋一、鄭義信。中村義洋
監督:崔洋一
出演者:
山崎努 、 香川照之 、 田口トモロヲ 、 松重豊 、 村松利史 、 大杉漣 、 伊藤洋三郎 、 遠藤憲一 、 浅見小四郎 、 粟田茂
あらすじ:
銃砲刀剣類等不法所持及び火薬類取締法違反で懲役3年の実刑判決を受け、北海道・日高刑務所に送られたミリタリーおたくの中年・ハナワ(山崎努)。
彼は、雑居房の4人の受刑者らと共に、厳しい規律に縛られながらもそれなりに快適な獄中ライフを過ごしていた。
毎日繰り返される他愛のない会話、作業場での労働、2日に一度の入浴、夕食後のテレビ、お正月にはおせち料理も出るし、免業日には飲み物&お菓子付き映画鑑賞会もある。
ところがある日、捜索(抜き打ち検査)で出所後の互いの連絡先をメモした紙片を発見された5人は、不正連絡で懲罰房に入れられてしまう。
しかし、そこで黙々と薬袋を作ることになったハナワは、今までで一番充実した時間を過ごすのであった。
コメント:
原作は、漫画家の花輪和一のエッセイ漫画。
作者自身が、銃砲刀剣類不法所持違反で逮捕され服役した獄中体験を作品化した。
ガンマニア趣味が高じて銃刀法違反及び火薬取扱い法違反で懲役3年の実刑を食った花輪和一は、日高刑務所に入所。
雑居房での囚人生活が始まる。
朝6時40分起床、点検、食事、作業、食事、作業、食事、点検、そして9時就寝。
規則正しい生活、厳格な規則、正に究極の管理社会。
服役囚の楽しみは食べる事に集中していく・・・
原作のマンガ「刑務所の中」は、相当のヒットになったが、その内容は、刑務所生活を淡々と記録したもので、何らドラマティックなものではない。
こんな内容で映画になるのか、って思うんだけど、映画は、その原作を、ほぼそのまま映画化している。
冒頭に、花輪和一が実刑を食うに至った原因となるシーンが追加されているのみ。
にも関わらず、これが面白いので困ってしまう。
主人公のモノローグと表情で、原作のコミックの世界を見事に映画化し、そしてそれがエンターテイメントになる、これは見事な映画化作品である。
何が面白いかというと、刑務所生活の異常さと、受刑者がその中でそれに適応して生きているというところに面白さがあるのだ。
何をするにも刑務官に「願います」と申請して、許可を得ないと出来ない(大小便すらも)現実。
TVも観られる、本も読める、でも、クロスワードパズルはダメ、と言う不条理。
いや、そもそも、国家の法に背き、人を殺め、罪を犯した人間に3食と寝場所を与える、刑務所と言う存在の不条理を、この映画は描いているのだ。
それがリアルに描かれるだけでは、ドキュメンタリーになるだけなのだが、それをエンターテイメントにしてしまうのが、花輪和一の視点と解釈なのだ。
それを映画化した崔洋一監督と、見事に演じきってみせた主演の山崎努の力量、恐るべし。
こういう非日常の世界が日本のあちこちに存在しているということを教えてくれる貴重な作品だ。
2022年最大の話題となった香川照之も、受刑者の一人として出演している。
役柄は、婦女暴行罪及び未成年者売春(性犯罪)で服役中の受刑者だ。
まさにこの男にピッタリだ。
当時37歳だった。
この映画から20年後の今年、この映画のような刑務所生活が始まるのか?
まあ、すでに被害者が告訴を取り下げているようなので、まだ娑婆の生活は出来ているらしいが。
ただ、毎日が針のむしろだから、いっそのことムショに入りたいと思っているかもしれない。
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