「ディアボロス/悪魔の扉」
(原題:The Devil's Advocate)
1997年10月17日公開。
ニューヨークを舞台に、悪魔が法曹界の黒幕となり若き弁護士の魂を狙うオカルト映画。
原作:アンドリュー・ネイダーマン
脚本:ジョナサン・レムキン、トニー・ギルロイ
監督:テイラー・ハックフォード
キャスト:
- ケヴィン・ロマックス
- 演 - キアヌ・リーヴス
- 弁護士。連戦連勝記録を作るなど能力は高いが自分が受け持った加害者を軽んじ相手側の被害者を尊重するなど仕事には複雑な感情を抱いている。元は検事だった。実はミルトンの息子。
- ジョン・ミルトン
- 演 - アル・パチーノ
- 大手弁護士事務所の人間。実はケヴィンの父。銃で撃たれても死なず、幻覚を相手に見せることができる超常的な存在。
- メアリー・アン・ロマックス
- 演 - シャーリーズ・セロン
- ケヴィンの妻。ジャッキーからはアンドレアと呼ばれている。キャシーという妹がいる。毎日起こる異常現象に心身ともども傷つくようになる。
- エディ・バズーン
- 演 - ジェフリー・ジョーンズ
- 事務所の管理部長。ジョギング中にホームレスに襲われて死亡する。
- アリス・ロマックス
- 演 - ジュディス・アイヴィー
- ケヴィンの母。息子からは慕われており「母さんの悪い予感は当たる」と認められている。息子との仲は良くメアリにも寛容だがミルトンには良い印象を抱いていない。その理由はミルトンが実は夫であり、ケヴィンの本当の父であるから。
- アレクサンダー・カレン
- 演 - クレイグ・T・ネルソン
- マンハッタンの不動産王。14歳の養女がいる。
- クリスタベラ
- 演 - コニー・ニールセン
- 女弁護士。ミルトンと一緒にいることが多い。実はミルトンの娘でケヴィンの腹違いの姉。
- バーバラ
- 演 - ヘザー・マタラッツォ
- 猥褻を受けた女性。
あらすじ:
フロリダ州の若手弁護士ケヴィン(キアヌ・リーヴス)は法廷での無敗記録を伸ばし続けていた。
妻のメアリー・アン(チャーリズ・セロン)らと祝杯をあげていたケヴィンはNYのミルトン法律事務所からスカウトされる。
事務所の社長ジョン・ミルトン(アル・パチーノ)に見込まれたケヴィンは役員待遇で迎え入れられた。
世界を相手にビジネスをしている活気のある事務所、用意された豪壮なマンション、都会的な洗練された隣人たち。
若い夫婦の未来は明るいかに見えた。
事務所の上得意である不動産王アレキサンダーが妻と子どもを殺害した容疑で逮捕された。
ミルトンにこの件をまかせられたケヴィンは裁判の準備に忙殺されて家に帰れない日が続く。
メアリー・アンは慣れない都会での孤独のためかしだいに精神に変調をきたす。
愛妻家だったケヴィンも野心に我を忘れ、妻の看護のためにしばらく休職してもいいというミルトンの誘いを断って仕事に邁進する。
メアリー・アンを心配してNYにやって来たケヴィンの母親はマンションでミルトンとすれ違った時に何かに気付くが固く口を閉ざす。
ケヴィンの同僚の妻たちは実は悪魔だと言ったり、存在しない自分たちの赤ちゃんに子宮を奪われる夢を見たりと、メアリー・アンの精神は確実に病に蝕まれていく。
そしてケヴィンも彼女を抱いている最中に同僚の弁護士クリスタベラとセックスしている幻を見るなど、どこかおかしくなっていた。
そんな中、弁護士のエディ(ジェフリー・ジョーンズ)がジョギング中にホームレスに撲殺された。
彼は出世できない腹いせに事務所ぐるみの国際的不正を暴露しようとしていたのだ。
そのことをケヴィンに伝えようとしたFBIの捜査官も彼の目の前で自動車に轢かれて死ぬ。
ケヴィンは裁判を前にしてアレキサンダーが罪を犯していることを確信し、その苦悩をミルトンに打ち明けるが、彼は「ついに黒星か」と言うだけ。
虚栄心に惑わされたケヴィンはアレキサンダーの秘書に偽証をさせて勝訴する。
帰宅したケヴィンを待っていたのは切り傷だらけの身体でミルトンにレイプされたと泣き叫ぶメアリー・アンだった。
彼女は精神病院に運び込まれ、目を離した隙にケヴィンの目の前で自殺する。
さらに駆け付けた母親にミルトンがお前の本当の父親なのだと告げられたケヴィンは、彼が全ての元凶だと確信しオフィスへと向かった。
果たしてミルトンはケヴィンに世界を征服しようと持ちかける。
そのためには異母姉弟のクリスタベラと子供を作り悪魔の血筋をさらに濃くしなければならない、と。
ケヴィンはミルトンに魂を売り渡したかに思わせておいて持参した拳銃で自らのこめかみを撃ち抜く。
一瞬にして積年の野望が崩れ去ったミルトンはその醜悪な素顔をさらけ出すのだった。
……気が付くとケヴィンはフロリダ州の裁判所にいた。
今までのことは白昼夢だったのだろうか。
彼は猥褻教師の弁護人を降り、初の黒星にもかかわらず清々しい顔でメアリー・アンと帰路につく。
英雄的行動をとった彼にロングインタヴューを申し込んだ新聞記者がいた。
「虚栄心は人を惑わすからな」とひとりごちる彼は顔を変えたミルトンだった。
コメント:
大都会ニューヨークを舞台に、悪魔が法曹界の黒幕となり、若き弁護士の魂を狙うという訴訟王国アメリカならではのオカルト映画。
原題の「The Devil's Advocate」は、「悪魔の代弁者」という意味。
邦題の「ディアボロス(διάβολος)」とは、ギリシャ語で「悪魔」を意味する言葉。
人生には、どこかのタイミングで大事な一線を踏み外す瞬間がある。
悪魔の囁きだろうか。
人類はみな悪魔の子。
原罪を背負っているという事だろう。
この映画における悪魔とは、神のようでもある。試されているのだ。
しかし、一方の神は何もしない。
そういう風刺も込められている。
悪魔と関係を持ってしまったお母さん。
地味すぎるのだが、何故、悪魔が選択したのか。
もっと沢山子供がいてもおかしくないのだが。この辺の設定はあまり気にするなという事だろう。
悪魔の弁護士であるが、ここに依頼してくる奴らの方がよっぽど悪人でもある。
人間の悪党ぶりに悪魔がゲンナリする設定の物語があっても良さそうだ。
示唆に富んだ面白い作品になっている。
アル・パチーノとキアヌ・リーヴスの共演は見応えがある。
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