「雲霧仁左衛門」
1978年7月1日公開。
池波正太郎の原作を初めて映画化。
超豪華俳優陣による本格時代劇。
興行収入:6.3億円。
脚本:池上金男
監督:五社英雄
出演者:
雲霧一党
- 雲霧仁左衛門(辻伊織):仲代達矢
- 七化けのお千代:岩下志麻
- 木鼠吉五郎:長門裕之
- 因果小僧六之助:あおい輝彦
- 黒塚のお松:倍賞美津子
- 州走りの熊五郎:夏八木勲
- 山猫三次:川谷拓三
- 治平:下川辰平
- 三坪の伝次郎:松野健一
- 大工小僧七松:隆大介
- 犬神の亀造:早川純一
火付盗賊改方
- 安倍式部:市川染五郎
- 山田藤兵衛:高松英郎
- 千秋与茂七:内田良平
- 岡田甚之助:山城新伍
- 高瀬俵太郎:石橋正次
- 柳助次郎:佐藤京一
- 井口源助:橋本功
- 津山伝七:原田清人
- 政蔵:稲葉義男
- おまき:宮下順子
松屋
- 松屋吉兵衛:丹波哲郎
- 松屋の番頭:浜田寅彦
暁一党
- 暁星右衛門:山本麟一
- 櫓の福右衛門:成田三樹夫
- 駒寺の利吉:田中邦衛
幕閣
- 大久保佐渡守:加藤剛
尾張徳川家
- お伊玖の方(志乃):松坂慶子
- 尾張中納言:山口崇
- 荒木十太夫:梅宮辰夫
- 富の市(鳥塚佐十郎):宍戸錠
- 辻蔵之助:八代目松本幸四郎
あらすじ:
享保七年頃、江戸では豪商富商が次々と襲われ大金を奪われる事件が頻繁に発生していた。
強力な犯罪取締りの権限をもつ火付盗賊改め長官・安部式部(市川染五郎)は、怪盗雲霧一味の捜査に全力を傾注していたが手がかりは掴めなかった。ある晩、雲霧一味は式部の裏をかき、まんまと油問屋武蔵屋を襲う。事前に一味を武蔵屋に配し、金のありかを探知したところで根こそぎかっさらい、姿をくらました雲霧の名は一段と広まり、式部のいらだちは増していった。
雲霧仁左衛門(仲代達矢)は、十年程前、公金横領の罪をかぶせ、家を焼き払ったうえ、許婚者の志乃(松坂慶子)まで奪った重臣たちへの怨念をはらすべく、天下の法に戦いを挑んでいたのであった。
泥棒稼業から足を洗おうとしていた雲霧は最後の仕事として、尾張屈指の呉服商、松屋を狙う。
一方、雲霧一味の動きを探知した式部も部下の山田や千秋ら腹心を従えて一味を追った。
また、侍にしてもらう代償として、雲霧を捕える事を要求されていた富の市(宍戸錠)も、式部とは別に雲霧を追っていた。
その頃松屋では、七化けのお千代の異名をとる、千代(岩下志麻)が店に入り込み人気を集める。
お千代の色香にすっかり骨抜きにされた主人の松屋吉兵衛(丹波哲郎)は、彼女を後妻にむかえようとする。
松屋襲撃の日、火付盗賊改めも続々と尾張へ集まり、雲霧の動きを待った。
雲霧一味は音もたてずに松屋に侵入し、金蔵を破り、金箱を舟に積み込んだ。
すべては松屋の奥深くまで知り尽くしたお千代の采配によるものだった。
最後の一箱を積み終えた時、突然対岸に火付盗賊改めが現れ、血みどろの死闘が始まる。
夜が明けて戦いは終わったが、吉五郎(長門裕之)をはじめ雲霧一味は殆んどが捕えられるか斬殺された。
しかし、その中に雲霧の姿がなかったため、式部は雲霧捕縛に追求の手をゆるめなかった。
そんな時、蔵之助(松本幸四郎)が弟の身替りとなって、自首してくる。
雲霧は兄の仇と己の怨みを晴らすべく、単身で尾張藩主継友、家老荒木十太夫(梅宮辰夫)を襲った。
しかし、そこで雲霧は十年ぶりに再会した志乃から、継友の息子・松寿丸は雲霧の子供であった事実を明かされ、驚愕する。
志乃はそれを告げて果てた。
そして秋、江戸広徳寺に式部が建てた雲霧の石塔の前で隠世姿の式部と僧姿の雲霧が、手向けの水と真白な花を各々携えてすれ違った。おたがいの心を輝く瞳の中に秘めながら、激しく燃えた男同士の戦いは、ここに幕を閉じたのであった。
コメント:
よくこれだけ多くの一流の俳優を集めたものだと感服する。
五社英雄監督の意気込みが感じられる。
主役の仲代達矢と、雲霧仁左衛門のかつての許婚者・志乃を演じる松坂慶子。
なんと、尾張中納言の奥方・お伊玖の方が昔は雲切の許婚者であり、その息子である若様・松寿丸が雲切の子だったとは。
この話が本作における最大の驚愕の事実だ。
それを独白して息を引き取る松坂慶子の姿が悲しい。
最近の中井貴一主演のNHKドラマの雲霧と比較すると、圧倒的にこの作品の方が上だ。
主役の雲霧の悪の存在感が全く違う。
やはり仲代達矢の悪の世界での存在感が全てを圧倒している。
NHKの雲霧は、主人公の中井貴一には全く悪人の雰囲気がなく、迫力もない。
仲代達矢でないと雲切が持っている暗い過去を感じさせる存在感は示せないのだ。
七化けのお千代も、圧倒的に岩下志麻の勝ちだ。
岩下志麻の役に徹する姿勢が、悪役・お千代をしっかりと映像化している。
尾張の豪商、丹波哲郎の演じる松屋と屋形船の中で濃厚な濡れ場は、なかなかのものだ。
火盗改役を先代の市川染五郎が演じ、実父である先代松本幸四郎をお縄にかける。
父子の演技対決がちょっとした見どころ。
雲霧の子分の一人・黒塚のお松を演じている倍賞美津子が美しい。
彼女の演技には花がある。
お松の役割は、引き込みだ。
これは、親分の雲霧の指示に従って、盗みに入る家の内部に入り込み、いざ決行となれば内から鍵を外し、仲間を引き入れる役目の者。
奉公人や出入りの商人として、数年かけて押し込み先での信頼を得る。
伝統的な盗みには欠かせない役目だ。
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