「悪魔の手毬唄」
1961年11月15日公開。
高倉健の若き頃が理解できる異色作。
原作:横溝正史「悪魔の手毬唄」
脚本:渡辺邦男、結束信二
監督:渡辺邦男
出演者:
高倉健、北原しげみ、小野透、永田靖、大村文武、太地喜和子、不忍郷子、八代万智子、山本麟一、石黒達也
あらすじ:
流行歌手の和泉須麿子が鬼首町鬼塚村へ帰郷の途上、惨殺された。
死体の傍のトランジスター・ラジオからは、須麿子の新曲「鬼首村手毬唄」の旋律が流れていた。
鬼首町警察に捜査本部が置かれ、主任の磯川警部が捜査に乗り出した。
名探偵金田一耕助も駆けつけ温泉宿亀の湯の“楓の間”に泊った。
須麿子を失った仁礼家は鬼塚一の富豪だが、当主の剛造、妻宮子、長男源一郎、次女里子がいる。
剛造は「手毬唄」を聴くとなぜか脅えた。
そんな折、辰蔵という男が十八年ぶりに、剛造の前に姿を現わした。
金田一は亀の湯の“杉の間”にいる学生遠藤和雄が仁礼里子の学友であることを知った。
湯治客の放庵は「手毬唄」を口ずさみ、石山の部屋からは夜な夜な謡曲が聞える。
仁礼源一郎と里子は、須麿子の死が半年前に剛造に届いた脅迫状に起因しているらしいというが、剛造は取り合わない。
だがその直後、銃声一発、源一郎が殺された。
金田一は源一郎の死を“自殺を装う毒殺”とにらんだ。
帰途、村の暗い過去を知っているのは放庵だと、お告げ婆が金田一の耳に囁くのだった。
里子の身を護る和雄を助手として、金田一は事件に挑戦を試みた。
なぜ「手毬唄」に剛造がおののくのであろう。
金田一は放庵に会うが、この老人は昨日から姿を消した辰蔵の身を案じていた。
辰蔵は荒れ果てたブドウ工場で、金田一から源一郎の死を告げられ、驚愕した。
半年前、剛造が受け取った脅迫状とは、仁礼家の全財産を社会奉仕に投げ出して無一文になれ、という内容である。
発信人は不明だが、青池家の誰かにちがいない。
--二十年前、剛造は村一番の豪家青池の土地、財産のすべてをだまし取ったが、青池の妻と三人の子供は服毒自殺をとげた--。
金田一は、青池の自殺した毒薬と同じもので源一郎が殺されている事実から、青池の恐ろしい執念を感じた。
コメント:
金田一耕助シリーズの映画といえば、石坂浩二か古谷一行が主人公の作品が有名。
ほかにも、渥美清など、多くの俳優が金田一耕助を演じた。
だが、この作品は、高倉健が金田一耕助を演じた第1作なのだ。
横溝正史の作品にあるおどろおどろした雰囲気はあまりない。
しかも高倉健がカッコいいしラストの爽やかな作り笑いが金田一らしくない。
横溝作品と思わなければ普通の探偵ものでつまらないわけではない。
キャストの二女役をチェックしたら、太地喜和子だったのに驚き。
この人は存在感があるが、この映画では別人だった。
脚本を書いた結束信二の証言によれば、渡辺邦男監督が他の人が書いた脚本が気に入らず、呼ばれて急いで書いたと言う。
しかも結束信二は原作を読まないで、オリジナルシナリオを書いた!ということらしい。
金田一耕助がまるで違う。
石坂浩二の演じた原作通りの金田一は、この映画の製作当時の映画界では、主役にやらせるキャラクターじゃないよ、というのは理解できる。
つまり、映画の制作された時代が違っているのだ。
だから身ぎれいにしてスポーツカーに乗ってくる高倉健が演じているのは金田一耕助だということを忘れてしまう。
私立探偵はさほど収入が良いと思えないので、1961年の当時でスポーツカーなんか買えないんじゃないの、と突っ込み入れたくなる。
まあ、こういう設定はマンガ的だ。
だが、この頃の健さんは任侠映画のイメージがまだついていない売り出し中の作品。
スターとしてカッコよく見せなきゃというところだったのだろう。
いろいろ新鮮な感じで観られる面白い作品であることは疑いない!
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