「人形佐七捕物帖 妖艶六死美人」
1956年12月11日公開。
横溝正史の知られざる人気時代劇。
原作:横溝正史
脚本:赤坂長義
監督:中川信夫
出演者:
若山富三郎(城健三朗)、日比野恵子、杉山弘太郎、宇治みさ子、沢井三郎、天知茂、岬洋二、若杉嘉津子、阿部寿美子、三原葉子、三重明子、山下明子、美舟洋子、市川小太夫
あらすじ:
花のお江戸に評判高い似顔絵画家・空来山人は、昔の仲間・茨木屋鵬斎(市川小太夫)の宴の席上、自分が描いた風流六歌仙と謳われる六美人--女歌舞伎の春太夫(若杉嘉津子)、女絵師の采女(三重明子)、女俳諧師・蝶雨(三原葉子)、小唄師匠・小扇(阿部寿美子)、柳橋芸者・お駒(山下明子)、踊りの師匠・花奴(美舟洋子)--の眼前で、春太夫を除く五人の女達に絵の出来を痛罵され、それが元で狂乱の末、一人娘・お京(宇治みさ子)の看護も空しく、自ら悲惨な最期を遂げた。
一年の後、茨木屋は一人息子・世之介(杉山弘太郎)とお京の縁組を嫌い、嫁と目論む勘定奉行・荻原備前守の娘・菊姫を屋形船に招き、六歌仙の美女らの背に似顔絵を刺青させ、又、鳩の足に似顔絵入りの筒をつけて飛ばせ七日目の晩にその絵を持参した者に賞金を出すという変わった趣向を思いつく。
だが趣向が終わった夜、小扇が惨殺され、傍らには蝶雨の似顔絵。
数日後、旬会の帰途で蝶雨が又もや殺され、お駒の似顔絵が置いてあった。
そして第三の女・お駒も、やがて浴場で落命。
船遊びの趣向当時、手下の辰五郎と豆六から噂を聞いても、まるで無関心なのは八百八町きっての目明し人形佐七(若山富三郎)。
ところが、お駒殺しの現場を見た采女は犯人と目され、佐七と張り合う目明し宗兵衛(岬洋二)に引っ張られてしまう。
見逃しは出来ぬ、と犯人究明に乗出す佐七。
だが采女は番所で絶命し傍らには春太夫の似顔絵が。
この頃、佐七が面倒をみていたお京が、女房共々黒覆面の一団に誘拐され、五人目の女花奴も踊りの最中に非業の死。
最後の一人・春太夫の打明け話や辰五郎の聞き込みで真相を握った佐七は単身、茨木屋へ乗込み鵬斎と対決、得意の謎解きを始める--。
鵬斎と空来山人は昔の海賊仲間、山人が堅気になったのを根に持つ鵬斎は宴の折、毒酒を飲ませて山人を殺し、その内幕を知る六歌仙の女達も亡き者にしようと、実は山人の息子で島破りの新吉である船頭の粂三が似顔絵で高飛び費用をと考えていたのを嗅ぎつけ、粂三の仕業とみせて女達を惨殺していたのだった--。
総てが露見した鵬斎は、佐七を陥し穴へ閉じこめ、一味を待つ海賊船へ急ぐ。
だが、牢を破った佐七は捕手共々海賊船を襲い、や春太夫を、そして父の悪業に反抗する世之介はお京を救う。
鵬斎は自決し一味も捕縛。
世之介とお京は、佐七と女房お粂(日比野恵子)の二人に見送られて旅に出るのであった。
コメント:
『人形佐七捕物帳』は横溝正史作の時代小説シリーズで全180編もあるそうだ。
人形佐七は「人形のようにいい男、いつ見ても惚れ惚れするねえ」と登場人物たちに言われる江戸で一番の美男子の岡っ引きである。
『人形佐七捕物帳』といえば、NHKが1965年から1年間放送した、松方弘樹が主役の連続時代劇シリーズとして知られている。
本作は、それより9年も前に映画化された作品である。
前年にデビューしたばかりの若山富三郎が佐七を演じ(その前に嵐寛寿郎、小泉博も演じている)、全16作作られた映画版『人形佐七捕物帳』のうち、若山富三郎が12作で主演している。
(新東宝6作、東映6作)
本作は若山富三郎版人形佐七の第1作なのである。
良く知られるヤクザ役の若山富三郎のイメージとは全然違う、若くてツルっとした感じの美男子。
たいへん抑えた演技を見せている。
台詞の抑揚のなさも演出だろうが、とにかくイメージがこれだけ違うと別人に見える。
町方の捕物なので刀は持たず十手だけなので派手な立ち回りもない。
それにしても白塗り時代の勝新太郎にそっくりで、本当によく似た兄弟だ。
さて事件は…
江戸で評判高い似顔絵画家の空来山人(坪井哲)は、茨木屋鵬斎(市川小太夫)の宴の席で、自分が描いた風流六歌仙と謳われる六美人(女歌舞伎の春太夫、女絵師の采女、女俳諧師蝶雨、小唄師匠小扇、柳橋芸者お駒、踊りの師匠花奴)の屏風絵を、春太夫を除く5人の女(絵のモデル)たちから下手だと嘲笑され、それが元で狂い死にしてしまう。
一年後、茨木屋は六歌仙の美女たちの背中に似顔絵を刺青させるが、六人の美女たちは次々と何者かに殺され、謎の死を遂げるのだった…。
同じ頃、島送りになっていた空来山の息子が、島破りをして江戸に帰ってきていると言う。
また、茨木屋の一人息子世之介と、空来山の娘・お京は好きあっていたが、茨木屋は無理やり別れさそうとしていた…。
美女・刺青・裸体などを鍵に、佐七の推理が冴える。
かなり色っぽい描写もある!
謎解き、推理がなかなか面白い作品である。
人形佐七(若山富三郎)と女房お粂(日比野恵子)
女歌舞伎の春太夫(若杉嘉津子)、女絵師の采女(三重明子)、女俳諧師・蝶雨(三原葉子)、小唄師匠の小扇(阿部寿美子)、柳橋芸者のお駒(山下明子)、踊りの師匠の花奴(美舟洋子)。
この人のエロさはハンパない。
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