宮本信子の映画 「あ・うん」 主役・高倉健の妻を地味に演じている! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「あ・うん」

 

 

「あ・うん」 オープニング

 

 

 

 

1989年11月3日公開。

向田邦子原作の同名小説の映画化。

昭和初期の東京・山の手を舞台に中年実業家の友情を描く。

 

 

脚本:中村努

監督:降旗康男

出演者:

高倉健、富司純子、板東英二、富田靖子、山口美江、真木蔵人、大滝秀治、三木のり平、宮本信子

 

 

 

あらすじ:

 

昭和12年の春。

中小企業の社長・門倉修造(高倉健)が水田一家を迎えるための準備に忙しい。

水田仙吉(板東英二)の娘・さと子(富田靖子)は「だって、門倉さんはお母さんのこと好きだから」という。

妻・たみ(富司純子)は心の中を覗かれたようで否定する。

水田が3年半ぶりに東京に帰り、一家ぐるみの付き合いが始まる。

水田はつましいサラリーマンで性格も地味。

一方、門倉は軍需景気で羽振りがよく、妻・君子(宮本信子)を女で泣かせてきた。

門倉と水田の二人は、20数年来の「戦友」だった。

さと子は君子の紹介で帝大生・石川義彦(真木蔵人)と見合いをするが、石川に二人は狛犬の「阿吽(あうん)」みたいだといわれる。

夜学しか出ていない仙吉は身分不相応だと断わる。

しかし、さと子が肺炎になると堀口大学訳の『ヴエルレエヌ詩集』を渡す。

隠れて石川とデートを重ねていたさと子が「修善寺」と書いていなくなり、捜しに行った温泉では水田夫婦が駆落ちに間違えられる。

生真面目な仙吉が門倉に紹介された神楽坂の芸者・まり奴(山口美江)に入れあげる。

門倉は、まり奴を匿ったが、誤解から君子や仙吉を傷つける。

義彦が特高に捕まり、説得してくれと頼まれ、門倉は「みすみす実らないと分かっていても人は惚れるんだよ」という。

門倉はたみに惹かれていく自分に歯止めをかけようと、料亭で仙吉に喧嘩を売り、「顔つきが卑しくなったな」と水田家と絶縁した。

さと子は「みんな本当のことを言わないで生きている」「巷に雨の降るごとく」というと、門倉は「わが心にも涙ふる」と答える。

その後、仙吉がジャワ支店長として転勤することを聞き、門倉は最後の別れを言いに、久方ぶりに水田家を訪れる。

仙吉が「入れるな」と言うのを制止して、たみが呼び止める。

しばらくすると、義彦がさと子に別れを告げに来る。

召集令状を受け取ったのだ。

門倉は、さと子に雪の中を去る義彦を追わせ、その後水田家で久しぶりに、水田とたみとの三人で酒をくみ交わした。

「さと子ちゃんは今夜一晩が一生だな」と門倉はつぶやくのであった。

 

 

コメント:

 

昭和十二年という、日中戦争から第二次世界大戦までのつかの間。

少しずつ社会が不穏な空気を帯びて来るも、ささやかな贅沢も出来て人々が笑顔で暮らすことがあった最後の期間での物語。

タイトルの「あ・うん」が示すように、門倉と水田という対照的な戦友と、水田の妻・たみとの間の微妙な三角関係を描いている。

まだ自由恋愛が許されていなかった時代であり、親の許可がなければ交際も出来なかった時代だ。

 

見合いでお互いに引かれながらも、親の反対で破談になった白川と水田の娘さと子との心の通い合う姿が気を持たせる。

白川が小説から引用するプラトニックな愛が、まさに門倉とたみとの間の関係を表している。

それでもたみが最終的にはいつも夫の仙吉を立てる姿がとても印象的だ。

終盤に従い徐々に戦争の足音が近づき、時代の流れに従うしかない彼らが、もうこの先会うことがないと思いつつその一瞬を大事にしようとするような姿が心に沁みる。

 

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高倉健扮する門倉は、富司純子扮するたみに昔から惚れていた。

そんな自分に歯止めをかけようと、たみの夫である仙吉にわざと喧嘩を売り、水田家と絶縁する。

親友の千吉と、彼の妻の取り合いになるのを避けたのだ。

単に戦争の時代を映像化しているのではなく、男女の心の機微をうまく描いているのである。

原作の向田邦子といえば、その代表作は「阿修羅の如く」である。

男女の心の底辺を描かせたら一級品の文筆力が、この映画からも感じることができる。

 

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富田靖子の初々しさがとても良い。

出征のあいさつをして、雪の中に消えて行く真木蔵人。

そして、彼の後を追えと、温かくも強く富田靖子を送り出す高倉健。

感謝しながら彼女は、走り出してゆく。

このクライマックス・シーンは、涙なしでは見れない!

 

タイトルの「あ・うん」とは、そもそも、神社を守っている二匹の狛犬の阿(あ)と吽(うん)を指している。

タイトルの「あ・うん」は、仙吉の父初太郎が、門倉とたみの2人を指して「狛犬の阿(あ)と吽(うん)だ」と評したことが作品の中で示されているという。

気が合うということを言いたかったのだろうが、もう少し深い感情も暗示しているようだ。

 

ともかくも、1972年に東映の「緋牡丹のお竜」を卒業してから、1989年までの17年のブランクを経て、芸名を「藤純子」から「富司純子」(ふじすみこ)に変えて、久方ぶりに映画界に復帰した記念すべき作品がこれだった。

東映ではなく、東宝での制作・配給となった。

共演者がやはり高倉健というのも、縁の深い二人の関係を感じさせる。

珍しく高倉健の長髪姿が見れるのは、本作だけである。

 

この映画は、高倉健と富司純子の間の恋愛感情をふわっとさりげなく描いている作品である。

富司純子が藤純子として東映きっての女優として『緋牡丹博徒』シリーズでお竜さんという役でカッコいい極道の女を演じていた時に、何度も助っ人として彼女を救うカッコいいやくざを演じたが、それを彷彿とさせるお竜さんファンに向けた作品でもあったのだ。

 

宮本信子は、眼鏡をかけた地味な風貌で高倉健の妻・君子(宮本信子)を演じている。

高倉健は、羽振りがよく、女好きで、どこへいっても女にモテる、妻泣かせの男を演じている。

最も損な役回りの宮本信子である。

この当時の彼女は、『マルサの女』などのヒット作が続いており、一つぐらい目立たない役でも気にならなかっただろうが。

 

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