「敦煌」
(とんこう)
1988年6月25日日本公開。
1988年の日本・中国合作映画。
興行収入:82億円。
受賞歴:
- 第12回日本アカデミー賞(1989年)
- 最優秀作品賞
- 最優秀監督賞 - 佐藤純彌
- 最優秀主演男優賞 - 西田敏行
- 最優秀撮影賞 - 椎塚彰
- 最優秀照明賞 - 梅谷茂
- 最優秀美術賞 - 徳田博・寇鴻烈
- 最優秀録音賞 - 橋本泰夫・橋本文雄
- 第90回キネマ旬報ベストテン(1989年)
- 新人女優賞 - 中川安奈
- 日本映画第13位
1988年 第1回 日刊スポーツ映画大賞 石原裕次郎賞 1988年 第31回 ブルーリボン賞 作品賞 |
原作:井上靖「敦煌」
脚本:佐藤純彌、吉田剛
監督:佐藤純彌
キャスト:
- 西田敏行 : 朱王礼
- 佐藤浩市 : 趙行徳
- 渡瀬恒彦 : 李元昊
- 柄本明 : 呂志敏
- 田村高廣 : 曹延恵
- 新藤栄作 : 段茂貞
- 中川安奈 : ツルピア王女
- 三田佳子 : 西夏の女
- 綿引勝彦 : 漢人の無頼漢
- 原田大二郎 : 尉遅光
- 蜷川幸雄 : 没蔵嗣文
- 鈴木瑞穂 : 野利仁栄
- 辻萬長 : 孫史衝
- 伊藤敏八 : 呉憲
- 頭師孝雄 : 劉智順
- 頭師佳孝 : 陳玄達
- 加藤和夫 : 絵師
- 大滝秀治 : ナレーター
あらすじ:
11世紀の宗(中国)。
科挙の試験に落ちた趙行徳(佐藤浩市)は、街で西夏の女を助けた礼として、西夏への通行証をもらった。
西夏の文字に興味をもった趙は西域へと旅立つ。
灼熱の砂漠を尉遅光(原田大二郎)の隊商と共に歩いていたが、途中で西夏軍漢人部隊の兵士狩りに会い、無理矢理入れられてしまう。
隊長の朱王礼(西田敏行)は文字の読める趙を重用した。
漢人部隊がウイグルを攻略した際、趙は美しい王女ツルピア(中川安奈)と知り合い、恋におちた。
二人は脱走を試みるが失敗、趙は西夏王・李元昊の命令で都へ文字の研究に行くことになった。
二年後、趙が戻ると、李はツルピアと政略結婚しようとしていた。
趙や朱にはどうすることもできなかったが、婚礼の当日ツルピアは自殺した。
ツルピアに思いを寄せていた朱の怒りは爆発し、敦煌府太守・曹を味方につけて李に謀反を起こした。
敦煌城内で死闘を繰りひろげる漢人部隊と西夏軍本部隊。
初めは漢人部隊が優勢だったが敦煌城に火矢が放たれ、朱側は火に包まれた。
戦うことより文化遺産を戦火から守ることに使命を見出していた趙は、教典や書物、美術品などを城内から莫高窟へ運び込んだ。
それから900年が経ち、莫高窟からこれら文化遺産が発掘され、敦煌は再び世界の注目を集めたのだった。
コメント:
原作は、井上靖の代表作の一つである『敦煌』(とんこう)。
これは、井上靖の歴史小説で、『群像』1959年1月号から5月号まで5回にわたって連載され、講談社で初版(1959年11月10日)、現行版は新潮文庫で重版されている。
後世に莫高窟から発見された敦煌文献の由来を主題とする。
井上の一連の「西域小説」の代表作とされ、1960年に、本作と『楼蘭』によって毎日芸術賞を受賞した。
本作の製作総指揮を担当した徳間書店初代社長である徳間康快の豪腕ぶりがなければ実現しなかっただろうといわれる大作。
極めてスケールの大きい作品に仕上がっている。
やはりなんといっても現地ロケを敢行ししかも多くの現地スタッフをも使った贅沢さが売り物だ。
広大に広がる砂漠やそこでの戦闘シーンなどが圧巻で、このスケール感は日本でのロケでは無理だったろう。
監督は中国で人気のある佐藤純弥が勤めていて彼にとっても「未完の対局」につく日中合作映画となる。
主演した西田敏行や佐藤浩市をはじめ、多くの日本人俳優たちが熱演している。
ツルピア王女を演じた中川安奈は、新人賞を受賞している。
この人は、祖母がドイツ人だったため、ドイツ系クォーターである。
たしかに日本人離れした風貌だ。
渡瀬恒彦が演じているのは、李元昊(り げんこう)。
西夏の初代皇帝である。
西夏という国は、1038年 - 1227年の期間、現在の中国西北部(寧夏回族自治区)に存在した王朝。
李元昊は、内政・外征共に大きな成功を収め、西夏の創始者にして同王朝随一の名君であるとされる。
中国の大国・宋と辺境国との争いに巻き込まれる主人公行徳(佐藤浩市)の視点で語られ彼と同様に争いに巻き込まれることになる文化の都敦煌の落日を描き込む。
終盤西夏軍の略奪から敦煌の文化遺産を守るべく運び出すシーンが印象的だ。
争いに巻き込まれ失われた過去の遺産はいったいどれほどあったのだろう。
それは今でも変わりないが。
そんな悠久の歴史が持つ虚しさのようなものまで描き込んでいる。
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