京都市がこの映画のフィルムを抱え込み、秘密の映画になり果てている異色作品!
「祇園祭」
ネット上の「予告編」も無し!
VHS、DVDも無し!
脚本:鈴木尚之、清水邦夫
監督:山内鉄也
キャスト:
- 新吉(染物職人):中村錦之助
- いち(新吉の母):瀧花久子
- お鶴(新吉の妹):佐藤オリエ
- あやめ(善阿弥の娘):岩下志麻
- 河原又四郎(善阿弥):永井智雄
- 権次(善阿弥の弟子):田中邦衛
- 恒右衛門(染物屋主人):志村喬
- 助松(桶屋職人):田村高廣
- お兼(助松の女房):斉藤美和
- 源蔵(大工):藤原釜足
- 源太(源蔵の息子):小川吉信
- 常七(中組町衆):大里健太郎
- 平太(中組町衆):大木晤郎
- 文助(中組町衆):香川良介
- 佐助(中組町衆):橋本仙三
- およし(佐助の女房):沢淑子
- 文七(艮組町衆):山口俊和
- 門倉了太夫(月行事惣代):小沢栄太郎
- 泉屋徳太夫(中組月行事):浮田左武郎
- 柳屋辰右衛門(巽組月行事):有馬宏治
- 丹波屋伝蔵(堀川組月行事):御木本伸介
- 熊左(馬借の頭):三船敏郎
- 岩十(馬借):尾形伸之介
- 山科言継卿(公卿):下元勉
- 伊平(つるめその頭):渥美清
- 於菟(つるめその若者):北大路欣也
- 甚兵衛(山科の百姓):下條正巳
- 一揆の頭:堀正夫
- 政庁前の開闔:加藤浩
- 中組路地開闔:田中浩
- 関所の役人:中村時之介
- 宰領:玉生司郎
- 職人・六:松山英太郎
- 彦爺:片岡半蔵
- とよ:鈴木悦子
- 騎馬の侍:遠山金四郎
- 赤松政村(侍所頭人):伊藤雄之助
- 細川晴元:伊藤寿章
- 巽組代表:高倉健
- 町衆:美空ひばり、中村米吉、中村光輝
- 亥三(一揆の百姓):中村賀津雄
- 秀太(一揆の百姓):大辻伺郎
- せつ(山科の百姓):木暮実千代
あらすじ:
足利将軍の、世継ぎ争いに端を発した応仁の乱は、以後五十年もの間、京の都を荒廃に陥れた。虐げられつづけた農民が、一揆を起したのもその頃だが、武士階級にはそれを鎮圧する力も、すでになかった。
染物職人の新吉(中村錦之助)は、土一揆のあったある夜、笛の上手な不思議な女・あやめ(岩下志麻)を知り、荒れた御堂の中で一夜を共にした。
翌朝、家に帰った新吉は、母が侍に殺されたのを知った。
一方相次ぐ一揆に手を焼いた管領・細川晴元(伊藤寿章)は、町民を狩り集めて一揆の本拠山科に攻め入った。
そこには貧農に味方する馬借の頭・熊左(三船敏郎)がいた。
新吉たち町民は熊左の一隊と戦ったが、侍は逃げ、結局は新吉たちは利用されているだけだった。
戦いが終って、新吉の心には侍階級に対する不信感が強くなった。
町民たちも税金を払わないことで特に対抗しようとしていたが、そのためには、町民の団結力を見せる必要があった。
そこで新吉は、戦乱で三十年もの間途絶えていた町民の祭典、祇園祭を再興しようと決心した。
新吉はその相談に、貧乏公卿・言継(下元勉)を訪ね、そこであやめと再会した。
言継はあやめに祇園ばやしの笛を習えと勧めたが、あやめは新吉に教えようとはしたかった。
彼女は河原者の娘で、町衆とは素直に心を通じあえなかったのだ。
その頃、管領は税金を払わない町民に、関所を設け関税を払わせることで対抗した。
そのため京に入る食糧は欠乏し、町民は飢えに苦しんだ。
新吉は、死を覚悟で熊左に会いに行き米を運んでくれるよう頼んだ。
熊左は一言の下に拒絶したが、そこに現われたあやめの説得で、新吉の依頼を引受けたのだった。
熊左の一隊が米を運んで京の町に現われた時、町民は熱狂して出迎えた。
やがて、いつか身分を越えて心の通じるようになった新吉とあやめは、笛の練習に幸福な日々を送るようになった。
祇園祭の準備は着々と進んでいた。
一方、侍たちはこの祭りを邪魔しようとしていた。
ついに祭の日が来た。
盛大に装いを凝らした山鉾がゆるゆると動き出した時、侍や僧兵が立ちはだかった。
だが、彼らは熊左たち馬借の一隊に退けられた。
しかし物陰から放たれた矢で新吉は重傷を負ってしまった。
胸に矢をつき立てたまま、新吉は熊左の手を借りて山鉾に上った。
蒼白な顔で仁王立ちになった新吉の姿は、京の町民の象徴のようなものだった。
侍たちはあまりの気迫に手出しも出来なかった。
道が開き、再び山鉾が動きはじめた時、新吉はそのままの姿勢で息絶えていた。
コメント:
1968年11月23日に公開された映画『祇園祭』は、中村錦之助主演の時代劇である。
これには三船敏郎も、馬借の頭・熊左という準主役の立場で熱演している。
ところが、残念なことに、これが簡単には見られない。VHSにもなっていなければ、DVDにもなっていないからだ。
テレビで放送されることも、地上波であれ衛星波であれ皆無である。
その映画が2007年7月に京都市によって復元されて上映されたらしい。
通常は、映画『祇園祭』のフィルムは京都府文化博物館に保存されているらしい。
毎年祇園祭の時に上映されてきているという。
2020年には、コロナ禍で、山鉾巡行はなくなったが、映画の上映は前祭の7月16日、17日、後祭の23日、24日の13時と17時から上映された。この時しか観ること叶わず、なのだ。
昨年の夏は、京都もコロナ最盛期だったので、上映されなかったと思われる。
しかし、京都市が上映すること以外は一切ないままになっているのは確かである。
一般の映画館での上映や、テレビ、ネットなどでの放映を全て拒んできているようだ。
VHSもDVDも存在しないという。
そんなに極秘扱いするほどの値打ちがあるのだろうか。
京都市という地方自治体は赤字解消の目途がつけられない日本でも有数のアホであることは世界がすでに知っている。
そのくせ、毎年夏の祇園祭などの格式高い民族行事を開催したり、京都映画祭などという見栄っ張りの独自映画行事を継続させたりしている。
赤字を無くす工夫を考えているならば、まずはこの『祇園祭』という映画のレンタルを開始すべきだろう。
東京に首都が移転されて、150年経つというのに、変なプライドだけを持ち続けて、人気がある文化財のひとつであるこのような映像作品を後生大事に隠しているという子供じみた姿勢を、京都市は早急に正すべきである。