「グッドモーニングショー」
2016年10月8日公開。
第40回モントリオール世界映画祭・ワールドコンペティション部門出品作品。
監督・脚本:君塚良一
キャスト:
- 澄田真吾 - 中井貴一
- 朝のワイドショー「グッドモーニングショー」メインキャスター。48歳。以前は報道番組のキャスターだったが、災害現場のリポートの時の行動が原因で世間から非難され、降板した。
- 小川圭子 - 長澤まさみ
- 「グッドモーニングショー」のサブキャスターを務める女子アナ。ニュース担当。澄田に日頃優しく接してもらって一方的に恋愛感情を持ち、「澄田も自分に気がある」と勘違いしている。
- 三木沙也 - 志田未来
- 「グッドモーニングショー」のサブキャスターを務める新人女子アナ。スポーツ担当。
- 石山聡 - 時任三郎
- 「グッドモーニングショー」のプロデューサー。澄田と同期入社。
- 澄田明美 - 吉田羊
- 澄田の妻。元女子アナ。
- 西谷颯太 - 濱田岳
- 大崎のカフェに立てこもった犯人。28歳。現場に澄田を呼ぶように要求する。
- 黒岩哲人 - 松重豊
- 警視庁特殊班でリーダーを務める警察官。
- 秋吉克己 - 池内博之
- 「グッドモーニングショー」チーフディレクター。
- 松岡宏二 - 林遣都
- 「グッドモーニングショー」報道担当ディレクター。
- 館山修平 - 梶原善
- 「グッドモーニングショー」特集担当ディレクター。
- 新垣英莉 - 木南晴夏
- 「グッドモーニングショー」芸能・グルメ担当ディレクター。
- 府川速人 - 大東駿介
- 「グッドモーニングショー」中継担当ディレクター。
- 清水あやめ - 折井あゆみ
- 「グッドモーニングショー」サブキャスター。天気・芸能ニュース・特集VTRのレポーター担当。
あらすじ:
澄田真吾(中井貴一)は、朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスター。
かつて報道番組のエースキャスターだったが、ある震災現場からの現場リポートが世間から非難を浴びて番組を降板。
以来、現場からのリポートが怖くてできなくなり、同期入社のプロデューサー石山聡(時任三郎)に拾われ、今に至っている。
ある日、いつものように深夜3時に起床した澄田は、息子と妻・明美(吉田羊)の言い争いに巻き込まれる。
逃げるようにテレビ局に向かう途中、今度はサブキャスターの小川圭子(長澤まさみ)から連絡が入り、二人の交際を今日の生放送で発表しようと迫られる。
彼女は澄田と付き合っていると勘違いしているらしい。
さらに石山からは番組の打ち切りが告げられ、新番組への登板もないことも伝えられ、踏んだり蹴ったりの事態に意気消沈するばかり。
そんな中、都内のカフェに銃を持った男(濱田岳)が人質を取って立てこもっているという速報が飛び込んでくる。
芸能ゴシップや政治汚職、行列スイーツ特集を押しのけ、立てこもり事件をトップのネタに番組はスタートするが、その直後、立てこもった犯人が、澄田を現場に呼べと要求していることが分かる。
現場での過去のトラウマもあり困惑して拒否する澄田だったが、警察からの依頼を受けた石山からの命令、番組視聴率のため、そして圭子の暴露から逃げ出したいために澄田は現場へと向かうのだった。
やがて、防弾チョッキにカメラとマイクを仕込ませたワイドショーのキャスターが、銃と爆弾を持った犯人と向き合うという前代未聞の生放送が始まった……。
コメント:
この映画くらい酷評されている中井貴一出演作品にはない。
しかも中井の主演なのだ。
筋書がありきたりで、びっくりする場面もないし、なるほどと思わせるところも皆無。
なぜこんな最低の映画の主役を引き受けたのか信じられない。
前半は、とにかく地味。
後半は、人質事件の犯人を巡って、MCの中井貴一が右往左往するが、事件解決には関与していない。
平凡な出来栄えのドタバタコメディだ。
あえてえこひいき的に前向きなコメントをするとすれば、シリアスなテーマを扱っている部分もあるという点だ。
まず長澤まさみと志田未来が演じる二人の女子アナの掛け合いは笑える。
ただし、プロデューサー(時任三郎)が人質を危険にさらせないとの配慮でTV視聴者のアンケート投票結果を改ざんするシーンは全然笑えない。
マスコミによる情報操作、世論誘導といった民主主義を根底から覆すリスクの怖さを感じさせる。
人質救出後にきちんと真実(正しいアンケート結果)を公開したのならよいが、そこのところがこの作品ではどうなったのかが分からない。
底知れぬ怖さが残った。
この映画は、低迷を続けるフジテレビが創った作品だという。
まさに、なぜフジが低迷しているかを、身を以て自社の恥をおっぴろげた恥さらしの映画なのだ。
この映画の監督・脚本は、君塚良一。現在63歳。
この男は、映画界での仕事を嫌って、錦ちゃんの下で学んだ後、フジテレビでドラマの脚本、演出をしてきたようだ。
最大のヒットは、『踊る大捜査線』のようだ。
その後は、このシリーズの続編を作ったり、劇場版を作って映画界にも若干実績を残してきたが、大ヒット作品はゼロだ。
『踊る大捜査線』の最初のシリーズの放送日と視聴率は以下の通り:
- 1997年1月7日 - 3月18日、全11話。
- 初回は21:03 - 22:24の81分、最終回は21:02 - 22:14の72分拡大版。
- 放送当時のキャッチコピーは「刑事課長、あした有給 欲しいんスけど。」と「リズム&ポリ〜ス」だ。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 視聴率 |
---|---|---|---|
第1話 | 1997年1月7日 | サラリーマン刑事と最初の難事件 | 18.7% |
第2話 | 1997年1月14日 | 愛と復讐の宅配便 | 16.4% |
第3話 | 1997年1月21日 | 消された調書と彼女の事件 | 16.5% |
第4話 | 1997年1月28日 | 少女の涙と刑事のプライド | 15.7% |
第5話 | 1997年2月4日 | 彼女の悲鳴が聞こえない | 18.1% |
第6話 | 1997年2月11日 | 張り込み 彼女の愛と真実 | 18.7% |
第7話 | 1997年2月18日 | タイムリミットは48時間[9] | 18.2% |
第8話 | 1997年2月25日 | さらば愛しき刑事 | 17.3% |
第9話 | 1997年3月4日 | 湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪 | 16.3% |
第10話 | 1997年3月11日 | 凶弾・雨に消えた刑事の涙 | 19.0% |
第11話 (最終話) |
1997年3月18日 | 青島刑事よ永遠に | 23.1% |
平均視聴率 18.2%(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)
1997年当時のテレビはすごかった。
人気ドラマは、20%から30%台だった。
つまり、『踊る大捜査線』は、そこそこの人気でしかなかったのだ。
次のクールではもう少し良い数字も取れたようだが。
いずれにしても、この監督に製作させたこと自体、フジテレビが映画を全然分かっていなかったということだ。
まあ、テレビドラマも最近は全然ダメらしいが、まだフジは雇っているようだ。
この映画で唯一存在感を示しているのは、濱田岳だろう。
彼を犯人役に当てたことだけが唯一評価できる。
奇しくも犯人役の濱田岳が「テレビなんかクソだ!」と絶叫するシーンには震える。
今やまさに、その通りになっている
もはやテレビ主導の映画はもう効果がない。
特にフジテレビ系の映画は。
『あゝ、野麦峠』という大ヒット作があるが、
本作には
『あゝ、テレビのバカ』という副題を提供したい。
この映画は、本来なら絶対にブログにアップするような作品ではないのだが、こういう愚作を中井貴一主演でフジテレビが作ったという不名誉な記録としてアップすることにした。
中井貴一も、矜持を持って映画俳優を続けたいなら、今後このような無意味な作品には関与しないことをお勧めする。
長澤まさみも、これから邦画界を背負って立つべき重要な女優の一人として、良く吟味して出演作品を選択してほしい。
とにかく、今の日本からは伝統芸能も芸術性のある映像制作も消えて行こうとしている。
歌舞伎はぎりぎり残っているが、人形浄瑠璃、能、大衆演劇、落語、浪曲、民謡などの低迷は深刻だ。
映画も、ハリウッドが世界制覇してから、味のある作品が不人気となり、面白くも無いホラーやアニメばかりとなっている。
最悪なのは、時代劇。
このジャンルの未来は真っ暗だ。
中村錦之助や三船敏郎たちが輝いていたあの頃はもうはるか昔になってしまった。
テレビも、平成の後半からはマンネリ化し、ドラマの視聴率は10%台をキープ出来たら御の字というありさまだ。
ニュース番組が、もっとひどい。
人気キャスターといえる正当なアナウンサーは、どう数えても、全チャンネル合わせても二けたになりそうもない。
テレビは、どんどんお笑い芸人に浸食され続けている。
バラエティ番組ばかりで必死に回しているテレビの世界は異常だ。
ニュース番組やドラマですら、お笑い芸人が侵入してきて、立派なベテラン俳優はもう出る幕が無い状態となって、裏の通販番組でお茶を濁すしかない状態に陥っているのだ。
こんな時代をこれからどう変えて行くのか。
頭の痛い問題である。