「大奥」
2006年12月23日公開。
大奥に生きる絵島と歌舞伎役者・生島を巡る物語。
興行収入:22億円。
第31回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞(仲間由紀恵)
脚本:浅野妙子
監督:林徹
キャスト:
- 絵島(大奥総取締):仲間由紀恵
- 生島新五郎(歌舞伎役者):西島秀俊
- 月光院(家継生母・先代御側室):井川遥
- 間部越前守詮房(家継側用人):及川光博
- 宮路(天英院付中臈):杉田かおる
- 小萩(絵島付中臈):麻生祐未
- 藤川(絵島付部屋方):中山忍
- 法心院(先代御側室・蓮浄院付):木村多江
- 葛岡(奥女中):鷲尾真知子
- 吉野(奥女中):山口香緒里
- 浦尾(奥女中):久保田磨希
- 菊緒(上臈御年寄):江波杏子(友情出演)
- 金子長十郎(歌舞伎役者):北村一輝
- 懐月堂安度(浮世絵師):谷原章介
- 谷口新八(浪人):竹中直人
- 山村長太夫(山村座座元):平泉成
- やえ(お久美の母):鈴木砂羽
- 弁当屋:徳井優
- 安度の女:佐藤仁美
- 船頭:木下ほうか
- 物知りお徳:紅萬子
- お久美(風車売り):山田夏海
- 年増女(新五郎の女):園英子
- 娘道成寺白拍子:志賀山扇右
- 新井白石(政治家):本田博太郎
- 奥山交竹院(医者):火野正平
- 坪内能登守定鑑(中町奉行):原田龍二
- 岡本平右衛門(御徒目付):田口浩正
- 松ヶ枝(絵島付中臈):小松みゆき
- 桜井(月光院付中臈):岩倉沙織
- 徳川家継(第7代将軍):澁谷武尊
- 滝川(蓮浄院付上臈御年寄):浅野ゆう子(友情出演)
- 蓮浄院(先代御側室):松下由樹(友情出演)
- 仙石丹波守久尚(江戸城大目付):柳葉敏郎(特別出演)
- 奈良屋善右衛門(呉服問屋):藤田まこと(特別出演)
- 秋元但馬守喬知(老中筆頭):岸谷五朗(友情出演)
- 天英院(先代御正室):高島礼子
- ナレーション:梶芽衣子
あらすじ:
七代将軍・徳川家継の御代は、家綱が幼少である為に権力争いが絶えなかった。
大奥総取締りを務めていた絵島(仲間由紀恵)は、争いの渦中で心労の絶えない家継の生母・月光院(井川遥)を支えるべく心を砕いていたが、中でも月光院と家継の後見人・越前守(及川光博)との許されぬ恋は心配の種であった。
月光院を疎ましく思っていた天英院(天英院)は、月光院と越前守とが情を通じているという噂を聞き、二人を失脚させる策を巡らせ始める。
天英院は月光院の腹心である絵島を陥れる為、色男と噂高い歌舞伎役者の生島(西島秀俊)を絵島に接近させる。
大奥を出て護摩の行に代参する絵島に接近する生島。
恩人である月光院を守る為に城の囲いの内を終の棲家と決心していた絵島は、生島に惹かれるものを感じるが固辞する。
絵島の心根に演技を超えて心惹かれる生島。
天英院の策動を察知し月光院と距離をとる越前守。
月光院は越前守に会えない事が心労となり、精神衰弱で病の床に伏せる。
政略の中で不利を被ることに成りかねないと知った上でなお越前守に恋焦がれる月光院の様子に、絵島は理屈を超えたものを見て心打たれる。
放火により炎上する芝居小屋から生島に命がけで救出された絵島は、生島の接近が天英院による罠だと気付きつつも、生島の誘いを受け入れる。
火事の混乱の中、2人は罠と知りながら密通する。
翌朝、今生の別れをする2人。
不義密通の疑いで公儀の縄にかかった絵島は、天英院から、月光院と越前守の内状を詳らかにすれば密通の疑いを反故にすると取引を持ちかけられるが固辞する。
一方生島も縄にかかり、絵島との密通を認めろと拷問にかけられるが口を割らない。
月光院は越前守に絵島を助けてくれと頼むが、逆に「絵島を取るか、私を取るか」と迫られ、苦渋の内に越前守を取ることを決める。
絵島に死罪の沙汰が下る。
しかし将軍家継の配慮により減刑され、絵島は信州に流される事に決着し、天英院の企みは失敗に終わった。
絵島は生島の死刑に立ち会い、生島が自分のために命を投げ出してくれたのだと悟る。
流刑にされる絵島を見送りに来た月光院は、越前と絵島を秤にかけた事を詫びる。
絵島は月光院の気持ちが今の自分には分かると言い残し、信州に旅立つのだった。
コメント:
江戸時代の七代将軍・徳川家継の世に起こった「絵島生島事件」を軸に、愛憎を交錯させた大奥の世界を描いた作品。
女優の衣装代に1億円をかけたことでも話題となっている。
「大奥シリーズ」の完結篇としての製作であることが事前に発表されていた。
大奥の物語の中でも有名な「江島生島の物語」を、単なる色恋で描くのではなく、仕える月光院の色恋からの失脚を守るための江島の立場から描いている。
オールスター出演の豪華な映画となっている。
時は江戸幕府7代将軍家継の時代、天下泰平のこの時代にも、幕府内部では熾烈な権力争いがおこなわれていた。
2代にわたり将軍家に仕えて権勢を誇る側用人・間部詮房と老中たちの対立が表面化し、一方大奥でも先代将軍家宣の正室天英院と側室で家継の生母である月光院の対立が激しさを増していた。
大奥総取締に就任した絵島は月光院の信任を得ており、その働きぶりは大奥で評判となる。
だが、同時に月光院と対立する天英院派の反発を買うことになる。
彼らは老中たちと手を組み、間部と月光院の排斥を画策していた。
そんな折、寺社詣の帰り道に歌舞伎観劇で、看板役者生島新五郎と出会い惹かれる。
やがて、彼らは江戸の大火を契機とした巨大な陰謀に巻き込まれていく。
生島も当初は江島を陥れるための手段だったが、江島の一途な思いからいつしか本当に恋するようになってしまった。
そこを好機と、反・月光院派のあの手この手の追い詰めが始まるが、江島も生島も否定して通す。
一般に流布している物語は、江島が月光院の代参のたびに生島との情事を重ねる設定になっているが、この映画ではそうは描かれていない。
むしろしたたかな男妾の生島が江島の真心に打たれ意地を張り通すところが見所。死刑の場面でも女性映画らしく、シルエットで表現し、磔(はりつけ)そのものの処刑場面をむしろ美しく見せている。
有名な絵島生島事件ということで、時代考証どうのというよりも、娯楽フィクションとしての脚色と映像の華やかさを楽しむ作品。
TVシリーズはちょくちょく見ていると、狂言回しの女中さん3人が引き継がれているのが分かる。
ドラマから発展したにしては、これ一本でも話はわかるので親切な映画化といえる。
今回は絵島はいい人という解釈になっていて、美しい悲恋の物語としてまとめている。
ほかの時代劇にくらべて格段に彩鮮やかで、江戸時代の大奥はこんなに派手だったのかと驚くが、やはり映画ならではの照明や化粧、衣装、舞台によってここまで華やかにできるのだろう。
仲間由紀恵は、何を着ても髪が乱れても、さすが綺麗だ。
元より沖縄美人の典型だが、この映画ではいよいよ東映のオールスターを従えての主役である。
この女優は、テレビドラマでも大活躍。
この時すでに、『トリック』シリーズ、『ごくせん』シリーズで大ヒットを飛ばし、さらにNHK大河ドラマでも、以下の実績を重ねていたので、時代劇における演技は、もうしっかりと身についていた。
- 葵 徳川三代 最終話(2000年12月17日) - お楽 役
- 武蔵 MUSASHI(2003年1月5日 - 12月7日) - 八重 / 琴 役(2役)
- 功名が辻(2006年1月8日 - 12月10日) - 主演・山内千代(見性院) 役
西島秀俊は、この大型時代劇映画のヒロインの相手役となる歌舞伎役者・生島を演じた。
西島は、これまで知名度は高くなかったが、2004年にフジテレビの『大奥・第一章』に将軍家光役で出演していた。
また、本作の直前にNHK朝ドラ『純情きらり』にも出演して、一気に知名度を上げていた。
本作での主役級の配役によって、その後さらに活動の幅が広がることとなった。
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