中村吉右衛門の映画 「藪の中の黒猫」 吉右衛門24才での主演映画! 太一喜和子との共演! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「藪の中の黒猫」

 

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「藪の中の黒猫」 予告編

 

1968年2月24日公開。

第21回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品。

 

監督・脚本:新藤兼人

能指導:観世栄夫

 

藪の中の黒猫:新藤兼人

 

 

キャスト:

  • 中村吉右衛門:藪銀時(八)
  • 乙羽信子:中年女(おヨネ)
  • 佐藤慶:源頼光
  • 戸浦六宏:武将
  • 太地喜和子:若い女(おシゲ)
  • 殿山泰司:農夫(甚平)
  • 観世栄夫:帝の声
  • 江角英明:輩下A
  • 大木正司:輩下B
  • 加地健太郎:輩下C

 

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あらすじ:

相次ぐ戦乱に荒廃した平安中期の京。

一軒の貧しい民家に住む若い娘と母親が、落武者の暴力を受け、家もろとも焼け死んでしまった。

羅城門に妖怪が現われるようになったのはその時からである。

幾人もの侍が、毎夜、毎夜、深い闇の中から現われた美女について行ったあげく、翌朝、喉を食いちぎられて発見されたのだ。

その頃、敵の大将の首をとった百姓の出の薮ノ銀時が、頼光の股肱の輩下に加わった。

銀時は母と嫁に自分の武将姿を見せようと我が家に帰ってみたが、彼を待っていたのは無残な焼け跡だった。

母も妻もいなかった。

やがて銀時は頼光から、妖怪退治の命を受けた。

夜の羅城門の近くで、白い袿の女が現われ、導かれるまま銀時は女の家に入った。

そこには女の母が待っていた。

彼は驚いた。

若い女は自分の妻に、その母はやはり自分の母にそっくりだったのだ。

だから銀時に妖怪退治ができようはずはなかった。

その夜から、銀時は妖怪に思慕の情をつのらせていき、若い妖怪もまた、銀時への慕情に身をさいなんでいた。

だが、会うことは許されなかった。

母と娘の霊魂は、酷い仕打ちをした侍の生き血をすすることを天地の魔神に誓い、その約束で現世の姿をかりることが出来たからである。

それでも若い女は羅城門に現われた。

銀時は狂喜した。

二人の抱擁は狂おしくつづいたが、七日間が過ぎた時、女は消えていた。

誓いを破った女は地獄へ落ちて行ったのだ。

残された母は、それを哀しく思いながら、侍の生き血をすすることに執念を燃やした。

銀時は頼光に責められ、いよいよ決意に迫られた。

ある夜、母の顔に怪猫の姿を見た銀時は太刀を振るって、腕を斬り落とした。

それはみるみる千年の歳を経た黒い怪猫の前脚になっていった。

銀時は物忌みをするよう七日間の蟄居を命ぜられた。

その時、銀時は計られて前脚を母に奪い返されてしまった。

前脚は猫の武器なのだ。

狂ったように闇の中を追う銀時。

しかし彼は翌朝、雪をかぶって死んでいた。

彼の周りを、一匹の黒猫が悲しそうに鳴きながらまとわりついていた。

 

No.13 『藪の中の黒猫』 | CURSE OF CINEMA

 

コメント:

 

冒頭で、藪の中の家に住む女と娘(息子の嫁)が侍の一団に襲われて、家に火を放たれる。
その後、その周辺に侍を引きこむ妖怪が出るという評判が立つ。

その家の息子が立派になって戻ってきて、妖怪征伐を命じられる。

平安時代。

夜な夜な羅城門に侍を誘惑して惨殺する女二人組が現れる。
地獄の戦地から戻ってきた百姓上がりの英雄が女二人組の討伐を命じられる。
ハイブリッドな化け猫映画。

なかなか面白い。

「鬼滅の刀」の鬼のエピソードにありそうな、わかりやすい少しウエットな物語が展開する。


冒頭の野武士が山から降りてきて農家に入る所から、セリフなしなのだがかなり引き込まれる。

エンタメよりの話に能や竹林での横移動なんかのジャパニーズ要素がいい塩梅で、面白い日本映画は黒澤だけじゃないぞ!とカンヌに出品なのも納得。

白黒だが、撮影・照明がしっとりしてて黒く潰れるということもなく素晴らしい。

 

藪の中の黒猫 (1968) dir. Kaneto Shindô


佐藤慶が演じる源頼光がパワハラ上司で大江山の鬼退治もでっち上げで、広告代理店みたいに宣伝が大事というのは異様に面白い。

太地喜和子もビーチク隠さず侍を誘惑するところは、適材適所すぎる。

乙羽信子は案の定、顔面だけで怖いというブレのなさが貫禄十分。

同監督の「鬼婆」のアナザーストーリーのような作品。
「きっと妖怪になった母子が息子を襲ってしまって、ああっなんとあなたは息子ではないか、と嗚咽して終わるのだろう」と思ってしまうが、そうではない。

お互いを、妖怪と立派な侍になった息子と認め合った後、どうする?という物語なのだ。

侍と母は懊悩し、激しくぶつかり合う。

妖怪vs侍。母vs息子。どうなる?どうなる?

さすがストーリーテラーの新藤兼人監督だ。

がっかりさせない。

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母を乙羽信子、息子の嫁を太地喜和子、息子を中村吉右衛門。

女性二人はすぐわかるが、吉右衛門さんは初々しくてすぐにはわからない。

このときまだ24歳!

いい意味で一目で主役とわかる目力。

若々しく凛々しいたたずまいだ。

娘が侍と契っている間、母は能面のような顔をして舞う。

この映画でも観世栄男が監修という形で関わっていて、監督の「異形の者」のイメージと能の中の妖怪のイメージがかなりリンクしていることがわかる。

クールで静寂な能の世界って現実から遠くて、普段とは違う異様な世界で、効果を上げている。

 

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